主に住宅の購入に際して利用されることが多いホームインスペクション(住宅診断)ですが、「不動産会社から新築住宅では普通は依頼しないと聞いたが本当か?」「築浅の中古住宅では不要か?」といった相談を受けることが多いため、ホームインスペクションの対象となる物件について解説いたします。
前提として、ホームインスペクションの対象物件とするかどうかは、インスペクション業者によっても多少の差異があること、この記事ではインスペクションを業界の草創期である2003年から行っているアネストの対象物件を中心として記載していることをご理解ください。
なお、その前にホームインスペクションというものがよくわからないという人は、「ホームインスペクションとは?」も合わせてお読みください。
ホームインスペクションの対象となる構造・階数・建物面積
ホームインスペクション(住宅診断)は、建物の施工不具合や劣化状態を調査するサービスですから、対象となるのは建物(建築物)です。土地・地盤の調査は含まれません。
構造
多くのインスペクション業者において、木造(W造)・鉄骨造(S造)・鉄筋コンクリート造(RC造)やこれらの構造を合わせた混構造(多いのは、鉄筋コンクリート造+木造の混構造)の建物に対応しています。大手ハウスメーカーが建築することが多い軽量鉄骨造やプレハブ住宅と呼ばれるものにも対応していることが一般的です。
ただし、1~2名のみで運営しているインスペクション業者のなかには、「木造の経験しかないので、木造のみを対象とする」といったケースもあります。これは、問合せれば教えてもらえることですから、誤って依頼することはないでしょう。
階数
一戸建て住宅では、平屋建て(1階建て)~3階建てが多いですが、ほぼ全てのインスペクション業者でこれらに対応しています。地下1階・地上2階建てといった地下がある住宅でも対応してもらえるでしょう。
ただし、4階建て以上や5階建て以上の建物は対象外とするケースはあります。外壁などの高い位置は確認しづらいことを理由としていることもあります。4階建て以上に対応している業者でも高い位置ほど詳細は確認できないことは理解しておきましょう。
建物面積
建物の床面積に、制限を設けているインスペクション業者はあります。あまりに大きいと1日で調査しきれない等の理由によるようですので、面積が大きい住宅のホームインスペクションを検討している人は、問合せるときに対応可否を確認しましょう。
ちなみに、アネストでは、一部の例外を除いては構造・階数に関わらず住宅の全ての構造・階数でホームインスペクションを行っています。ただし、建物面積については地域によっては大きすぎると対応できないときや、複数名での対応となるときもあります。
新築住宅と中古住宅と築年数
アネストでは、新築住宅も中古住宅もホームインスペクションを行っていますが、インスペクション業者によっては中古住宅のみに限定しているケースがあります。とはいえ、新築と中古の両方に対応している業者の方が多いです。
新築住宅はホームインスペクションの対象になる
新築住宅は、多くのインスペクション業者が対応しています。新築では、建築時の施工不具合のチェックを行うことが主な目的であり、細かな傷や汚れのチェックをするわけではありません。構造耐力や建物の性能に関わる施工不具合のチェックです。
業者によっては、完成物件のみを対象としていて、建築中のホームインスペクションには対応していないことも少なくありません。完成物件のみを扱う方がノウハウ・建築技術において容易であることが一因になっています(簡単にできるという意味ではありません)。そういう意味では、完成物件であっても建築中のインスペクションにも対応している業者へ依頼する方が、安心感があると言えます。
建売住宅も注文住宅も対象になる
新築には、建売住宅(分譲住宅とも言う)と注文住宅がありますが、多くのインスペクション業者はそのいずれにも対応しています。
新築住宅で第三者にホームインスペクションを依頼する理由の1つは、建築会社側がきちんと工事監理をしていないことにあるのですが、建築会社とは別に建築設計事務所が入っていて、その事務所がきちんと工事監理もしている住宅では、依頼する人は少数派です。これは、建築設計事務所の建築士(設計者)に設計と工事監理を依頼した注文住宅のケースです。
中古住宅はホームインスペクションの対象になる
中古住宅はホームインスペクションの対象物件です。ほとんど全てのインスペクション業者が対応しています。後述しますが、中古住宅のインスペクションは法律でも規定されているくらいですから、中古物件に対応せず新築物件だけに対応するというケースは相当少ないはずです。
参照:中古住宅のホームインスペクション(建物状況調査)は必要ないと不動産業者に言われた時に読む記事
宅建業法上の建物状況調査は中古住宅のみ
不動産会社・不動産取引に深く関係する宅地建物取引業法(略称:宅建業法)というものがありますが、そのなかで建物状況調査について記載されています。これが、一般的に言われるホームインスペクションのことです。
中古住宅の売買等に際して、ホームインスペクションを利用するかどうか、不動産会社が売主・買主などへ確認をとることなどが定められています。ここで規定しているのは、あくまでも中古住宅であって新築住宅は含まれていません。
とはいえ、前述したように新築住宅にもホームインスペクションを行う業者は多く、また実際に多くの人が依頼しています。
築浅でも相当古くても調査できる
中古住宅のホームインスペクションについて、よくある質問に「築浅の中古住宅では不要か?」というものがあります。その回答は明確で「不要ではない」というものです。
中古住宅のインスペクションでは、建物の劣化状態だけをチェックするのではなく、新築時の施工不具合の有無も確認するからです。新築時点で不具合がある住宅もたくさんありますから、築浅だからという理由で不要という判断にはなりませんし、依頼することができます。
逆に相当に古い住宅についてはどうでしょうか。
古い住宅でも基本的には依頼することができます。しかし、一部ではインスペクションするほどの状態にないような建物もあります。言葉はよくないですが、あまりにボロボロで屋根や外壁の一部が無くなっていたり、崩れ落ちていたりといったケースでは、実施する意味がないかもしれません。
そういったケースでは、その状態を先にインスペクション業者へ伝えて、依頼できるかどうか相談する方が賢明です。
共同住宅(アパート・マンション)
この記事では、ホームインスペクションについて書いていますので、対象はホーム=住宅です。アネストでは、建物の一部が住宅として利用されていることが条件となっていますので、アパートやマンションも対象となります。
しかし、インスペクション業者によっては、アパート・マンションといった共同住宅には対応していないこともありますので、問合せ時に確認しましょう。
また、分譲マンションの建物一棟のインスペクションは対応する業者が少ないです。アネストにも、稀に分譲マンションの管理組合から問合せが入りますが、対応しておりません。ご容赦ください。
ホームインスペクションを利用できるタイミング
ホームインスペクションを利用する最も多い機会は、住宅を売買する際です。売買契約の直前や契約後・引渡し前に利用されますが、引渡し後に利用する人もいます。
また、自宅を売却しようとするときに利用する人もいますし、リフォームする前の参考として利用したり、古くなった自宅の状態を心配して点検のために利用したり、新築時の保証期間が切れる前に利用したりと、多様な使い方がされています。
他には、一般的なホームインスペクションとは言えませんが、雨漏りや設備漏水、建物の著しい傾きの疑いが生じたときに利用する人も多いです。
ホームインスペクション(住宅診断)の対象物件について、説明してきましたが、イメージできたでしょうか。一部の業者を除いては、ほとんどの住宅に対応してもらえることが分かったと思います。不動産会社や建築会社から、「新築では利用しない」「築浅だから大丈夫」などと言われても鵜呑みにせず、自分で考えて判断しましょう。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。