新築住宅の引渡し前の施主検査を施主目線で解説

新築の注文建築を建てると取引の最終段階や建築途中において、施主検査というものがあります。これから家を新築する人も、これからまさに施主検査を迎えようとしている人も、完成後や引渡し後、そして入居後に後悔することのないように施主検査のことを正しく理解して、必要な対応をとることで乗り切りましょう。

当WEBサイトを運営するアネストでは、多くの新築住宅の施主検査(竣工検査・完成検査)に同行して、多くの施工不具合を指摘してきた経験があります。この経験や業界関連の知識を活かして、施主検査の言葉の意味や所要時間、実施時期(タイミング)、第三者の立会いが便利なことなどの基礎知識や、よくある疑問への回答、施主が注意すべき点を紹介します。また、この記事のなかで紹介するチェックリスト(PDFファイルで無償ダウンロードも可能)も参考にして当日の現場対応をしてください。

この記事は、注文住宅の施主に役立つ内容になっていますが、建売住宅の買主にも十分に役立つ内容になっています。施主検査は、建売住宅の買主にとっての完成検査(竣工検査)と重なる点が非常に多いからです。

施主と施主検査を正確に理解する

確実に理解しておくために、本当に基本的なことから説明しておきます。皆さんは、「施主」の正しい意味を理解していますか?間違いなくわかっているという人はここを読み飛ばしてもよいですが、そうでない人はここから読み進めてください。

施主とは?

施主とは、建築工事においては建物の工事を発注する人、つまる発注者のことを言います。建築工事請負契約書では、発注者や注文者と表示していることが多いです。建築工事の発注者であって、出来上がった建物を購入する買主とは異なります。

施主とは建物工事の発注者

建売住宅は、売主が決めた企画・設計で建築された完成物を売買するので、その代金を支払って取得する人は施主ではなく買主です。

注文住宅は、注文者(施主)が決めたプランで工務店に建てるように建築工事という業務を依頼するので、建売住宅とはこの点で大きな違いがあります。

但し、建売住宅でも施主がいないわけではありません。それは、買主からみたときの相手方(つまり売主)です。売主は下請けの工務店に建築工事を発注しているので、施主でもあるのです。

ちなみに、新築に限らず、リフォームでも発注者のことを施主と呼びます。

施主の読み方は、「せしゅ」です。たまに「せぬし」と読む人もいますが、「施主」が正しい読みです。

施主検査とは?

次に施主検査の説明ですが、これはわかりやすいですね。施主が行う検査だから施主検査です。

施主検査

この施主検査は、建築工事の途中で検査するものも、完成後にするものも含めてそう呼ばれています。施主検査と聞けば、完成時の検査をイメージする人が多いですが、実は建築中もあるのです。詳しくは後述していますので、ご確認ください。

住宅の新築に限らず、リフォームでも同じように施主検査があります。

完成検査とは?竣工検査とは?

施主検査のところで、建築工事中にも完成後にも実施することを説明しましたが、そのうち完成後に行うものが完成検査です。これもわかりやすいですね。

但し、完成検査という言葉は注文住宅のときにのみ用いられるとは限りません。未完成の建売住宅を購入した人が、完成後に行う検査のことを完成検査ということもあるからです。建売か注文かに関係なく、完成後に行うものを完成検査と呼ぶと理解しておけば大丈夫です。

ちなみに、似た言葉で竣工検査というものがあります。竣工とは建物が出来上がることを言いますから、竣工検査と完成検査は同じ意味です。完成検査や竣工検査は、内覧会と呼ばれていることもあります。

施主検査の立会いとは?

施主検査には、施主自身が立ち会うべきことは言うまでもありません。それ以外に、施主と一緒に施工不具合をチェックする専門家(建築士などのホームインスペクター)に同行依頼することがありますが、これを立会いサービスと呼ぶことも多いです。

ただし、ハウスメーカーなどの担当者が、施主が立ち会うことを施主検査の立会いと説明することもあるため、説明を受けた時には意図を確認するようにしましょう。

施主検査・内覧会立会い
施主検査にアネストの一級建築士が立ち会う

施主検査と完成検査の基礎知識

次に施主検査のことをもう少し掘り下げて理解しておきましょう。あなたが実際に施主検査に立会いする前に知っておくべき基礎知識を紹介します。

施主検査の基礎知識

施主検査でやるべきこと

施主検査では、建築工事の施工品質のチェック(施工ミスがないか仕上がり状態を確認)や契約通りのプランで建てられているか確認することが主な目的です。建築途中にも、その時点で確認できることをチェックし、完成時点ではその時点で確認できる範囲は全てチェックするつもりで立ち会ってください。

