中古住宅を購入した方(もしくは購入しようとしている方)からよく伺う話の1つとして、
「売主さんがまだ住んでいるので、遠慮してゆっくり見ていない」
というものがあります。
売主に遠慮される方は意外と多く、その結果として何千万円もの高額な買い物であるにも関わらず、物件をよく見ずに中古住宅を買っている、、、
そのようなケースが見られます。
これから中古住宅を購入する人に向けて、内見に十分な時間を割かず、ゆっくり見ていないときのリスクと、中古住宅売買の内見に関する基礎的なことを解説します。
ゆっくり内見できないと購入判断しづらい
中古住宅の購入検討者から聞く話としては、「できれば購入したい気持ちはあるけど、ゆっくり見ていないので何かないか心配で決断できない」というものがあります。
このことは、売主にとっても不動産仲介業者によっても機会損失になっていますね。
売主が居住中の場合で、物件見学時に売主が在宅であれば、遠慮して10分程度しか見ていないこともあり、驚かされます。
それでは時間が短すぎて、数千万円もの大きな買い物について購入判断するのが難しくなるのは無理もありません。これは、どう考えてもおかしいですよね。いくら見学後に検討時間を長くとったとしても、肝心の見学時間が短く、物件のことを把握できていないようでは、あとで後悔しかねません。
それでは、ゆっくり内見していない時のリスクの事例を紹介します。
間取り図と実際の建物に相違があることもある
SUUMOやHome'sなどの不動産ポータルサイト、または不動産会社のWEBページなどで販売中の物件の間取り図が公開されていることが多いです。
また、仮に公開されていなくても、現地に内見に行った時に間取り図をもらえることが多いです。
その間取り図が、設計者が新築や増改築の時などに作成した設計図、もしくはそれを基に作成したものであれば、現物とのずれがほとんどない正確なものかもしれません。
しかし、不動産会社が現地を目測したことをベースに間取ソフトで作成したものである場合、実際の建物と相違する部分がいくつもあることがあります。
たとえば、ドアの位置や窓のサイズ感、収納の位置などが、間取り図と現場で全然違っていたということが本当に起こっているのです。
内見の時間をしっかり確保して、こういうところまでチェックしていないと後で後悔することもあるでしょう。
住宅設備を把握していないこともある
短時間だけの内見で終えた場合、見学した住宅が有する住宅設備すらも全然把握していない人もいます。たとえば、以下の設備などです。
- 食器洗い洗濯機
- キッチン収納の吊戸棚
- トイレや洗面脱衣室の収納(凡その大きさを含めて)
- 水栓がシャワー水栓かどうか
- 外部水栓(屋外にある水栓)
- 各居室のエアコンスリーブ
- 床下収納庫
- 点検口(床下・屋根裏)
こういった設備について覚えていなくても、受領した間取り図などの資料で確認できることならよいですが、中古住宅では詳細な図面が提供されず、確認できないことは多いです。
また、不動産会社に質問して回答を得られるならよいですが、聞いてみると「う~ん、どうだったでしょうか、、、」といった反応になることも多いです。これは、不動産会社の営業担当者も多くの物件を見る機会があるために、訪問した住宅の設備などをきちんと覚えておくのは難しいからです。
建物の状態(劣化事象など)を何も見ていない
中古住宅を購入する人のうち、たいへん多くの人が、購入後にリフォームしています。
建築費用はどんどん上がっていることから、リフォーム費用も馬鹿にならない金額ですから、購入する前に建物の状態をある程度は把握しておいて、リフォーム業者にだいたいどれくらいの工事費用がかかるのか相談しておくと安心感がありますね。
そのためには、時間をかけて建物の状態を観察する必要があります。プロ並みに診断することができなくても、いろいろな部位の劣化状態を可能な限り把握しておきたいです。
そのためには、時間が必要であり、10分や20分では無理があります。
本来なら、建物を診るプロであるホームインスペクターに依頼して、ホームインスペクション(住宅診断)をしてもらうべきですね。
プロにホームインスペクションを依頼すると、100平米くらいの住宅で、3~4時間くらいの時間をかけて調査します。自分でゆっくり見れない人も依頼を考えるとよいですね。
中古住宅では売主が居住中のまま販売することが多い
中古住宅の売買市場では、売主が自宅に住みながら売却に出していることはよくあることです。自宅が売れたら引越し先を探すという人、次の新居を建築中で完成するまでは今の自宅に住み続ける人など、様々な事情で居住しながら売りに出している人がいます。
そういった中古住宅の購入検討者にとっては、現地まで内見に行ったときに、どうしても売主に申し訳ない気持ちが出てゆっくり内見できないということがあるのです。
新築住宅の場合は、売主が居住中ということはないですから、こんなに極端なことはありません。もっと、ゆっくり現場を見てから検討することができます。つまり、中古住宅独特の状況ですが、こういった遠慮があるのは日本人の良い文化かもしれません。しかし、あまりに遠慮していては、対象住宅の見極めがしづらくもなりますね。
売主が居住中でも内見時に外出することがある
私も以前に自らが居住中のマンションを売却したことがありますが、そのときは鍵を不動産仲介業者に預けて留守にしました。ゆっくり見学して頂いた方が良いですから。
売主にとっても、売却することが目的なわけですので、真剣に購入を検討している方がゆっくり見学したり、2度、3度も見学したりしても別に問題ないわけです。
ただ、不動産仲介業者が面倒に思い、真摯に対応してくれないことがあるかもしれません。また、家財道具がある状況で不動産会社が鍵を預かることができないと判断することもあります。これは担当者や会社次第ですね。売主の立場なら、このあたりのことは不動産会社と相談しておきましょう。
遠慮の対策はシンプルに
内見への遠慮に関する対策方法は非常にシンプルです。
単純に、買主が遠慮しすぎる必要がないことをよく理解することです。不動産仲介業者や売主から「遠慮なく、ゆっくり見てください」と言われても遠慮しがちな人が少なくないですが、「ゆっくり見て」という気持ちはほとんどの場合、本当の気持ちです。
もちろん、他人の家に上がって見せてもらうわけですから、マナーを守るべきであることは言うまでもありません。
勝手にいろいろな扉などを開けず、仲介業者(営業マン)に先導してもらう形をとったり、売主に断りを入れてから見るなどといったことは心がけましょう。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。