注文住宅や着工前に契約した建売住宅の建築工事が始まってから、もしくは建築途中の建売住宅を購入してから、工事が進んでいく様子を見ながら不安になり、建築工事の途中から第三者の専門家によるホームインスペクション(=住宅検査)を依頼したいという人は非常に多いです。
全国各地で多くの新築住宅のホームインスペクションをしているアネストでは、着工済み、つまり建築途中の住宅の検査依頼について相談を受けるケースは本当に多く、年々増えているといる状況です。
本当は着工する前から話を進めて準備しておくことが望ましいですが、そもそも着工済みの物件を購入する人も多いですし、忙しくしているうちにホームインスペクション業者へ問合せ・依頼する時間をとれなかったというケースもあります。
建築途中からでも依頼は可能ですので、以下を読んでから問い合わせてみるとよいでしょう。
建築途中に不安になるきっかけ
最初に、建築途中になってマイホームの建築工事に対して不安になるきっかけについて、紹介します。アネストには多くの相談が寄せられていますので、そのなかから特に多い事例を紹介しています。ここを読んでいるあなたにも当てはまることがあるのではないでしょうか。
著しいひび割れ・ジャンカ等の施工不良がある
当然と言えるかもしれませんが、施主(建売なら買主)が建築現場を訪れた際に気付いた施工不良がきっかけになっているケースは非常に多いです。また、施工不良と明確に判断できないものの、その可能性を感じて問合せされる人も多いです。
たとえば、基礎コンクリートの著しいひび割れやジャンカ、合板の割れ、防水シートの破れなど、様々な症状について伺うことがあります。
建築会社へ質問してもきちんと答えてくれない
意外と多いきっかけの1つが、建築会社の営業マンや現場監督に不明点や不安な点を質問しても、きちんと回答や説明をしてもらえないというケースです。
「これ、施工不良かな?」と感じたものについて質問しても丁寧に説明をしてもらえず、話をはぐらかされたり、論理的でない話をされたり、単純に「そんなものですよ」だけで済まされたりしていることが多いです。「確認して返答します」と言うものの、いつまで待っても連絡がないという話を伺うことも少なくありません。
雨なのに養生していない
「雨が降り続いているのに養生していない」「雨の日にコンクリートを打設しないと約束していたのに打設した」といった雨に関わるきっかけも多いです。特に梅雨時になると多くなります。
多少の雨ならそう気にすることがないとはいえ、何日も雨が降っているのにそのまま放置していては、心配になるのも当然です。
工事が遅れている
建築工事には、工事の遅れは付き物だと言ってもよいかもしれません。予定していた工事スケジュールより遅延することはどこの現場でもよくあることです。
しかし、あまりにも大きく遅れると不安になる人も増えますし、実際に現場管理がどうなっているのかと心配になることもあります。
酷いときには、その大きな後れを取り戻そうとして突貫工事になっていることもあり、余計に心配になりますね。
契約するまで施工不良のことを考えていなかった
施主や買主にとっては、契約するまでは考えること、やるべきことが多すぎて、ホームインスペクションのことをゆっくり検討できなかったということも少なくありません。「こういうサービスがあることは知っていたけど、問い合わせもせずにいた」という話を伺うこともあります。
建築途中からであっても依頼は可能とはいえ、それでもできる限り早めに問合せしておくことをお勧めします。
工事現場が荒れている(整理整頓されていない)
建築途中にマイホームの様子を見学へ行ったとき、現場が荒れ放題で心配だと問合せされる人もいます。現場にある資材・道具類などが整理整頓されておらず、18時を過ぎているのに工事作業をしているのかと思うような様子であれば、現場管理が心配になっても不思議ではありません。
敷地内にタバコの吸い殻がいくつも落ちていると心配そうに問合せされる人もいました。整理整頓は基本ですから、きちんとしてほしいですね。
現場監督が何度も交代する
これは少数派ですが、たまに伺うことがあるので紹介しておきます。着工してから、何度か現場監督が交代するケースがあると、「引き継ぎがきちんとできているだろうか」「会社に問題でもあるのだろうか」と心配になるのも無理はありません。
体調不良などやむを得ない事情で交代することはありうるものですが、3度も4度も交代すると心配になりますよね。
建築途中に心配になるきっかけを紹介してきましたが、これらのうち1つだけがきっかけになるとは限りません。複数の心配の種が重なって不安・心配が大きくなって、ホームインスペクションを入れることにしたという意見も多いです。
建築途中でもホームインスペクション(住宅検査)は依頼できる
