中古住宅を購入しようとしたとき、対象物件に売主が居住中のまま販売活動しているケースの遭遇することがあります。中古住宅の売主の多くは、それまでそこに住み続けてきた一般個人の人であり、その売主は売れるまで住んでいることは多いものです。
売主が居住中である中古住宅の購入を検討している人が、購入前後に注意すべき点を挙げ、これらに適切に対処することによって売主居住中の中古物件を安心して買うことができるようになるでしょう。それでは、注意点をご紹介します。
遠慮しすぎず見辛いところもチェックする
売主居住中の中古住宅でよくある問題が、買主(購入希望者)の「売主に遠慮して、ゆっくり見学できない」という気持ちです。実に日本人らしい考えではありますが、人生を左右する可能性のある大きなマイホームという買い物をするときに、このような遠慮は禁物です。
収納内部(クローゼット・シンク下など)を確認する
売主が居住しているわけですから、クローゼットや押入れなどの収納スペースには、多くの荷物が入っていることでしょう。こういったスペースは、一般的にはあまり他人に見られたくないと考えることが多いこともあって、買主は収納の内部まで見るのは申し訳ないと考えがちです。
収納量のチェックは大事
しかし、それぞれの収納スペースの収納量がどれぐらいあるのか確認するためには、全ての収納を開けて内部を見てみないと確認することは難しいです。
例えば、ある押入れを見たときに、一般的な奥行きである80~90cmぐらいはあるだろうなと思っていたものの、購入して引っ越すときに見てみたら40cm程度の奥行きで想定していた荷物が入らなかったということもあります。
また、別のケースでは、収納の引き戸を開けてみたら、収納内の天井が低くて扉の高さよりも収納の方が低かったなんてこともありました。収納スペースの上に配管されていたからそうなっていたのですが、一見するとこういうことには気づかないことはよくあります。物件を案内していた不動産業者の担当者もわかっていないこともあります。
収納内部の一部を配管や設備、そのほかのスペースとして使用していることもあり、扉を開閉して内部を見ることなくイメージだけで判断するのはリスクがあるのです。
収納内部の劣化やカビ
収納内を確認すべき、もう1つの理由があります。それは、収納内部の劣化事象の確認です。
収納内の壁・天井などに雨漏りや結露の染みがないか、カビがないか、腐食・劣化が進んでいないかといったことを確認しなければなりません。
荷物を収納から出してまで確認することは現実的ではないですが、見える範囲だけでも確認しておいた方がよいです。収納の外壁よりの壁をよく見ると染みがあったという事例は、たまにあることです。
点検口の内部を確認する
ほとんどの住宅には点検口があります。一般的には、1階の床には床下点検口があり、最上階の天井には屋根裏点検口があります。また、お風呂がユニットバスであれば、そこにも天井点検口があります。床下点検口は床下収納庫が兼ねていることが非常に多いです。
点検口からは、普段見えない箇所を目視確認することができ、大切なチェックポイントです。ただ、これも収納内部の確認と同じで売主が居住していると内部を確認することに遠慮してしまう人がいます。収納のようにプライベートの荷物があるわけではありませんから、チェックしておいた方がよいです。
床下収納庫が点検口を兼ねている場合は、そこに荷物がありますが、それでも了解をとって確認した方がよいでしょう。但し、住宅によっては点検口が無いこともあり、その場合は確認できないです。こういった大事な箇所は、専門家に中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)を依頼擦れば確認してもらうこともできます。
きちんと売主の了解を得て収納等を開閉する
収納などを開けるときには、売主に開けて内部を見てよいか確認をとるようにしましょう。これはマナーです。売主に直接話しかけて了解をとることもありえますが、基本的には不動産業者から売主に聞いて頂くことがお奨めです。
遠慮しすぎず複数回、見学する
売主が居住中であれば、買主が遠慮してしまうことは多いですが、遠慮することにもいろいろあります。収納などの確認だけではなく、見学回数についても遠慮することがあります。
何度も売主に時間をとってもらって見学するのは申し訳ないと考える人は少なくありません。不動産業者の担当者も、「売主が生活しているので、見学は一度にしてください」と買主に依頼していることがありますが、これは適切な対応とは言えません。
買主は大きな買い物をするわけであり、また売主も売りたいわけですから、真剣に購入を検討している人であれば2度、3度見てもらうことに対して、拒否反応を示すことはほとんどありません。不動産業者の勝手な判断で言っていることもありますので注意しましょう。
また、複数回見学するときは、見学する時間帯を変えた方がよいでしょう。最初の見学時が午前だったのであれば、2回目は午後に見学するといった具合です。日当たりの変化を体験することもできますし、周辺環境の変化(騒音・匂いなど)を感じることができることもあります。
そして、1度目は売主が洗濯物を干していて詳細を見られなかったバルコニーを2度目で見られるといったことなどもあります。
引渡し後すぐに建物全体をチェックする
無事に中古住宅を購入した後の対応も大事です。売主居住中の物件について売買契約を交わし、引渡しを受けた後には、以下の注意点を意識して適切に対応しましょう。
荷物等で見づらかった点を重点的にチェック
購入前の見学時には、居住中であったがために詳細を見られなかった点を丁寧にチェックしていきましょう。収納内部は荷物があって限定的に確認したにすぎないですから、荷物の無い状況で確認していきます。もちろん、引渡し後に買主が引越ししてしまっては荷物が邪魔になりますから、引っ越す前にこの確認をしなければなりません。
購入前に見づらかった箇所は物件によって異なりますが、収納内部以外にも大型家具や家電(冷蔵庫やテレビ等)が置いてあった箇所もそうです。これらがあった箇所の壁・床の劣化具合をよく観察してください。
建具・設備の動作チェック
購入前に全ての建具や設備を動作させてチェックすることはできたでしょうか。現実にはこれもそう簡単ではありません。特にサッシの開閉をテストできていないこともあります。鍵がかかるかどうかも合わせてチェックしたい項目です。
水道は売主が居住中ならば、キッチン・洗面・トイレなどで少しだけ使用することもできたでしょうが、遠慮してできなかったならば、引越し前に確認しましょう。但し、ガス関連機器はガス会社に入居時が直前に確認してもらいましょう。
契約前の見学時と変化がないかチェック
売主居住中の物件を購入したときの最後のチェックポイントは、購入前と購入後の変化です。それまで隠れて見えなかった箇所に限らず、見えていた箇所において購入前の見学時にはなかった痛みやシミなどの問題がないか確認しなければなりません。
見学から引渡しまでに2~3ヶ月の期間を要することはよくあることですが、それだけの期間があれば建物に新たな問題・症状が現れることもあります。その間に雨漏りが発覚することだってありうるのです。
住宅診断(ホームインスペクション)の利用タイミング
本来ならば、契約前に利用すべき住宅診断(ホームインスペクション)ですが、売主が居住中であることを理由に遠慮して引渡し後に利用する人もいます。契約前に居住中の家を住宅診断(ホームインスペクション)することは多いですから、それほど遠慮する必要はありません。
どうしても遠慮する、もしくは契約前の診断を拒否されたというときは、引渡し後・引越し前のタイミングで住宅診断(ホームインスペクション)を利用すると家具等もなく広範囲に確認しやすいので買主のメリットにもなります。
中古住宅を購入するならば、対象物件が空き家である方がゆっくり、かつ気軽に見学しやすいものです。しかし、販売市場には売主居住中の物件も数多く出ており、これを検討対象から除外するのは得策ではありません。ここであげた注意点を意識して見学し、よい中古住宅を取得できればいいですね。
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執筆者
- 2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。
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ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。