中古住宅だから仕方ないは本当か?

中古住宅を購入するかどうか迷っていて不動産会社の営業担当者と話しているときや、購入した後の中古住宅で購入前には知らなかった建物の劣化事象に気付いて不動産会社に相談したときなどに、その営業担当者から次のように言われた経験者も少なくないでしょう。

「中古住宅だから、少々の問題があっても仕方ない」
「古いわけですから、それくらいの劣化は当然です」

なかには、次のように言われたといって憤慨している買主もいました。

「そんなに心配なら中古住宅を諦めて、新築を買えばいい」
「中古物件で、そんなに細かなことを言う人はいない」

確かに新築してから何年も経過した住宅なら、ある程度の劣化が進行しているのは当然ですし、何も問題ない中古住宅の方が少ないでしょう。

しかし、長年、第三者の立場でホームインスペクション(住宅診断)をしてきましたが、いろいろな劣化症状や建物の問題点が見つかる物件が本当に多く、それらのなかには、「中古住宅だから仕方ない」とか「古いからそんなもの」なんて言葉で済まされないケースもあります。

不動産会社の担当者の多くは、建築に関する専門知識や経験がないため、適切に判断できなくて悪意なく前述のようなことを言う人もいますが、長年の業界経験で買った後のトラブルが多いことを知っていながら、嘘をついている人もいるので、買主の立場としては簡単に営業担当者の話を鵜呑みにしないようにしましょう。

中古住宅で見つかる建物の不具合については、経年劣化によって起こるものもありますが、その他に以下の理由で起こっているものがあります。

ここでは、この2つの理由について、詳しく解説しますので、中古住宅を購入するときの参考としてください。内見したときに、しっかりと建物を見て、それが築年数ゆえの経年劣化の問題なのか、それ以外の上の2つの問題なのか確認しましょう。

建物のメンテナンス不足で問題が大きくなる

建物のメンテナンス不足

建物は、年数の経過とともに様々な部位が損耗していくものであり、それはどの住宅にでも起こりうる経年劣化としてとらえられています。しかし、通常の経年劣化であっても、適切にメンテナンスをしているかどうかによって、耐久性(どれくらい長持ちするか)に大きな違いが出るものです。

このメンテナンスをしていないがために、劣化がどんどん進行してしまい、被害が大きくなることがあるのですが、その責任は人にあるとも言えます。建物の管理・メンテナンスは、所有者にあるからです。

分譲マンションの場合は、管理会社に委託する業務のなかに、建物の点検と修繕も含まれているものですが、一戸建て住宅の場合は自分で管理しなければなりません。

それでは、以下でメンテナンス不足について特に注意して確認すべき点を紹介します。

屋根と外壁のメンテナンスをしているか

住宅は、日照・雨・風にさらされている状態です。この影響を受けやすいのは、屋根や外壁といった建物の外部であることは、誰でも想像できることでしょう。

各住宅によって、日照などの条件に大きな違いがあるので一概には言えませんが、一般的には日照が多い南面の屋根と外壁の劣化が北面より早いことが多いです。ただし、北面などで風通しがよくない場合は、コケが大量繁殖して劣化進行を早めているケースもあります。

屋根材や外壁材といった代表的な仕上げ材だけではなく、外壁材の継ぎ目やサッシ周りなどに施工されているシーリングの劣化(破断・著しい硬化・隙間など)にも十分に注意して現地見学してください。破断している場合は、既に壁の内部に雨水が繰り返し浸水していることもあります。

屋根や外壁は、新築後10年くらいでメンテナンスを考えるべき時期だと言われていますが、実際には15年以上、何もせず放置している人の方が多いです。もっと長い間、何もせずに放置状態であれば、劣化具合が酷いこともあり、その状態を「中古住宅だから仕方ない」とは言えないでしょう。

床下と小屋裏を点検したことがあるか

住宅の床下と小屋裏(屋根裏)は、ともに建物の構造耐力上の大事な部位や漏水被害、断熱状態などを確認できる非常に重要なスペースです。建物の状態を把握して、適切に管理していく意識があるならば、必ず、定期的に点検しておくべきところだと言えます。

しかし、新築住宅を購入して依頼、何年もの間、点検したことがない人は多いです。点検口があることも知らない人も少なくありません。これは、意識の問題ですから、新築住宅を販売した売主やハウスメーカーから、買主に対して点検とメンテナンスの重要性を伝えていなかったことも原因になっていると言えます。

床下のひび割れと浸水で大問題になった事例

たとえば、床下の基礎コンクリートに著しいひび割れがあり、且つ、床下浸水していた中古住宅がありました。著しいひび割れは、構造上の問題と言えるのですが、そこへ浸水した雨水が入ってしまい、基礎コンクリート内部の鉄筋の著しい錆を誘発していました。

早めに点検して気づいていれば、問題が多きなる前に対処しやすかったのですが、気づくのが遅れて、鉄筋の錆からコンクリートの被害拡大へとつながり、ダメージが大きくなっていました。

小屋裏で結露によるカビの大量発生と木部の腐食

小屋裏でも点検していなかったために気付くのが遅れて問題が大きくなった事例があります。

小屋裏の内部で酷い結露が発生していて、長年の結露被害により、大量のカビが発生し、且つ小屋組みの木部の一部が腐食していました。あまりに酷い結露だったので、当初は雨漏りかと思われたのですが、小屋裏換気ができていないために生じた結露でした。

