住宅を購入するために様々な物件を見て、比較検討した結果、特定の中古住宅を購入すると決めた買主にとって、売買契約に至るまでの道のりは楽ではなかった人が多いでしょう。しかし、売買契約を締結済みで引き渡し日を待っているときも、買主にはやるべきことや注意すべきことがたくさんあり、まだまだ忙しいものです。
売買契約後、引渡し前までに買主が注意すべきこと、やっておくべきことは、大きく分けても以下の4点もあります。
- 売買契約の把握
- 住宅ローンのこと
- ローン控除(減税)のこと
- 引き渡し前の現地立会いのこと
実際にこれ以外のこともあるのですが、これらについてここで解説しますので、引き渡しを受けて入居するまでしっかり対応してください。
売買契約の内容を把握する
中古住宅の売買契約を締結する前に、きちんと売買契約書を読み込んで、その内容を理解しておかなければなりません。しかし、不動産会社からざっくりとした説明を受けただけで契約内容の詳細を把握していないという人は多いです。
その後の取引を安全に進められるかどうかに関わる大事な書類ですので、売買契約後であっても、その内容を理解するように心がけてください。
具体的には、引渡し日がいつに設定されているか、特約条項に説明を受けていない条件が記載されていないか、付帯設備が何であるか、売主の契約不適合責任の有無・内容・期間がどうなっているかといったことは、非常に大事なことです。
契約書を読んでみて理解できないことがあれば、すぐに不動産会社へ質問して確認をとりましょう。
住宅ローン(融資)の申し込みと新たな借金の防止
売買契約を締結したなら、次の大きなイベントは住宅ローンに関することですので、この融資に関わる注意点を紹介します。
速やかに住宅ローンの申し込み手続きを行う
売買契約から引渡し予定日までにどれくらいの期間があるかにもよりますが、早めに住宅ローンの申し込み手続きを済ませましょう。売買契約書のなかで、融資が不承認となった場合に契約解除できる条項が付いていますが、それには期限が設けられているはずです。
その期限を過ぎてから融資不承認になっても、契約解除するには違約金が発生することになるため、ゆとりをもって間に合うように進めてください。
新たな借金や支払いの滞納をしない
中古住宅を購入する人の多くは、購入資金の一部を住宅ローンで賄っています。金融機関から融資をうけて購入代金の一部に充当するということです。
既に売買契約を締結しているのであれば、契約前の仮審査をパスしており、契約後の本審査の結果待ちであるか、本審査にもパスしている状況でしょう。
住宅ローンを利用してマイホームを購入する場合、売買契約書において融資を受けられなかったときには売買契約を白紙に戻して、支払済みの手付金も返金され、違約金も生じないこととなっているはずです。これは住宅ローン特約や融資利用の特約などと呼ばれています。
住宅ローンの本審査に合格しているのであれば、もうこの特約も無関係な状況になっているわけですが、買主が新たに自動車ローンやその他のローンなどで借金をしてしまうと住宅ローン融資を受けられなくなる可能性があります。また、既に融資を受けている件できちんと返済せずに滞納しても同様です。
借入情報は、その内容次第で住宅ローン融資に影響することがあるからです。場合によっては、住宅ローン特約の対象とならない解約となり、手付金が返金されないどころが、場合によっては違約金の対象となる可能性もあることですから、買主は十分に注意しておきましょう。
住宅ローン控除の条件チェック
住宅ローンを利用してマイホームを購入する場合、住宅ローン控除によって所得税などが減税される場合があります。しかし、中古住宅はその築年数や構造によって減税されないことも多いため、正確に覚えておかなければなりません。
1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された住宅は証明書が不要
中古住宅は、住宅ローンを利用した人であっても建物の条件によって住宅ローン減税の対象とならないことがあります。対象となる住宅は、1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された住宅です。この確認は、登記情報で確認するため、建物の登記事項証明書で建築年月をチェックしてください。
この時期に建設された住宅について、耐震診断を実施してみると、耐震性が低い結果となることも多いのですが、診断するまでもなく、建築年で判断することとなっています。よって、耐震性が担保されたわけではないので誤解しないでおきましょう。
1981年(昭和56年)以前に建築された住宅
1981年(昭和56年)以前に建築された住宅では、所定の条件を満たさなければ住宅ローン控除を受けることができません。その所定の条件とは、耐震基準適合証明書、既存住宅瑕疵保険の付保証明書、耐震等級が1以上である既存住宅性能評価書のいずれかが必要だという点です。
もっとも多く検討されているのは、このうち耐震基準適合証明書の取得ですが、これは耐震診断で一定基準以上の評価が出れば取得可能です。
その次に多いのは、既存住宅瑕疵保険の付保証明書の取得ですが、こちらも現場検査と審査に合格することで取得できるものです。
