築浅の中古住宅を購入するときの注意点

マイホームを購入するときに、できる限り築年数の浅い新しい住宅を買いたいと考える人は少なくありません。築浅の中古住宅にはそれだけのメリットや魅力がありますね。

ところで、築浅と言っても築年数が何年までの住宅を言うのでしょうか?

実は明確に定義されているわけではないため、多少、人によってイメージにずれがあるかもしれません。こちらの記事では、概ね築5年くらいまでの中古住宅をイメージして書いていますので、ご理解ください。

築浅の中古住宅を購入するメリット・魅力

築浅の中古住宅を購入するメリット・魅力

築浅の中古住宅にもメリットやデメリットがありますが、まずはメリットから紹介します。あなたが購入する上で納得できるものか検討してください。

内装のリフォーム費用の負担が小さい

築浅物件の多くは、まだまだ見た目が綺麗な状態であることが多く、購入した後すぐにリフォームをする必要性は低いことが多いです。壁や天井のクロス(壁紙)が多少は見栄えが気になることもありますが、何かをこぼしたり、物をぶつけて穴があいたりしていない限りは、そのまま使用できる住宅が多いです(意外と壁に穴があいている住宅を見かけることは多いですが)。

とはいえ、前の居住者が使用していたまま使用するのは気になる人も多いです。特にトイレやお風呂などの水回り設備が気になる人が多く、専門業者によるクリーニングを入れる可能性くらいは考えておきましょう。

まだまだ耐久性が期待できる

住宅の耐久性という点では、まだまだ期待できることが一般的です。

たとえば、築5年以下の築浅の中古住宅でホームインスペクション(住宅診断)に入っても、外壁材の継ぎ目やサッシ周りなどのシーリングの劣化がそれほど進んでいないことが多いです。床下へ潜っても基礎のひび割れも欠損も何もないことが多いです(ただし、新築当時の施工不良は除く)。

つまり、劣化が進行することで起こるような症状はそう多くはないということです。

現行の耐震基準で建築されている

築浅の中古住宅を購入する上で最も大きな安心を感じられるポイントは、建物の耐震性です。

耐震性は、建築した当時の建築基準法の内容と構造的に重要な部分の施工不具合の有無に大きな影響を受けます。このうち、「建築した当時の建築基準法の内容」においては、築浅物件は安心感があります。現行の基準と同じであるため、古い時代の基準で建築した住宅よりも耐震性が高いことが多いのです。

もちろん、構造的に重要な部分で施工不具合があれば、そうとも言えないわけですが、築浅であることは耐震性を検討する上で大きなプラス材料であることは明らかです。

新築より建物価格は安く評価されている(安く買える)

築浅とは言え、中古住宅ですから建物の価格は新築住宅より安く査定されています。新築住宅に比べて安く購入できることは、買主によってメリットなっています。ただし、土地価格はそのときの市況が影響するため、土地と建物を合わせた総額でみれば、その物件の新築時よりも高く査定されて売りに出ている可能性もあります。

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築浅の中古住宅を購入するときの注意点

築浅の中古住宅には十分に魅力(=メリット)があることがわかりました。しかし、個々に物件を見ていくと心配されるものもあるため、よく注意点を把握しておきたいものです。

築浅物件の多くは、売主が想定よりも早く売却しています。それぞれの売却理由によっては、注意すべきこともあるため、一般的に考えられる売却理由と共に注意点を紹介します。

転勤・介護などによる転居するため

せっかくマイホームを購入したのに、転勤が決まって売却する人もいます。また、親の介護のために実家もしくは実家の近くへ引っ越すことにする人もいます。

この理由で売却する場合、対象物件に対して特別に注意すべきことはありません。

住宅ローンを払えないため

マイホームを購入したものの、計画通りに住宅ローンを支払い続けることができなくなる人もいます。そういった経済的な事情で売却するケースは少なくありません(購入するときには資金計画に注意しましょう)。

経済的に困窮した結果として売却するケースでは、なかには相当に生活が荒れてしまっていたのか、住宅も荒れているケースがあります。築浅の住宅とは思えないほど、内装が痛んでいるケースがあります。