いずれの事例も、建物のメンテナンスの重要性を裏付けるものです。中古住宅の内見に行ったときは、買ってから失敗したと思わないように、こういう部分も見ておきましょう。

中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)
中古住宅のホームインスペクション

新築時の施工不具合が要因で生じた不具合も多い

新築時の施工不具合

中古住宅の築年数や建物古さと関係ない建物の不具合は、意外と多いものです。通常の経年劣化であれば、多くの住宅で同じような症状が確認されそうなものですが、実際には一部にだけ見つかる大きな問題があります。その発生要因の1つが新築したときの施工不具合です。

ここでは、新築当時の施工不具合に起因するトラブルを紹介します。

新築時の防水工事の施工ミスで雨漏り

住宅を建築する際は、雨漏りを防止するために、屋根や外壁の内部に防水シートを施工しています。仮に、屋根材や外壁材、外壁のシーリングなどの劣化などによって、雨水が内部に浸入してきても、防水シートで止める役割をしているのです。

防水シートが非常に大事な役割をしていることがわかりますね。これは、防水シートの施工が適切であれば、そう簡単には雨漏りは起こらないということを意味しています。

しかし、現実には多くの住宅で雨漏りが起こっています。つまり、適切に防水工事をできていなかったということですね。不動産会社から「築20年くらいすれば、雨漏りくらいしますよ」と言われた人がいましたが、それは言いすぎですね。

20年間、外壁や屋根で適切なメンテナンスをしていなければ、劣化した箇所から内部へ浸水することはよくありますが、内部の防水シートで守れている住宅の方が多いので、築年数や古さから、単純に仕方ないことだとは言えないわけです。

床下・小屋裏の断熱材の雑な施工

中古住宅を購入時に依頼されたホームインスペクションにおいて、よく指摘にあがる事項の1つが、断熱材です。

相当古い住宅を除けば、床下や屋根裏スペースには断熱材が施工されており、インスペクションでその状態を診ることができます。その診断の結果、一部のスペースに断熱材の施工漏れがあったり、かなり乱雑に施工されていて隙間だらけだったりすることがあります。

断熱材は、隙間なく施工していないとその性能を十分に活かせないので、新築当時に丁寧な施工が求められる箇所です。これも、中古だから起こった問題ではなく、新築当時の手抜き工事の類ですね。

床下浸水

床下を調査してみると、意外なほどに床下浸水している住宅に遭遇します。また、床下浸水していても気づいていない人が多く、長期間の浸水によって、カビや腐食、錆といった被害にあっているケースもあります。

その浸水原因にはいろいろなケースがありますが、その大半が新築時の施工ミスによるものです。たとえば、工事中に必要で開けていた水抜き穴からの逆流や基礎の打ち継ぎ部分(実は基礎には目で見えないレベルの隙間があることもある)、給排水管の接続ミスなどです。

給排水管の施工ミスについては、上水または排水ということになりますが、その他の場合は雨水による被害です。いずれにしても、新築時の施工ミスが要因です。

地盤沈下による建物の著しい傾き

地盤沈下によって建物が大きく傾いている住宅があります。これは、新築するときの建物本体の施工ミスではないですが、設計・計画段階における地盤改良・補強時の必要性の判断ミスが要因になっていることが多いです。地盤改良工事は安くないので、コストダウンのために改良しないことを選択した結果、起こることがあります。

地盤の補強は必要ないかなと考えたとしても、設計者や施工者によっては安全側で判断して、「念のために補強しておこう」と考えることも多いです。こういった所の判断ミスは、後から対応に苦慮するものです。

新築工事そのものや、新築するときの判断の誤りによって起こっている問題は、中古だから、古いからという理由で説明すべきことではないですね。

アネストの住宅インスぺクション
施工不具合や劣化状態を専門家が診断するサービス

中古住宅は物件によって建物の状態が全然違う!

2003年から中古住宅のホームインスペクションをしてきて、大量の物件を見てきたからこそわかるのですが、1つ1つの物件によって建物の劣化状態は大きく異なります。

日照・通風・雨量・周囲の環境などの外的な要因によって、経年劣化に違いがある上、前述したように、それまでにどれだけのメンテナンスをしてきたのか、新築当時の施工レベルがどうであったのかといったことにも大きな影響を受けているからです。

築10年なのに、こんなに劣化している住宅があるのかと思うこともあれば、30年も経過しているのに、こんなに状態がよいのかと感心する住宅もあるのです。こういった目利きができると本当によいですよね。

ホームインスペクションで中古物件を見極めよう

ホームインスペクション

中古住宅が、個々の物件によって、建物の状態に大きな違いがあることがよく分かったと思いますが、買主としてはどのように対応すべきなのでしょうか。

まず、一番にやるべきことは、現地内見の機会を無駄にしないことです。時間をかけて建物の外部も室内も、できれば床下や屋根裏も点検させてもらうことです。点検口の内部を見てもわかりづらいものですが、せめて点検口の有無くらいは確認しておきましょう。点検できない住宅かどうかは、1つの判断材料です。

その上でもう1つ考えるべきことは、専門家によるホームインスペクションの利用です。

どうしても、建物のことは専門的で、慣れない人にはわかりづらいものです。ホームインスペクションを行う専門家の多くは建築士の資格を持つ人ですが、建築士であっても診断の仕方、判断の仕方がわからない人は多いくらいですから、一般の人にとっては難しすぎると言えるでしょう。

高額な買い物なのに、大事なことでわからないことをそのまま放置して購入判断するよりも、積極的にプロのインスペクションを利用するとよいでしょう。

中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)
中古住宅のホームインスペクション

執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。
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住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。