残念ながら、1981年(昭和56年)以前に建築された住宅では、耐震性が不足することが非常に多いため、現実的にはローン控除を受けるのは難しいです。過去に適切に耐震診断と耐震補強工事を実施していない限り、住宅ローン減税はあきらめることになるでしょう。
引き渡し前の現地立会いとホームインスペクション
売買契約後、引渡し前のタイミングで、買主は住宅ローンや書類の準備などに意識が集中してしまいがちですが、購入する建物のことも考えておきたいものです。
空き家の状態で不具合チェック
中古住宅の売買では、売主が居住中に売却に出されていることも多いため、買主は多くの家具等がある状況で物件を見学していることもあります。そのような場合、買主は家具などが置いてあった箇所の建物の状態について把握できていません。
例えば、冷蔵庫やタンス、収納棚、ベッドなどがあった箇所です。
引渡し後に初めてそういった箇所を買主が確認することが多いのですが、もしそれまで隠れていた箇所に問題があったならば、買主としては売主に補修等の要求を引渡し前にしておきたいものです。例えば、大きな棚を撤去した後に壁を見たら雨漏りしていた場合などです。
よって、売主が退去した後、引渡しを受ける前にもう一度、現地を確認させてもらえるように不動産会社を介してお願いするとよいでしょう。
ホームインスペクションを検討する
また、売買契約を締結する前にホームインスペクション(住宅診断)をしていなければ、この段階で実施しておくとよいでしょう。空き家の状態で建物を確認する際に、ホームインスペクション業者に依頼して一緒に診てもらうのは効果的です。
専門的な知識と経験を基に、建物の構造耐力や性能・機能に関わる著しい劣化や不具合を診断してもらい、その結果次第では、売主との補修交渉などに役立てることも考えましょう。
付帯設備表・物件状況報告書と現況の比較
中古住宅の売買である場合、売買契約の際に、付帯設備表と物件状況報告書という書面を交付してもらっていることが多いです。契約時に受領した書面を確認してみてください。
付帯設備表とは、売買契約の対象となる設備を明らかにする書面であり、照明・コンロ・食器洗い洗浄器などの設備について売買対象であるかどうかが記載されているものです。それらの設備の故障有無まで書かれていることが多いです。
また、物件状況報告書とは、契約時点において売主が把握している建物の状況が記載されています。例えば、雨漏りやシロアリ被害の有無などです。
買主は引渡しを受ける時点で、これらの書面通りの状況であるかどうか現地で1つずつ確認していく必要があります。相違点があれば、解決に向けて売主と交渉が生じることもあります。
その他に検討すべきこと
中古住宅に関して売買契約を締結してから引き渡しまでの間に買主がしておくべきこと、注意点を説明してきましたが、他にもいくつかの注意点などがあるので、説明します。
境界・越境物の確認
住宅の売買においては、しばしば隣地との境界や境界線を越える越境物が問題となることがあります。
境界を示す杭などがなくて協会が不明瞭であれば、将来の増改築や売買の際にもめることがありますし、隣から購入する住宅の敷地内への越境物があれば、邪魔になるので撤去・伐採してほしいことがあります。逆に隣地へ越境しているものがあれば、撤去等を求められることもあります。
そういったリスクの有無やリスクがある場合の対策を早めに検討するためにも、現地にて境界の位置や越境物の有無を確認しておきましょう。境界の位置は見慣れていない判断しづらいこともありますので、不動産会社に立ち会ってもらって説明を受けるのがおすすめです。
引越し業者は相見積もりで比較する
売買契約後、引渡し前の間に買主がやっておくことの1つに引越し業者の段取りがあります。新居へ持っていく家具等の荷物を決めてから引越し業者を呼んで引越し代の見積りを提示してもらうという作業ですが、この際、1社のみで見積りをとっていては割高な金額を請求されることが多いため、必ず相見積もりをとるようにしましょう。
引越し業者からも、他の業者で見積りをとっているのか質問してくることが多いですが、相見積もりをとっていることをはっきりと伝えることで競争原理が働くのでお勧めです。引越し業者は相見積もりとることが原則だと考えておきましょう。
リフォームするなら相見積もりで比較する
中古住宅を購入する人のなかには、購入後すぐにリフォームを検討している人が非常に多いです。クロスやフローリングの貼り換えや、キッチンやユニットバスの交換も候補に挙がってくることが多いでしょう。
その見積りを引渡し前にとってリフォームを検討しておくことは、よくあることです。引渡しを受けてから、速やかにリフォーム工事に着手し、できる限り早く入居するためには引渡し前にリフォームの段取りを進めておきましょう。
リフォーム工事は、業者によって価格の開きが非常に大きいため、はじめて依頼する人にとってはわからないことだらけです。リフォーム業者のぼったくりに合わないためにも、相見積もりをとるようにしましょう。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。