これまでに実際に現場で見た事例としては、ゴミなどを含む荷物が多くて、内見時には見えていなかった床や壁がボコボコだったことがあります。

しかも、まだ居住中であれている場合、売主に気遣いすぎてゆっくり見学できないこともあるので、要注意です。

離婚・死亡

所有者が離婚したり、死亡したりすることにより、売却するケースもあります。この事情を気にする人ならば別ですが、そうでもなければ、ハード面で特別に注意すべきことはありません。

雨漏りや構造的な欠陥が見つかったため

稀にあるケースですが、住宅にいろいろな問題が見つかったため、そこに住み続けたくないということがあります。この場合、その内容にもよりますが、次に購入して居住する人も警戒しなければなりません。

見てきた事例としては、新築以来、何度も雨漏りを繰り返し、補修しても再発することで嫌になったというケースや、小屋裏で構造金物の緩みが複数箇所で見つかったので怖くなったというケースもありました。

もちろん、こういった問題は売買する上で重大な情報ですから、売買契約する前に売主から買主へ告知しなければなりません。しかし、その告知内容が過少になっていることや、告知せず知らなかったと言い張ることもありました。

その後のホームインスペクション(住宅診断)で明らかな補修工事の痕跡が見つかり、売主の責任を求めることになりましたが、その前後の交渉に費やすエネルギー、コスト、時間、精神的負担を考えれば、事前にきちんと告知してほしいものです。

他にもある築浅物件の注意点

他にもある築浅物件の注意点

築浅の中古住宅を購入する上で注意しておきたいことは他にもありますので、紹介します。

建物の価値はまだ下がる

築5年以下の築浅物件の場合、一般的には建物の評価はまだまだ下がっていくことになります。新築より安く買えたからといって、資産価値について安心できるわけではありません。

ただし、前述したように、土地はその時の市況に影響を受けるため、建物の評価が下がっても不動産全体としての価格が下がるとは限りません。特に、都会の物件では売買価格に占める土地の割合が高いため、売買するタイミング次第では意外と資産価値が維持されていることもあるのです。

新築時の施工不具合が存在している

売却理由の1つとして「雨漏りや構造的な欠陥が見つかったため」を挙げましたが、そこで記載したような極端に大きな問題ではなくても、新築した時の施工不具合が補修されず、もしくは気づかれずに残っている物件は意外と多いです。

このリスクは、「建物がまだ新しいから大丈夫だろう」という考えが通用しないことを示しています。築浅であっても相当古い住宅であっても新築時の施工不具合が見つかるリスクはあるのです。購入する前には、ホームインスペクション(住宅診断)をしておいた方がよいでしょう。

中古住宅選びは築年数と建物状態の比較検討が大事」も参考にしてください。

購入にかかる諸費用を考慮すれば新築住宅を購入できるかも

最後に、築浅の中古住宅を購入するメリットに挙げた「新築より建物価格は安く評価されている(安く買える)」を覆してしまうことに触れておきます。

住宅購入に関して価格で比較する場合は、必ず、住宅購入にかかる諸経費も含めて考えなければなりませんが、物件価格だけで比較してしまっている人は少なくありません。

売主が自ら販売している(仲介業者を介していない)物件では、仲介手数料が不要ですが、不動産会社が仲介している物件では仲介手数料が必要です。この仲介手数料は、多くの場合、物件価格×3%+6万円(税別)ですが、これがなかなか大きなコストになっています。

築浅の中古住宅では、その多数において不動産会社が仲介しています。一方で新築住宅では売主が自ら販売していて不動産会社が仲介していないこともあります。この場合、総額で比較すると買主の総負担額がさほど変わらないということもあるのです。

築浅だから安くてお得だと決めつけず、冷静に諸経費も計算してから検討してください。

築浅の住宅なのに補修跡が多数ある

建物が古くなれば劣化症状が増えていくため、補修する機会も増えます。築年数が経過するほど補修跡が増えるのは当たり前とも言えます。

しかし、築浅の住宅にも関わらずいくつもの補修跡が散見される物件があり、そういった物件については注意が必要です。

たとえば、3~4年なのに外壁や基礎のクラック(ひび割れ)の補修跡が多い場合、直しても直しても問題が生じている可能性があり、何か根本的に大きな瑕疵が存在する可能性も考えられます。


築浅の中古住宅の購入は、基本的には魅力的なものだと思います。メリットと注意点をよく理解した上で、慎重に検討してみてはいかがでしょうか。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。
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住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。