施主検査の2つの主な目的

  1. 建築工事の施工品質のチェック
  2. 契約通りのプランで建てられているか確認

最初は、工務店から建物や設備のことなどで説明があることが多く、その説明を聞き終えたら自らチェックを進める番です。工務店に気を遣いすぎないように、時間をかけて丁寧に見ていくとよいでしょう。

せっかくの機会なのに、キズや汚れのチェックや窓の動作確認くらいしかせず、採寸だけして帰るってしまうと、入居後に後悔するような施工不具合などが見つかることもあります。後述するチェックリストを参考にしてください。

新築住宅の施主検査は施主にも工務店にも大切な機会

施主検査は、施主にとって施工不良などを指摘して補修対応してもらうために非常に重要な機会ですから、慎重に準備して対応したいものですが、実は工務店(建築工事の受注者)にとっても良い品質の住宅を提供し、それを施主に理解してもらい、さらには後々のクレームなどのトラブルを抑制するためにも重要な機会です。

しかし、これをそれほど重要にとらえていない工務店が多く、全国各地で適当な施主検査が横行し、せっかくの機会を施主も工務店も無駄にしていることが少なくありません。

施主検査の所要時間と開始時間

施主検査の所要時間と開始時間の関係は深いですので、この2つは一緒に解説します。

所要時間

はじめての施主検査ともなれば、どれくらいの時間がかかるのか想像するのは難しいでしょう。所要時間は、建物の規模(大きさ)やプラン、施工品質(施工ミスが多いか少ないか)によって違いがありますが、建物面積が30坪程度だとして、建築中で1~1.5時間、完成後の竣工検査で2時間くらいはかかると思っておいた方がよいです。

前後のスケジュールにはゆとりをもって臨むようにしてください。特に、何らかの大きな施工ミス等が見つかった場合、その場で工務店とある程度の協議をする流れとなることもありますから、検査後のスケジュールがタイトなときは対応が遅れをとることもあります。

ちなみに、専門家に施主検査(竣工検査・完成検査)立会いを依頼した場合には、調査機材を使用したり、施主へ状況説明したりすることもあって、建築途中で1.5~2時間、完成後で2~2.5時間ほどかかることが多いです。また、床下や屋根裏内部のオプション調査も依頼すれば、もっと時間がかかり、3~4時間程度です。

所要時間

建物面積が30坪(約100平米)の住宅を専門家が調査する場合の所要時間

検査種類所要時間
建築中の検査1.5~2時間
竣工後の検査2~2.5時間
竣工後の検査(床下や屋根裏内部のオプション付き)3~4時間

開始時間

開始時間と所要時間から、自動的に終了時間をある程度、予測することができますよね。よって、開始時間は、所要時間や終了すべき時間のことを考慮して調整する必要があります。

施主検査は建物をチェックする機会ですから、暗くなると見づらくなりますので、明るい時間帯に実施するのが理想的です。

たとえば、所要時間が3時間と予想される場合、日が短い時期(12月や1月)なら、開始時間は遅くとも14時までに開始しておきたいものです。できれば、13時までが理想ですね。建物規模が大きい場合には所要時間も長くなりますので、10時頃などのように午前から開始できるように調整してください。

施主検査の実施時期はいつか(検査のタイミング)

施主検査には、完成時だけではなく建築途中で実施するものもありますが、建築途中はいつ、どのタイミングで実施するのでしょうか。完成後なら引渡し前だろうと、まだわかりやすいですが、建築途中はどのタイミングで実施するのかわかりづらいですね。

建築途中はいつやるか

実は、建築途中の施主検査は施主から申し出ないと工務店の方からその機会を設けてくれないことも多いです。そういうものがあると知らずに完成を迎える施主は多いでしょう。施主としては、建築工事請負契約を締結する段階で建築途中や完成後の施主検査があるのか、また、いつ頃に実施するのか工務店へ確認しておく必要があります。

