中古住宅の購入を検討する際、多くの住宅購入検討者が気にしていることの1つが、価格交渉に関することです。「価格交渉をできるだろうか」、「値下げしてもらえるだろうか」、「価格交渉すると売ってもらえなくならないだろうか」といったことです。
実は、中古住宅は新築に比べると価格交渉により値下げしてもらえる可能性が高く、条件次第では数十万円、場合によっては数百万円単位の値下げ交渉に成功することもあります(新築住宅も交渉できることは多いです)。
しかし、交渉のタイミングや方法を間違えると、せっかくのチャンスを逃してしまうこともあるため注意が必要です。
この記事では、買主の立場から中古住宅の価格交渉について、実践的なポイントや注意点をわかりやすく解説していますので、中古物件を探している人や、購入したい物件を見つけて契約するかどうか検討中の人に役立つ内容となっています。
中古住宅は価格交渉できる。売主が個人か不動産会社かで異なる事情
この記事の冒頭にも書きましたが、中古住宅の売買に際しては、価格交渉によって値下げしてもらえることは多いです。売主の事情や建物の状態、他の購入検討者の有無などの条件次第で、価格交渉の余地があることが多いという事実を知っておきましょう。
中古住宅は、主に個人が所有するマイホームや相続した不動産を売却しようとしている場合と、不動産会社が買い取りした住宅を再販しようとしている場合にわけられます。それぞれで事情が異なるため、この2つのケースについて説明します。
なお、不動産会社ではない法人が、社宅として利用していた住宅などを売却していることもありますが、少数なのでここでは除外します。
個人が売主の場合
個人が売主である場合、その人の事情・売却理由は人それぞれです。経済的な事情や買い替えを理由に売却を急いでいることがあり、そのようなケースでは、売主の価格交渉力が弱くて値下げしてもらいやすいこともあります。
ただし、早く売りたいとの考えから、売り出し価格を安めに設定しているケースでは、価格交渉をせずにすぐに購入する買主もいることを理解しておく必要があります。
特に急いで売却しなければならない理由がない売主なら、売り出し価格を高めに設定していることが多いです。このようなケースでは、すぐに売れないことも多いため、何カ月も不動産ポータルサイトなどに掲載されていることが多いです。
このようにすぐに売れない物件は、価格交渉しやすいことが多いですが、「そろそろ値下げしようかな」と売主が考えるタイミングは人それぞれであり、買主側にはわかりづらいものです。
不動産会社が売主の場合
不動産会社が買取してリフォーム後に再販している物件も多いですが、こういった物件の多くは、多少の値引き交渉が入ることを想定して、販売価格を少し高めに設定しているものです。一部の不動産会社は、その物件が売れる相場の判断を誤って、高すぎる価格で販売していることもあります。
販売開始後すぐは値下げに応じてもらいづらいものの、しばらく経過後は、値下げ交渉に応じてもらいやすくなることを知っておきましょう。
不動産ポータルサイトなどで掲載されている価格は「希望売却価格」であり、必ずしも最終的な取引価格ではありません。相場と比較しながら、交渉の余地があるかどうかを判断しましょう。
価格交渉のタイミングは売買契約前の購入申し込みのとき
中古住宅を買うとき、どのタイミングで価格交渉すべきかわからないとの声を聞くことがあります。売買契約を締結してしまうと、もう価格交渉はできませんので、売買契約前に行う必要がありますが、タイミングをイメージしやすいように、内見(現地見学)から売買契約までの流れを理解しておきましょう。
内見(現地見学)から売買契約までの流れ
一般的な内見(現地見学)から売買契約までの流れは次のとおりです。
- 内見(現地見学)
- 再度の内見(時間帯を変えるなどして複数回の見学を推奨)
- 不動産購入の申し込み(購入申込書の提出)
- 価格等の条件交渉
- 住宅ローンの仮審査(事前審査)
- 条件交渉の成立
- 重要事項説明・売買契約・手付金の支払い
- 住宅ローンの本申し込み
以上の流れですが、このうち、「住宅ローンの仮審査(事前審査)」を「不動産購入の申し込み(購入申込書の提出)」より前にするように求められることもあります。そして、「価格等の条件交渉」は「不動産購入の申し込み(購入申込書の提出)」と同時に始まるイメージですが、住宅ローンの仮審査の結果が出てから事実上の交渉開始となることも多いです。
住宅ローンの審査にパスするかわからない、つまり買えるかどうかわからない人に対して、売主も容易に値下げするとは言いづらいですよね。
現金で購入する人は有利に交渉しやすい
住宅を購入する人のなかには、住宅ローンを利用せずに全額を現金で支払う人もいます。売主からすれば、住宅ローンの審査に落ちて買えなくなるリスクがないため、良い買主に見えます。これは、その物件を仲介する不動産会社にとっても同じであり、現金で買ってくれる人を優先したいと考えがちです。
その結果、購入資金の全額を現金で容易する人は、価格交渉でも有利になることが多いのです。
どれくらい値引きできる?価格交渉に影響する要素とは?
