はじめて住宅を購入しようとする人にとって、最初に悩むことの1つは、購入を進めていく流れがわからないということです。スーパーマーケットやコンビニ、もしくはネットショップなどで商品を購入するのとは違い、知らない情報や専門用語が多く登場する住宅購入という一大イベントですから、購入する流れがわからないのは当たり前のことです。
一方で、深く考えず、不動産会社のペースに任せて取引を進めていくと後悔することになる可能性も少なくありません。小さくないリスクがあるイベントですから、住宅購入の流れを理解してから取引を進めていきましょう。
住宅購入を進める大雑把な流れ
住宅購入の流れは、細かく見ていくと説明しておくべきことが多いです。しかし、これから物件探しをしようという人が、最初から細かな流れを把握しておくのは大変ですし、またその必要性もありません。特に売買契約を締結する前あたりまでは、大雑把な流れさえ把握しておけば、取引の流れについて困ることはほとんどないでしょう。
そこで、まずは抑えておいてほしい、住宅購入の基本的な流れをご紹介します。その後で、物件の種別ごとに必要な流れを確認するとよいでしょう。
それでは、初めて住宅を購入する人が把握しておきたい住宅購入の大雑把な流れは以下のとおりです。
【Stage1:物件探し】
- 資金計画
- 物件情報の確認
- 不動産会社へ問合せ・資料請求
- 物件の見学
- ホームインスペクション(住宅診断)と物件の絞り込み
【Stage2:申し込み・契約】
- 住宅ローンの事前審査(仮審査)
- 不動産購入の申し込み
- 重要事項説明と売買契約
【Stage3:契約後から入居まで】
- 住宅ローンの本申し込み
- 住宅ローンの承認
- 住宅ローンの契約(金銭消費貸借契約)
- 引渡し前の内覧会(物件チェック)
- 残代金の支払いと引渡し、所有権移転等の登記申請
- 所有権移転等の登記完了
- 入居(引越し)
【Stage4:入居後】
- 確定申告(住宅ローン控除)
- 不動産取得税の支払い
いかがでしょうか?
大雑把な流れだと言いつつも、決して少なくない項目ですね。
住宅購入の流れに沿ってカンタン解説
次に、上に挙げた項目について、簡単に解説しておきます。繰り返しますが、売買契約を締結する前の段階では、契約以降のことを細かく把握する必要は高くありません。しかし、契約前のことについて多少は理解しておいた方がよいですから、少し踏み込んだ解説をしておきます。
資金計画と物件情報の確認
住宅を買いたい人が最初にやることは、資金計画と物件情報の確認です。本来ならば、自己資金や融資を受けられる金額、無理なく返済できる金額、現在の収入、将来の収入の展望などから、いくらくらいの物件を購入できるかといった資金計画から始めるべきです。
しかし、資金計画と言っても、希望エリアでどのような住宅がどれくらいの価格なのかわからなければ、計画しようもありません。そこで、資金計画と物件情報の確認は同時進行でやってもよいでしょう。
物件情報の収集は、SUUMOやHOME’S、nifty不動産といった不動産ポータルサイトがよく利用されますが、不動産会社のホームページも見てみることをお勧めします。ポータルサイトに掲載されていない物件情報が見つかることもあるからです。
もちろん、インターネットだけに探すのではなく、ポスト等に投函される紙媒体のチラシから得られる情報もあるので、情報収集手段は1つに固執しないでよいですね。
不動産会社へ問合せ・資料請求
希望する物件、もしくは希望条件に近い物件があれば、ホームページなどから問合せします。その際に、詳しい資料の請求を一緒にしてもよいでしょう。ただし、詳細資料は現地見学などで会った時に手渡しする営業マンも少なくありません。
次に、現地を見学することです。特に、物件探しを始めた初期段階では多くの物件を見ることもよい経験になるので、広告だけで「ちょっと違うかな」と判断してしまわずに、積極的に見学に行くとよいでしょう。
オープンハウスやモデルルームへ突然訪問しても構いませんが、すぐに物件が売れているケースもあるので、電話確認してから見学するとよいでしょう。物件によっては、不動産会社の担当に物件まで案内してもらうことが前提となっているケースもあります。
はじめて不動産会社へ問合せするときは、少しドキドキする人もいるようですが、まずは電話かメールで問い合わせてみましょう。
物件の見学
前述したように、オープンハウスやモデルルームへ直接訪問、または不動産会社による案内にて現地を見学してください。
このとき、建物だけを見て周囲の状況を見ていない人もいますが、周囲のこと(環境・隣地との境界や距離、接する道路など)もゆっくり見ておきましょう。ゴミ置き場も見ておいた方がよいです。
また、建物の確認も室内のことばかり見ていて、外観(外壁や基礎など)を詳細に見ていない人も多いですが、外壁や基礎で発見される不具合は多いので、必ず見学時に見ておきましょう。
新築の建売住宅を探している人なら「建売住宅を見学時のチェックポイント」も参考にするとよいでしょう。
ホームインスペクション(住宅診断)と物件の絞り込み
いくつもの物件を見学していきながら、購入する物件を絞っていくわけですが、絞った物件について売買契約をする前に実施しておきたいのが、第三者の専門家によるホームインスペクション(住宅診断)です。
建物の状態(施工不良や著しい劣化など)を確認してもらい、建物の客観的な情報を購入判断に活用するわけです。
実は、建物については、買う人も素人なら、売り人も素人同然ということが多いです。不動産会社の営業マンは建築について深い知識や十分な経験を持っている人が非常に少ないのです。建物について詳しくない人同士で高額な売買取引をしているのが現状ですから、注意したいところです。