工務店によっては(特に大手ハウスメーカーでは)、建築途中に確認会や説明会などの名称で現地確認の機会を案内していることがあります。検査という言葉を使わずに、「ただの確認」「説明を受けるだけ」という印象を持つ言葉ですが、本来は施主が施工品質や契約通りの施工か確認する良い機会ですから施主検査と同じだととらえて時間をかけて確認した方がよいでしょう。

ところで、建築途中の施主検査は、主に以下のタイミングで実施しておくことが理想です。

  • 基礎配筋工事
  • 構造躯体工事
  • 防水工事
  • 断熱工事

これらはいずれも非常に重要なタイミングです。基礎や構造躯体は建物の基本構造ですから、何かミスがあれば大変です(もちろん施工ミスの内容による)。また、防水や断熱は施工ミスが起こる頻度が高いので注意したい工程です。

工務店から、これらすべての施主検査を提案されることはほとんどありませんから、施主から積極的に働きかけるとよいでしょう。

建築途中の施主検査については、「建築中の住宅検査(ホームインスペクション)で隠れる前に見るべき4つのポイント」も参考になります。実際に建築途中で第三者の検査を検討するなら「住宅あんしん工程検査(建築中の住宅検査)」をご確認ください。「施工中の中間立会いで行うホームインスペクション(住宅検査)と依頼時の注意点」も参考にしてください。

完成後の竣工検査は引渡し前にチェックするべき

完成後の施主検査、つまり竣工検査の時期も説明しておきます。竣工検査は建物が完成してから引渡しを受けるまでの間に実施すべきです。

このとき、基本的には建物本体工事のみではなく、外構工事も完了してから行うべきですが、外構工事を建物本体の建築業者とは別の業者へ発注している場合は、外構工事の前に施主検査をすることになります。

注意すべきなのは、引渡しの直前よりも早めに実施すべきという点です。

引渡し日の前日や前々日に施主検査をする人もいますが、それでは引渡し前に補修工事が間に合わない可能性があります。できれば、施主検査と引渡しの間には少なくとも1週間以上の期間をあけることをおすすめします。

一級建築士

ゆとりあるスケジュールとするためには、引渡し日の2週間くらい前に竣工検査を設定するとなお良いでしょう。

施主検査に第三者の立会いが便利で安心

初めてでわからないことが多い施主検査です。だからこそ、インターネットで役立つ情報を探してここに行きついた人も多いでしょう。検査の際にチェックすべきことは次の「引渡し前の施主検査(完成検査)のチェックリスト」にも挙げていますが、自分たちだけでこれだけのことをする自信がないという人も多いです。

施主検査を無駄にしないために有効な方法が、第三者の専門家に依頼して立ち会ってもらうということです。施工不具合の有無をきちんと建築の専門家に診てもらうわけです。

自分たちだけでチェックして建築会社やハウスメーカーに指摘を伝えても、「そういうものですよ」と言われてしまって何も反論できなかったという声も少なくありません。

家を買う機会はそう多くありませんし、大きな投資をして取得するものですから、専門家に立会いを依頼することも考えましょう。専門家の立会いサービスは、内覧会同行などと呼ばれていますが、「建築士の内覧会同行・立会いサービス(新築一戸建て・マンション)」で詳しく説明しています。

補修後は再内覧会も行う

施主検査で施工ミスなどを指摘した場合、建築会社がその補修工事を行うことになります。そして、補修が完了すれば、その補修後の状況を確認するのも大事なことです。

ときには、補修をし忘れている箇所があることや、補修したものの充分ではないこともあるからです。この確認の機会のことを建築会社によっては、確認会や再内覧会、または再立会いなどと呼ぶことがあります。

ここでの注意点は、建築会社より、「補修後の確認は引渡しの後にしてください」と言われた時の対応です。基本的には、引渡し前のタイミングできちんと補修できているのか確認してから、引渡しへ進むことをお奨めしますので注意してください。

ただし、あまりに細かなキズなどを繰り返し指摘するなどして、引渡し日を延ばし続けてしまうと、建築会社から責任追及される恐れもあるので、これも注意しましょう。

施主検査の当日の流れ

多くの人にとって始めての施主検査ですから、当日の流れがわからないという声をよく聞きます。ここでは、建物完成後に行う施主検査について、一般的な当日の流れを紹介しておきます。

