住宅を購入するとき、床下と並んで重要なスペースなのが屋根裏です。建物の最上階の上にある屋根裏に限らず下屋裏も重要なスペースです。ホームインスペクション(住宅診断)を利用する多くの人は、屋根裏調査を希望しています。
この屋根裏では、建物の主要構造部分を直接に目視確認できるところが魅力です。床下でも主要構造部を確認できますが、屋根裏もそうなのです。今回は屋根裏を調査することによるメリットと重大な指摘事例を紹介します。なお、床下については「一戸建て住宅の床下調査のメリットと重大な指摘事例」をご覧ください。
梁や小屋束など主要構造部分を直接確認できる
ホームインスペクション(住宅診断)の際に、屋根裏調査を行う最大のメリットは建物の主要構造部分の状態を確認できることです。屋根裏で確認できる主要構造部分とは、梁や小屋束などの木部とこれらを留める金物のことです。建物によっては筋交いを確認することも可能なことがあります。
柱などの構造部分の全てを目視確認できるわけではありませんが、これらのうちのいくつかを確認できる箇所があれば参考になりうると言えるでしょう。
必要な構造金物が無かったり緩んでいたりすれば耐震性に問題があることになりますし、木部が腐食しておれば耐久性にも問題が生じます。
屋根裏では断熱材の施工不良がよく見つかる
屋根裏で最も多い指摘事例は断熱材に関するものです。
断熱材がそもそも全くない住宅というものもあります。建築時が1970年代という古い時代の建物であれば、断熱材を使用していなかったことが多いためやむを得ないものですが、その中古住宅を購入するのであれば、断熱性能を上げるために設置を検討した方がよいでしょう。
1980年代以降の住宅でも断熱材が無いケースはありますが、その場合は評価を低く考えたくなりますね。
これより新しい住宅では断熱材が全くないことは少ないのですが、適切に設置されていないことは非常に多いです。新築住宅でも乱雑に設置されていて隙間だらけになっている物件を数多く見てきました。また、劣化が進んでいて交換すべき状態ということもあります。
以下の写真は新築住宅で乱雑に置かれた断熱材です。
次の写真は、断熱材の隙間です。僅かな隙間に見えますが、このために断熱性能が下がってしまうのです。
そして、次は中古住宅で断熱材がなく天井材が見えている状況です。よく見ると断熱材がある場所もありますね。施工する際に、必要な場所全てに設置しなかったようです。
雨漏り痕が見つかる
状況次第では構造的な問題にも発展しうる指摘事例は、雨漏りです。ホームインスペクション(住宅診断)では雨漏りしているかどうかを確認するわけではなく、原則として雨漏り痕があるかどうかを確認する調査となります。
雨漏り痕が見つかったときに、今の時点でも継続して持っているのかどうかまでは判断できないことが多いですが、継続している可能性を考えておいた方がよいでしょう。
雨漏りは、屋根面の裏側(下側)にあたる野地板で確認されることが多いですが、母屋や垂木といった部材で確認されることもあります。ひどい雨漏りのときには梁や天井板の上面に水滴が垂れていることもあります。
結露
屋根裏調査で見つかることのある症状のなかで意外とやっかいなのは結露です。屋根裏の換気状態が悪い場合に、新築直後の住宅でも結露が確認されることがあります。換気が十分にとれず、ひどい結露が生じている物件が何度も確認されています。
以下は結露の写真です。野地板(上の板)に染みが広がっていますね。
施工ミスによって換気不足になっているケースもありますが、設計上の問題であるケースも少なくありません。
早めに見つかったときには新たな換気口を設けるなどの対処をしてその後のリスクを抑えることができますが、発見が遅れて屋根裏の結露がひどくなりすぎているときには、いろいろな部材が腐食していることもあり、その交換工事が大変なこともあります。
居住しているときに、部屋の天井の染みを発見して雨漏りだと思っていたら結露だったという事例もいくつもあります。染みを発見したときには、雨漏りと決めつけず結露のことも考えた方がよいでしょう。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。