ホームインスペクションの具体的な内容はこちらです。
住宅ローンの事前審査(仮審査)
物件を絞ったら、不動産購入の申し込みを行うのですが、その前に住宅ローンの事前審査(仮審査)をするように求められることがあります(不動産購入の申し込みが先になることもあります)。
これは、住宅購入に必要な資金の融資を受けられそうかどうか、売買契約の前に簡易的に確認する作業です。簡易的とは言っても、銀行などの金融機関に書類を提出して、金融機関に審査してもらうものです。この時点では細かな書類の提出はせず、主に買主の申告内容をもとに審査しています。
不動産購入の申し込み
不動産購入の申し込みは、一般的には不動産購入申込書(買付証明書などの別称もある)に署名・押印して売主へ提出することで行うものですが、このときに申込金(申込証拠金などの別称もある)として10万円程度の金銭を支払うこともあります。
この申込金は、売買契約の前に購入を取りやめた場合には全額が返金されるものです。しかし、一部の不動産会社が返金せずにトラブルになっていることもあるので、支払う前に確認しておきましょう。
不動産購入の申し込みをしてから住宅ローンの事前審査(仮審査)を行うこともあります。
購入申し込みについて詳しく知りたい人は、「不動産購入申込書の基礎知識と提出前の注意点」をご覧ください。
重要事項説明と売買契約
住宅ローンの事前審査(仮審査)で金融機関の承認を得て、売主と購入条件(価格や引渡し日などの条件)について合意すれば、売買契約の締結です。
この売買契約よりも前に、不動産会社より重要事項説明が行われます。この説明時には書面(重要事項説明書)が交付されます。重要事項説明は、売買契約より前に行うことになっていますが、同日に実施することも多いです。
売買契約の際には手付金を支払うことが一般的です。手付金の額をいくらにするかは、あらかじめ不動産会社と相談しておく必要があります。この契約後、買主の一方的な都合で購入を中止する場合、手付金は返金されないので、契約前によく考えてから取引を進めてください。
購入中止に際してのトラブルは多いため、「住宅購入のキャンセルと申込金・手付金・違約金」も参考にしてください。
住宅ローンの本申し込み
売買契約を締結した後は、住宅ローンの融資を希望する金融機関へ申し込みを行います。このときは、事前審査と違って年収の証明書(源泉徴収票など)の様々な書類の提出が求められます。自営業者の方は、提出する書類が多くなりがちです。
ここで行う審査を住宅ローンの本審査と呼ぶこともあります。
住宅ローンの承認
住宅ローンの申込後、その審査結果が出るまでは、1週間程度であることが多いですが、その時の状況によって2週間を超えることもあります。また、審査の途中で追加書類を求められるケースもあります。
売買契約の前に実施した事前審査(仮審査)で承認を得ていても、本審査で不承認となるケースもあります。この場合、状況次第で他の金融機関に申し込みするか、購入を中止するか、不動産会社の意見も聞いて検討しましょう。
審査結果で融資の承認を得られれば、次の段階へと進みます。
住宅ローンの契約(金銭消費貸借契約)
金融機関と住宅ローンの契約を行います。この契約は、金銭消費貸借契約と言われますが、契約後はもう後戻りは難しいですね。この段階で買主が契約をキャンセルしようとしても、違約金がかかる可能性が考えられます。
引渡し前の内覧会(物件チェック)
住宅の引渡し前の準備として、現地で住宅の状態を確認してください。新築住宅ならば、建物の施工品質などを確認する機会として内覧会の場が設けられることが多いですが、一部の売主については買主から催促しないと開催してくれないことがあるので注意が必要です。
中古住宅でも、売買契約前の見学から長い期間が経過しているようならば、現地確認しておくことをお勧めします。
売買契約前の段階で第三者の専門家にホームインスペクション(住宅診断)を依頼していない人は、引渡し前の段階で依頼することを検討しましょう。引渡し後より、売主側と補修交渉がしやすく、大変おすすめです。
残代金の支払いと引渡し、所有権移転等の登記申請
いよいよ引渡しですが、売買代金の残代金の支払いや諸費用の精算、所有権移転登記(売主から買主名義に変更する登記)や抵当権設定登記(住宅ローンに関する金融機関の権利の登記)の申請、鍵の引渡しを同日に行うことが多いです。
この手続きは、不動産会社や銀行などで行いますが、登記申請は司法書士が法務局で行います。
これ以降は買主の所有になるため、買主が自由に購入した住宅を使用することができるようになります。
所有権移転等の登記完了
所有権移転などの登記は、申請してから完了するまでに数日から1週間ほどの期間を要します。引渡し日の時点では、まだ買主名義に登記が変わっているわけではないことを理解しておきましょう。
入居(引越し)
入居、引越しについてはそれほど説明することもありませんね。早めに引越し業者を決めて、引越し日を調整しておいてください。
確定申告(住宅ローン控除)・不動産取得税の支払い
住宅ローン控除の対象となる方は、会社員の方であっても1年目だけは確定申告が必要なので忘れないでください。2年目以降は会社の年末調整により控除されます。
不動産取得税は、物件によってはかからないこともあります。税金がかかる場合は、忘れた頃に納税通知書が来るので、資金の準備をしておきましょう。
まとめ
住宅購入の流れを大雑把に理解しておくと言っても、決して少なくない情報ですね。実は、取引を進めるなかで知っておくべきことは、もっと多くありますので、以下も参考にしてください。
参照:建売住宅を購入する方
参照:中古住宅を購入する方
執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。