当日の流れ

  1. 現地前に集合
  2. 建築会社(建売なら売主)より、その日の進め方等の説明を受ける
  3. 住宅設備などの取り扱い説明を受ける
  4. 図面との照合および施工不具合の有無をチェックする
  5. 指摘事項の伝達・確認を行う
  6. 採寸等を行う

以上が、一般的な流れです。ただし、現場によって進め方に多少の差異があることは理解しておいてください。

持参すべき物

施主検査の当日に、施主が持参しておくと便利なものを紹介します。

図面(平面図・立面図・配置図)

図面と現地の照合のためにも、見つけた施工不良などの指摘事項を記録するためにも、図面があると便利です。平面図や間取図だけでも役に立ちますが、指摘箇所の位置を後でわかりやすくしておきために、立面図があると便利です。また、外構(フェンスやカーポートなど)の指摘事項の場所をメモするために配置図があると更に便利です。

注意点としては、必ず、最新の図面を持参するということです。古い図面と現地が不一致であっても正しい判断かどうかわからなくなるからです。

筆記用具

指摘事項の記録のために必須です。建築会社から受けた大事な説明などの記録にも使うことがあります。タブレットで記録していくこともできますが、それでも筆記用具を用意しておくことをお勧めします。

スケール(メジャー)

スケールは、施工不具合のチェックのためというよりも、家具やカーテンなどのために採寸するときに必要となります。採寸は別の日にするというならば、必須ではありません。

スマートフォン(またはデジタルカメラ)

施工不具合などの指摘事項や気になる箇所を撮影しておくと、後で見返すことができて便利です。ゆっくり時間をかけてチェックするなら、充電器も準備しておくとよいでしょう。

手鏡

詳細にチェックしていこうとすると、どうしても体をかがめて確認する箇所がいくつもあって、意外と疲れます。そういうときに、手鏡があれば、楽な姿勢で確認していくことができて便利です。

懐中電灯

新築した時点では、建物内の証明は付いていない箇所が多く、ダウンライトしかないことも多いです。そういった場合、少し暗くなると見づらいので、懐中電灯を用意しておきましょう。床下や小屋裏(屋根裏)、天井裏を点検するときにも、これで照らして確認することができます。

マスキングテープ

指摘事項を見つけたときに貼っておくと、建築会社への伝達で間違いが起こりづらくなります。建築会社によっては、マスキングテープを用意しておいて、施主に「自由に使ってください」と渡してくれることもあります。

ウエットティッシュ

一般的に新築住宅の施主検査では、美装(清掃)を入れた後に行います。しかし、それでもいろいろなところを触っていると汚れるものです。また、施主検査の時点では水道を止めていて利用できないこともあるため、ウエットティッシュを持参してください。

防寒着・スリッパ

冬など寒い季節では、長時間の施主検査の対応は大変なものです。その日の天候・気温を考慮した服装で臨んでください。フローリングの上は足裏が冷たく感じるため、スリッパも用意しておくことをお勧めします。建築会社によっては、スリッパは用意してくれていることもありますので、事前に聞いておくとよいでしょう。

飲み物

飲み物は用意しておくことをお勧めします。特に夏のように暑いときは、熱射病のリスクもありますので、必ず用意しておくべきものです。開始時間や長時間となりそうなときは、多少のおやつもあると助かることがあります。

一級建築士

天井点検口などの内部を覗いて確認するときには、脚立があると便利です。しかし、脚立を持参するのが大変なら、予め建築会社にお願いしておくと用意しておいてくれることもあります。

引渡し前の施主検査(完成検査)のチェックリスト

施主検査のうち、最後の検査となるのは建物完成後に行う完成検査です。引渡し前に行う最後の機会ですから、丁寧に確認して問題箇所があれば指摘して補修を求めましょう。ここでは、完成時の施主検査、つまり完成検査で施主がチェックすべき項目をリスト形式で紹介します。この後には、無償でダウンロードできるチェックリストのPDFファイルの案内もあります。

施主検査のチェックリスト

屋外部分

屋外部分とは、建物の外側で確認できる部分です。

基礎

  • ひび割れ
  • モルタルのはがれ・浮き
  • ジャンカ
  • 基礎パッキン及び水切りの状況

外壁

  • ひび割れ
  • 仕上材の欠損・割れ
  • 外壁材の継ぎ目のシーリング材の破断
  • 設備器具の固定箇所
  • サッシ・スリーブ等の開口部周リのシーリング材の破断