建築途中に、様々な理由によりマイホームの建築に不安を持った場合でも、決してあきらめる必要はありません。ホームインスペクション(住宅検査)は、建築途中からでも依頼することはできるのです。
依頼するにあたって、依頼者が知っておきたいことは、工事が進んでいて既に目視できない部分については、確認できないということです。
建築途中のホームインスペクションも、基本的には目視・触診・計測といった手段で検査を行うため、目視できない部分や手が届かない部分については、確認することができません。建築途中でも依頼はできるものの、その時点で既に目視できない部分までは検査してもらえないということです。
ただし、特別な事情があり、たとえば、基礎コンクリート内部の鉄筋を調べたいといった場合には、その目的や状況によっては鉄筋探査機などの調査が有効なこともあるので、そういったときにはホームインスペクション業者に相談してみるとよいでしょう。
建築途中の住宅検査のタイミングと施工ミスの事例
建築途中の住宅検査、つまりホームインスペクションを依頼するに際して気になることは、「検査のタイミング」と「検査でどのような施工ミスが見つかるのか」という点ではないでしょうか。この2点について解説します。
建築途中の検査のタイミング
新築住宅の建築途中で第三者の専門家であるホームインスペクターに住宅検査を依頼する場合、どういった検査のタイミングがあるのでしょうか。ここでは、木造住宅を例にとって紹介します。
検査のタイミング
- 地盤改良工事の開始時または途中
- 掘り方(遣り方)の完了時
- 基礎配筋工事の完了時
- 基礎立上りの型枠設置後・コンクリート打設前
- 基礎コンクリート打設時
- 土台設置工事の完了時
- 構造躯体の金物設置完了後
- 外壁の防水シートの完了時
- 外壁の断熱材の完了時
- 足場解体の直前
- 壁下地材の完了時
- 竣工検査
以上が一般的に木造住宅で検査するタイミングの候補です。このうち、「地盤改良工事の開始時または途中」は地盤改良工事を行う住宅のみが対象となります。
ここには12回のタイミングを挙げていますが、この全てを依頼すべきというわけではありません。依頼者の判断で必要なタイミングと回数を依頼すればよいでしょう。
新築住宅の建築中の検査実績が多いアネストでは、上のタイミングのうち、ご利用が多い項目は以下の8回です。
ご利用が多い8項目
- 基礎配筋工事の完了時
- 基礎立上りの型枠設置後・コンクリート打設前
- 基礎コンクリート打設時
- 土台設置工事の完了時
- 構造躯体の金物設置完了後
- 外壁の防水シートの完了時
- 外壁の断熱材の完了時
- 竣工検査
以上を参考にして、予算のことも考えて判断してください。
検査で見つかった施工ミスの事例
実際の検査において見つかる施工ミスは多岐にわたります。基礎工事から、構造躯体・金物の施工、防水や断熱など、様々な工程で見つかっています。ここでは、その指摘事例の一部を紹介します。
基礎工事
ホールダウン金物のずれ
基礎工事を終えたタイミングで行ったインスペクションにおいて、ホールダウン金物の位置がずれていました。構造耐力に関わる施工ミスです。
基礎工事
かぶり厚の不足
基礎立上りの型枠を設置した状態、コンクリートを打設する前のタイミングで行ったインスペクションで、かぶり厚さの不足が確認されました。構造耐力に関わる施工ミスです。
構造躯体
構造金物の種類の間違い
上棟後、柱・筋交い等の構造金物を取り付けた状態で行った検査で、取り付けられた金物の種類が異なる(耐力が劣るものになっていた)ことが確認されました。構造耐力に関わる施工ミスです。
構造躯体
構造金物の施工ミス
構造金物を取り付けた状態で行ったインスペクションで、金物の取り付け不良が確認されました。構造耐力に関わる施工ミスです。
断熱工事
断熱材の厚さ不足
外壁面の断熱材を施工した状態で行った検査で、断熱材の厚さが設計図と異なることが確認されました。断熱性能に関わる施工不具合です。
防水工事
防水シートの著しい隙間
外壁面の透湿防水シートを施工した状態で行った検査で、防水シートが丁寧に施工されておらず、大きな隙間が確認されました。防水性能に関わる施工不具合です。
以上の施工ミスの指摘内容は、いずれも建物の構造耐力や基本性能に影響があるものです。しかも、建築会社の現場担当は見ていてわかっていたはずの問題が多いですが、施主・買主側の検査でようやく指摘し是正対応を促すことができたものです。検査の必要性も理解できますね。
建築途中からの依頼方法
さて、いよいよ建築途中からホームインスペクション(住宅検査)を実際に依頼する方法、流れについて説明します。焦らず、しかしできるだけ急いで進めることが肝要です。