価格交渉をする際に、どれくらいの値引きに応じてもらえるかを知ることは大きな問題です。しかし、現実にそれを事前に知ることはできません。売主が先に手の内を明かすはずがないですから、当然ですね。一般的には、50~100万円くらいの値引きなら可能なことが多く、端数の切り捨てに応じてもらえることも多いです。
例えば、3,980万円で販売中の物件なら、80万円を値下げしてもらえることは非常に多いです。
しかし、価格交渉はこういった単純な話だけで成立するものではありません。売主の心理・立場のことを考えれば想像できることですが、値下げしなければ売れないかどうかを考えているわけですので、以下の条件・要素が重要です。
- 長い間、売れていないか(広告掲載から3か月以上など)
- 売主都合により、早期売却を希望しているか
- どの程度、相場より高めに売り出ししているか
- 反響・内見が多いか
- 近隣に同様の物件が多いか
- 将来的な資産価値向上を見込めるか(特に投資用物件の場合)
結局のところ、売れ行きがどうかといったことが価格に影響します。つまり、価格は市場が決めるようなものですね。
不動産会社との交渉術|買主が取るべき方法とは
具体的に購入を希望する物件が見つかったとき、実際にどのように価格交渉するのか気になりますね。ここでは、交渉術について紹介します。
不動産会社と交渉する
個人が売主の中古住宅では、一般的には不動産会社に売却の仲介を依頼していますので、購入希望者はその不動産会社(仲介業者)を介して売主と交渉することになります。仲介業者が、あらかじめ売主より価格交渉に応じてよい価格の巾を聞いていることもありますし、その都度、売主にお伺いを立てることもあります。
また、不動産会社が買い取り再販する場合では、その不動産会社が売主ということになりますが、自社で直接販売するケースと仲介業者に任せるケースがあります。
いずれにしても、購入希望者は不動産会社と交渉する形になるわけです。
交渉時に買主が取るべき方法
価格交渉する際、買主はやみくもに「価格を下げて欲しい」とだけ言うのではなく、適切な姿勢で交渉することを心がけましょう。
- 希望価格を伝える際は適切な理由・口実を付ける
- 売主に配慮した表現を使う・傲慢な態度をとらない
以上の2点が基本です。
希望価格を伝える際の適切な理由としては、「基礎や外壁などの補修工事が必要な状態で、それに50万円かかるから、その分くらいを値下げしてほしい」、「近隣物件の相場より高いから」、「自己資金と住宅ローンの返済計画の都合」など、様々なことが挙げられます。
また、売主も人ですから感情があります。交渉時の態度、言葉遣いによっては、気持ち的に交渉に応じたくないと感じさせるのはデメリットでしかありません。
ホームインスペクション(住宅診断)を値下げ交渉に使えるか
中古住宅を買う人のうち、多くの割合の人がホームインスペクション(住宅診断)を利用するようになりました。これから長く使用する住宅ですから、建物の劣化状態や欠陥の有無をプロのホームインスペクター(住宅診断のプロ)に診てもらおうとするのは自然なことですし、必要なことでもあります。
そして、住宅を購入しようとしている人のなかには、そのホームインスペクションを実施することによって、価格交渉に使えるのではないかと考える人もいます。
たとえば、建物の悪いことが見つかれば、それを理由として値下げしてもらえるのではないか、というものです。
実際に、インスペクションの結果次第で、値下げ交渉が進展するケースはあるようですが、インスペクションの本来の目的は価格交渉の材料ではなく、購入判断の材料とすることや補修すべき点を把握することであり、何か不具合が見つかったからといって、その症状が「●万円くらいの値引きに役立つ」といった見解は得られません。
インスペクションの依頼者が、自己判断で活用するしかないでしょう。
ただし、売主もそれまでに把握していなかった建物の不具合が見つかることは多いので、それを売主に示すことで交渉に役立つ事例はあるでしょう。結果的に交渉材料になる事例としては、床下の漏水や基礎の著しい欠損、屋根裏の雨漏り、建物の著しい傾きなどが考えられます。
ただし、著しい問題がいくつか見つかった場合は、本当にそれを購入すべきかどうかも慎重に検討しましょう。
参照
価格交渉が失敗したときの対応策
価格交渉、つまり値引き交渉は必ずしも成功するとは限りません。全く値引きしてもらえないこともあれば、想定よりも僅かな金額の値引きしかしてもらえないこともあります。その交渉結果に納得できないこともあるでしょう。
希望価格での購入ができなかった場合の選択肢は、以下の3点です。
- その物件の購入を諦めて、別の物件を探す
- 一度、交渉を打ち切って様子を見て、ある程度の期間が経過後に再交渉する
- 価格面で妥協して購入する
一度、交渉を打ち切った後、その物件がいつまでも売れない場合、価格交渉に応じてもらえることは少なくありませんし、売主側から打診してくることもあります。
【まとめ】中古住宅の価格交渉は準備とタイミングが命
中古住宅の価格交渉(値下げ交渉)は、十分に実現可能なことです。
一方で、価格交渉の成功には、売主の事情や売り出し条件、近隣の類似物件の条件、不動産市場動向など、様々な事象が複雑に影響するものですから、どの程度の値引きなら達成可能であるか、事前に知ることはできません。
不動産会社ともよく相談し、近隣物件のこともよくリサーチした上で、適切な交渉をできるよう心がけてください。
執筆者

- 編集担当
- 2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。