屋根

  • 割れ・欠損・ずれ

軒裏

  • ひび割れ・欠損・剥がれ
  • 漏水跡
  • 軒裏換気口の状況

雨樋

  • 破損・ひび割れ
  • 掴み金物のぐらつき
  • つまり

バルコニー

  • 床の沈み・欠損
  • 床の勾配
  • 排水溝の勾配
  • 排水口のつまり
  • 防水の立上り
  • 手すりのぐらつき
  • 支持部の欠損・割れ
  • 立ち上がり壁の欠損・割れ
  • 物干し金物の取り付け・動作

玄関ポーチ

  • 床の仕上げ
  • 壁・天井の仕上げ
  • 照明の点灯
  • インターホンの動作

その他

  • 境界標の有無
  • 屋外シンクの使用テスト

床下

建物内部の床下部分です。

基礎

  • ひび割れ(立上りおよび底盤)
  • ジャンカ

土台・床組み

  • 著しいひび割れ
  • 土台と床組みの接合部の浮き
  • シミ
  • 束の浮き
  • 金物の設置状況
  • カビ

その他

  • 断熱材の有無・設置状況
  • 給排水管の固定状況・漏水
  • 漏水跡
  • 異常な湿気
  • 防腐・防蟻処理の有無
  • 著しい地盤の陥没
  • 地面・土間のひび割れ
  • 工事残存物・ゴミの有無

屋根裏

  • 木部の著しいひび割れ・欠損・剥がれ
  • 金物の設置位状況
  • 配線の整理・固定・被覆状況
  • 断熱材の有無・設置状況
  • 漏水跡・シミ
  • 異常な湿気
  • カビ

室内

  • 床鳴り
  • 床の沈み・凹みや浮き
  • 著しい隙間
  • 傾き

  • 仕上材の割れ・はがれ・めくれ
  • 著しい隙間
  • 下地不良
  • 傾き
  • 漏水跡
  • 巾木と壁や床仕上げ材との隙間

天井

  • 仕上材の割れ・はがれ・めくれ
  • 著しい隙間
  • 漏水跡

建具・扉・サッシ

  • がたつき及び開閉時の音
  • 扉の重さ
  • 扉と枠の隙間
  • 鍵の施錠
  • 丁番の緩み等の取り付け
  • 戸当りの位置
  • 枠とクロスの隙間
  • ドアクローザーの動作
  • ガラスの割れ
  • ビスの締め付け

棚・収納

  • 扉のがたつき
  • 戸当り
  • 棚板のがたつき
  • ハンガーパイプの固定状況

設備

  • キッチン・トイレ・洗面台等の排水テスト(配管からの漏水・排水音の異常)
  • 換気設備の動作状況
  • タオル掛けの設置状況
  • 手すり(階段・浴室・トイレ等)の設置状況
  • その他の設置物の固定状況・動作状況

以上が完成検査で施主が確認しておくべきチェックリストで、できる限りシンプルにまとめてみました。

傾きの確認や床下・屋根裏内部の確認は専門性がより高いため、自力でチェックするのは難しいところです。また、工務店が言う「そういうものですよ」という説明・言い訳が本当のことかわからないという声も多いので、専門家に施主検査への立会いを依頼するのも効果的な方法です。

チェックリストのPDFファイル

それでも自力で施主検査(完成検査)を乗り切りたいという方には、便利なチェックリストのPDFファイルを無償で提供していますので、お使いください。

プロのホームインスペクターと同じ項目・範囲をセルフチェックしようとしても無理があることと、むしろ混乱してしまうことから、建築知識と経験がない人が現実的に確認できそうな範囲をまとめた実用的なチェックリストです。ファイル内には、簡単な豆知識情報も記載しているので、参考にしてください。

新築住宅の施主検査・完成検査の疑問を解決!

施主検査・完成検査の疑問を解決

ここまでに施主検査、完成検査について抑えておくべき基礎的な知識を解説してきましたが、最後によくある疑問についても解説しておきます。

施主検査がなし?(施主検査・完成検査をしないこともある?)