工事進捗の把握(建築会社への質問と現場写真の撮影)
ホームインスペクション業者へ問い合わせると必ず聞かれることは、現在の工事進捗です。これがわからないと、適切な検査タイミングや想定される検査回数が判断できないからです。
そのため、問合せる前に、建築会社へ質問して現在の工事進捗を確認する必要があるのですが、もう1つ有効な方法が現地の写真です。問合せするときに出来る限り近いタイミングで、現地の様子を確認できる写真を撮影し、それをメールやLINEで送信して相談すると話が早いでしょう。
写真は、どこかの一部を撮影するものより、建物全体を見渡せるような位置から全体を撮影したものが効果的です。今のスマホの画質はよいので、遠目から角度を変えて3枚くらい撮影して送信すれば、ホームインスペクション業者側が判断できることが多いでしょう。
以下は撮影する写真の参考です。
建築会社へホームインスペクション(住宅検査)の利用を連絡
建築途中の現場に検査へ入るには、事前に建築会社へ話して承諾を得ておく必要があります。建築会社としては、現場の安全管理などの責務もありますから、いくら施主や買主だからといって本来は自由に出入りできるものではないのです。
また、管理上の問題だけではなく、現場監督も職人も何も聞いていなかった人が来て検査して帰ったとあっては気を悪くすることもあるでしょう。管理上の問題やお互いの関係のことも考えて、きちんと承諾を得ておきましょう。
住宅検査費用の見積もり依頼と検査タイミングの相談
現地で撮影した写真のほかに、平面図と立面図くらいは用意して、ホームインスペクション業者へ問い合わせると同時に送信し、検査のタイミング・回数・検査費用の見積もり金額を提示してもらいましょう。
写真と図面があれば、スムーズに話を進めやすいので、問い合わせる側も業者側も便利です。
ここで提案された検査タイミング(=検査項目)について検討してから、依頼するわけですが、ゆっくり時間をかけて検討しているとどんどん工事が進んでしまって大切な検査タイミングを逃してしまうリスクもあります。
そこで有効な方法は、直近で実施する検査タイミングだけでも早期に判断して依頼し、その1回だけの検査を依頼してしまう方法です。その後の工程の検査は後から相談するなどして、追加依頼すれば問題ありません。この点はホームインスペクション業者側も柔軟な対応が必要なところですね。
必要書類の確認と準備
ホームインスペクション(住宅検査)を実施するためには、図面等の資料が必要になります。どういった書類が必要になるのか、ホームインスペクション業者より確認しておきましょう。
工事進捗や依頼する検査タイミングによって、必要書類の種類が異なりますから、検査タイミングの相談と同時に進めておきたいところです。
検査の実施と次回以降の検査の依頼
無事に1回目の検査を実施できれば、その後の検査のタイミングや回数について改めて相談しましょう。1回目の検査時に現場監督などから、その後の工事スケジュールについて聞けることも多いため、より深い話・相談ができることも多いです。
建築会社から案内される中間立会いとは何か
工事が進んでいくと、建築会社から「中間立会いを行いたい」と連絡が入ることがあります。この中間立会いとは、建築途中で施主が現地に立会って、設計図どおりに工事が進んでいることを確認することや、コンセント等の最終位置確認を行うことを指しています。
ただし、建築会社によって異なる意味で使っていることがある言葉なので、中間立会いで何をするのか具体的なことを確認してください。会社によっては、建物の構造などについて設計者などから説明する機会として設けていることもあります。
その立会い時に、第三者の検査をできると考えて依頼する人がいますが、その時の工程次第では検査できることがほとんどないケースもあるので注意してください。検査は適切なタイミングでしてこそ、より大きな効果を期待できますので、ホームインスペクション業者と相談してから検査日程を調整することをおすすめします。
まとめ
建築途中に不安になるきっかけや、建築途中からホームインスペクションを依頼する方法について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
この記事を読んでいる人は、建築途中の人が多いかもしれませんが、同じような理由がきっかけで施工不良について不安・心配があるようでしたら、一度、ご相談ください。
ホームインスペクションを一度入れておくことで、現場が引き締まり、予防効果を期待できることもありますし、心配なまま工事が進んでしまい、心配しながらそこで住み続けるのもよくないですね。
執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。