アネストには、毎日、ホームインスペクション(住宅診断)に関して大変多くの様々なご質問を頂いていますが、そのなかに「購入したい住宅が将来も大丈夫であるか診てほしい」というものが、稀にあります。
※参照:ホームインスペクションとは?
確かに、今の状態だけではなく、その住宅の将来の状態まで確認できるのであれば、それは嬉しいことだと思いますが、残念ながらホームインスペクションでその建物の将来のことまで確認できるわけではありません。あくまでも、その建物の現況がどういった状態にあるか確認するものなのです。
ホームインスペクションは建物の現在の状態を把握する診断
ホームインスペクション(住宅診断)は、第三者の専門家(通常は建築士)が行うものですから、建物の将来変化もある程度は予測がつくと思うことがあるのかもしれません。もちろん、将来のことまでわかればその方がよいわけですが、いくら専門家でも建物の将来のことまで保証できないものです。
現況において、目視できる範囲の建物の状態(施工不具合の有無や劣化状態)を確認するが、ホームインスペクションです。
将来のことまで確認できないものの、建物の現在の状態(現況)を知ることは大変大事なことです。売買する際に、売主や施工業者へ補修対応を求めることができたり、購入判断に活用できたりするからです。
一方で、新築住宅の場合は、2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、主要構造部分および雨水の侵入を防止する部分について、売主または施工業者に10年間の保証責任がありますし、新築住宅の瑕疵保険制度もあります。
中古住宅の場合でも、瑕疵保険の検査において基準に適合すれば瑕疵保険に加入できることもあります。売主が不動産業者の場合は引渡しから2年以上(ほとんどの売買で2年丁度にしている)の契約不適合責任もあります。
将来のことについては、こういった保証・保険などのことも考慮しましょう。
建物の状態は変化する
新築であった住宅も、年数の経過とともにどんどん劣化が進んでいくことは誰でも理解できることですね。
たとえば、基礎にひび割れが生じたり、外壁材の継ぎ目やサッシ周りのシーリングが割れたり、床下や屋根裏で確認できる金物が緩んだりするなど、住宅の至る箇所で様々な劣化が進んでいくわけです。現時点で雨漏りしていない住宅でも、将来は雨漏りすることは普通に起こりうることです。
建物の状態は変化していくものですから、こういったリスクがあることは理解しておきましょう。
定期的な点検
建物の状態の変化については、できれば定期的な住宅の点検などで把握しておきたいものです。早めに補修すべき点を見つけることができれば、被害は小さくてすみますし、結果的には補修・メンテナンスコストを安く抑えられることでしょう。
新築で購入した住宅であれば、売主や施工業者による定期点検が実施されることが多いでしょう。引渡し後、半年・1年・2年・5年などのタイミングで点検を提示されるケースが多いようです。もし、売主等より点検について聞いていない人は、「定期点検がないか」聞いてみてください。
多くの場合、売主等による点検は無償ですが、オプション調査は有償になることもあります。こういったことは、本当は購入するときに確認して置くことが望ましいです。
中古住宅を購入した場合は、基本的には購入した人が自ら点検するか、第三者に点検を依頼することになります。第三者に依頼すると費用がかかりますが、早めの補修・メンテナンスのためにも必要なものだと考えてはいかがでしょうか。
実は、新築住宅を購入した人でも、少なくとも一度以上は、利害関係のない第三者の専門家に点検を依頼することをお勧めします。新築では、施工不具合が見つかれば、売主や施工業者の責任と負担で補修対応すべきですが、対応の手間とコストを考えて真実を報告してくれない事例が頻発しているからです。
第三者に点検を依頼するタイミングとしては以下が考えらえます。
- 引渡し後すぐ(入居する前)※購入時や引渡し前に実施していない場合
- 引渡し後、半年~2年(それまでに実施していない場合)
- 築5年(長期優良住宅の場合は特に)
- 築10年(10年保証が切れる前に)
- 築15~20年(外壁等の劣化対応が必要な時期)
ちなみに、ここで言う点検とは、ホームインスペクション(住宅診断)のことでもあります。上の全てのタイミングで必要だということはありませんので、適宜、必要なタイミングで検討してはいかがでしょうか。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。