住宅の新築やリフォームをした人から、建物完成後の施主検査、つまり竣工検査をしないまま引渡しを受けて住んでいると聞くことがあります。施主検査なしで引渡しを受けたというわけですが、これは心配ですね。

施主検査は施主にとって大変重要な機会で、本来ならば引渡し前に施工不具合の有無をチェックして、建築業者へ補修してもらわなければなりませんが、この機会がなかったら施主にとって不利な状況です。

実際に、建築業者から引渡し前に建物が出来上がった状態の検査をするよう提案してこないケースがありうるため、完成が近づいた時点で施主の方から「引き渡しする前に施主検査は無いのか?」と積極的に施主検査の時期について質問してください。実施予定がないようであれば、はっきりと実施するよう求めるべきです。

多くの建築会社(住宅メーカーを含む)では、施主に対して施主検査の日程などの案内があるものですが、一部の業者ではそういった案内を一切しないケースも確認されています。これは、非常に不親切ですし、施主に完成状態を確認させずに引き渡そうとするのはあまりにも酷い対応だと言えます。

ただし、施主検査や竣工検査ではない別の名称で案内されることもあるので、誤解がないか施主側もチェックすべきです。たとえば、確認会や内覧会、引渡し前の立会いなどとスケジュール表などで案内されていないか確認してみてください。

万一、施主検査なしで引渡しを終えてしまった場合は、できるだけ早いタイミングで施工不具合の有無をチェックすべきです。このような場合、第三者の専門家に依頼することも検討しましょう。

引渡し後のサービスは、「住宅の点検・建物調査(居住中の一戸建て)」で対応しています。

完成後の施主検査(完成検査)に必要な持ち物は?

施主にとっては慣れない機会ですから、施主検査に必要な持ち物が何か見当つかないおいうこともあるでしょう。建築業者から案内される物だけでは不十分なこともあるため注意したいところです。

具体的には以下の持ち物を用意してください。

  • 筆記用具(ペン・メモ用紙など)(指摘箇所の記録のため)
  • 間取り図(指摘箇所は間取り図に記録するとわかりやすい)
  • デジカメまたはスマホ(大事な指摘箇所を撮影するため)
  • メジャー(採寸のため)
  • 懐中電灯(床下や屋根裏のチェックのため)
  • スリッパ(冬場は寒い)

これらの道具類は、建築業者が用意してくれている場合も少なくありません。特にスリッパや間取り図は用意している業者が多いです。事前に用意されている者について確認しておくとよいでしょう。

マスキングテープのように、現場で指摘箇所をマーキングするものを建築業者が用意しているはずですが、これを用意していないこともありうるので、念のために用意しておくことも考えましょう。

施主検査はやり直しできる?

施主検査を一度終えた後に、もう一度やってほしい、やり直したいとの声を聞くことがあります。

最初の検査で指摘した事項について、補修後の確認をしたいということであれば、本来なら当然にやるべきことですから、遠慮せずに建築業者へ「手直し工事後の再確認の日を調整したい」と申し出てください。

最初の検査できちんとチェックできたか不安なので、やり直したいということであれば、建築業者へお願いしてみましょう。このやり直しは、基本的にはお願いベースですが、了解してもらえる可能性は十分あります。指摘事項が多い時には不安になるものですし、自分たちだけでは見落としたのではないかと不安になるのも理解できることです。

やり直しによる2度目の施主検査は、再検査や確認会などと呼ばれることもあります。

しかし、「引渡し後にご自身だけで診てください」と言われることもあります。ここは交渉のしどころですね。

自分でやった施主検査が最悪だったときの対応方法

引渡し前の施主検査を自分たち家族だけで対応しようと考えて、建物の外部から内部に至るまで時間をかけてチェックしていったところ、基礎や外壁、室内の壁や建具などで多くの施工不良と思われるものを見つけて、最悪の結果だったという話を聞くことがあります。

そのようなとき、見つけた施工不良箇所を是正対応してもらうのはもちろんですが、素人の自分たちだけでいくつもの不具合があったのだから、プロに診てもらったらもっと問題が見つかるのではないかと考えるのも自然なことです。

実際に、最悪の結果だったのに、依頼したいという問合せをされる人もいます。そういったときは、費用がかかるとはいえ、入居後に後悔することのないように、プロに依頼することが良い対応策となるので検討するとよいでしょう。

新築・竣工後のよくあるクレームやトラブルは?

完成後の施主検査(=竣工検査)をしたときによくあるクレームやトラブルについて紹介します。

  • 工事が最後まで完了しておらず、とても施主検査をできる状態にない
  • 工事が雑で納得して引渡しを受けられない
  • 発注した図面・仕様と相違する点がある

これらは、本当によくあるクレームであり、かつ皆さんにとって大変重要なことばかりです。こういったトラブルに遭遇することをできる限りなくすためにも、工事に着手する前や工事途中の打合せで互いによく確認しながら進めたいものです。

工事が完了していない場合、引渡しや引越し時期までずれ込む可能性が高いですから、早めに進捗について確認すべきです。着工してから、ただ完成を待つのではなく、途中で工事の進捗が順調なのか、遅れがないのか確認することも忘れないでください。

工事が雑な住宅では、傷だらけで酷すぎたので、最後までチェックする気になれなかったという方もいました。本当に残念な思いになりますね。

一人で不安?家族で対応の方が安心できる

よく相談があることの1つに、「一人だけで施主検査をしなければならないので不安だ」という声です。家族の都合が合わない等の理由により、一人で対応しなければいけなくなる人もいるのですが、その場合、不安になるのもあたりまえかもしれません。

その場の雰囲気にのまれて何もチェックできず、言いたいことも言えず、聞きたいことも聞けずに終わったという後悔の声も珍しくありません。

逆に建築会社側からは誰が来るか(参加するか)ご存じでしょうか?会社や現場によりますが、多いときには、営業担当、現場監督、設計者、営業所長などで合計4~5人が立会いすることもあります。少ないときは、営業担当だけということもあります。

相手の人数が多いと気後れしそうですが、対応が丁寧との見方もできます。

やはり、こういう時の対策の1つが既にあげている専門家による施主検査への立会いの依頼です。

一級建築士

できるだけ、一人ではなく2名以上で参加することをお勧めします。一人ではその場の雰囲気にのまれてしまい、舞い上がっているうちに終わってしまったという人は多いです。

未完成なのに竣工検査(完成検査)をすると言われたが問題ないか?

建物がまだ完成していない状態であるにも関わらず、強引に竣工検査(完成検査)を行うように建築会社から依頼されて、さらには未完成状態のままで引き渡しまで強行されそうな人から相談を受けたことが何度もあります。

このようなケースは、特にその建築会社の決算月になると増える傾向にあります。中間決算の月もそうですので、9月と3月に特に多い問題です(日本の会社は3月決算が最も多いため)。

未完成の状態で竣工検査を適切に行うことはできませんので、明らかに問題ある行為です。施主としては、完成後に実施するよう明確に求めるべきです。以下の流れを順守して進めてもらうよう交渉しましょう。

  1. 建物完成
  2. 竣工検査(完成検査)
  3. 補修工事(手直し工事)
  4. 補修後の再確認
  5. 引渡しと残金決済

上の流れで進めず、未完成のままで引渡しを受けてしまった場合、補修要求に丁寧・迅速に対応してもらえないといったトラブルに合う人は少なくありません。注意してください。

施主検査に第三者の専門家は有効か?

施主検査を施主が単独で適切に行うことは、建築に関する専門知識や検査経験がどうしても不足するために難しいものです。

施工不具合と考えて指摘しても、工務店やハウスメーカーから「そんなものです」と言われてしまうと、それが妥当な判断かどうかわからず、疑問を抱えたままになってしまうことも多いです。

新築住宅の施主検査(竣工検査・完成検査など)に何度も立会いしている専門家ならば、そういった疑問にも応えられますし、施主が全く気付かない点まで指摘してもらえることも多いため、第三者の専門家に立会いを依頼することは有効な手段だと言えます。

住宅を新築する際の必要なコストだと考えて依頼を検討するとよいでしょう。

一級建築士

費用がかかるとはいえ、滅多にない大事な機会ですから、専門家への依頼も検討するとよいでしょう。最近は、専門家の立会いはホームインスペクションと呼ばれています。


施主検査についてお伝えすべきことは多いですね。マイホームのハード面に関する安全性を少しでも確保するため、また、住み始めてからの後悔を少しでも抑制するため、施主検査についてはしっかりと対応できるように準備しておきましょう。

施主検査・内覧会立会い
施主検査にアネストの一級建築士が立ち会う

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。
住宅
ホームインスペクション

住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。