購入する中古住宅の売買契約後は、引渡しを受けてから入居となります。初めて家を買う人にとっては、この売買契約から引渡しや入居までの流れがどのようになっているのか、買主が何をすべきなのかといったことについて、わからない点が多くて当然です。
中古一戸建て住宅を購入した人向けに、売買契約~引渡し~入居の流れを解説し、その契約から入居までに買主がやるべきことや知っておくべき注意点を説明します。ここでしっかりと流れや注意点を学んで、中古住宅の購入において失敗や後悔することのないようにしましょう。
新築住宅を購入する人が、購入の流れを学びたいなら「新築住宅の購入・引渡しの流れと注意点(建売住宅編)」をご覧ください。
中古住宅を購入したときの取引の流れ
中古住宅の売買では、対象物件が一戸建てであってもマンションであっても、取引の流れにはそれほど相違点はありません。基本的には同じような流れになっていますので、いずれの物件を買う人でも参考になります。
以下にて、中古住宅を購入した場合における流れについて、「契約前の準備」「売買契約」「契約後から入居まで」に分けて説明します。
<契約前の準備>
- 売主へ購入の申し込みをする
- 契約日および契約条件を調整する
- 住宅診断(ホームインスペクション)を利用する
- 耐震診断・既存住宅売買瑕疵保険を検討する
- 重要事項説明書と売買契約書を事前チェックする
- 手付金を準備する
<売買契約>
- 不動産会社より重要事項説明を受ける
- 売買契約を締結する
- 融資(住宅ローン)の申込書類を準備する
<契約後から入居まで>
- 買主が金融機関に融資(住宅ローン)の申し込みをする
- 金融機関から融資承認の連絡がある
- 引渡し日の日程調整を行う
- 司法書士に必要書類を送付する
- 引渡し・残代金の支払い・登記手続きを行う
- 入居する
以上が契約前から入居までの全体の流れです。おおよその取引の流れを把握できたでしょうか。重要なのは、住宅購入で失敗しないために買主がするべき準備や注意点について詳しく理解しておくことです。以降でより詳しく説明していきます。
「契約前の準備」における流れの詳細や注意点
契約前の準備の流れとして以下を挙げました。
- 売主へ購入の申し込みをする
- 契約日および契約条件を調整する
- 住宅診断(ホームインスペクション)を利用する
- 耐震診断・既存住宅売買瑕疵保険を検討する
- 重要事項説明書と売買契約書を事前チェックする
- 手付金を準備する
これらについて1つずつ説明します。
1.売主へ購入の申し込みをする
不動産会社が準備する「購入申込書」に、価格などの購入希望条件を記載した上で署名・押印して売主へ提出します。不動産仲介業者を介して購入するときは、その仲介業者を介して売主へ提出してください。
「購入申込」については、「不動産購入申込書の基礎知識と提出前の注意点」を参考にすると理解しやすくなります。
2.契約日および契約条件を調整する
「購入申込」と同時に売主との間で契約条件について話を詰めていきます。主には「売買価格」「契約日」「手付金の金額」などについて調整します。仲介業者がいる場合は、全てその仲介業者を介して売主と交渉していく必要があります。
この時に契約不適合責任の有無や期間について不動産仲介業者に口頭で確認しておき、なおかつ売買契約までに売買契約書でも確認しておきましょう。
3.住宅診断(ホームインスペクション)を利用する
物件を購入するかどうかの参考とすることができ、購入後に補修が必要な箇所や長期的に補修を検討すべき箇所などのアドバイスが受けられる住宅診断(ホームインスペクション)を利用する場合は、売買契約の前に実施しておきましょう。
「1.売主へ購入の申し込みをする」ときに住宅診断(ホームインスペクション)を利用することも伝えておき、その診断日を調整してください。
将来のメンテナンスやリフォームのために、売主が保管している図面等があればできるだけ引き継ぐことが望ましいです。図面の有無の確認時に、リフォームの施工経歴や過去に補修した箇所についての確認もしましょう。
注意点としては、売主が依頼して実施している住宅診断や不動産仲介業者が買主へ斡旋する業者は、最小限の項目に絞ったものだけ調査していること、また調査項目に該当しても症状が重いものしか買主へ報告しないことが非常に多いことから、買主が購入判断や購入後のリフォーム・補修の検討に活用するには情報が不足しているという点です。
買主は買主向けの住宅診断(ホームインスペクション)を依頼するよう心掛けることです。
不動産業者の斡旋は断って自分で探し、売主が実施済みの場合は買主側でも依頼することです。2重チェックになりますが、売主側の診断で指摘に上がっていないことが指摘されることは多いです。買主に報告されないことや具体的なリスクは「売主・不動産会社のホームインスペクション(住宅診断)の注意点」が参考になります。
参照
4.耐震診断・既存住宅売買瑕疵保険を検討する
中古住宅の購入に際して、建物の耐震性を把握したい人は耐震診断を、建物に保証を付けたい人は既存住宅売買瑕疵保険の付いた保証サービスを検討してください。
住宅診断(ホームインスペクション)を依頼するなら、その診断業者に一緒に依頼することで手間を減らすことができ、且つ費用効率も良くなることが多いです。
5.重要事項説明書と売買契約書を事前チェックする
売買契約の時に、「重要事項説明書」と「売買契約書」という2つの重要な書類に署名・押印することになります。初めて家を買う人が契約日に初めて内容を読んで説明を受けたとしても、理解することは非常に困難でしょう。
そこで不動産会社に、買主から事前に「重要事項説明書と売買契約書を事前に読んでおきたいので、写しをもらいたい」とお願いしましょう。売買契約書などの書類は依頼しておかないと用意してもらえないことが多いので、必ず依頼してください。
事前に読んで内容を理解する行為に問題はありません。遠慮なく写しの用意をお願いしましょう。写しの用意を拒否する業者は、いないはずですが、万一拒否されるようであれば信用できない業者と判断し、購入を再検討するぐらいの気持ちが必要です。
特に瑕疵担保責任の有無、その期間など重要なポイントをよく確認する必要があります。不明な点があれば、不動産会社に確認をしましょう。
6.手付金を準備する
売買契約の際には手付金を支払う必要があります。その金額を準備しておきましょう。契約日に現金で支払う場合には銀行からその金銭をおろしておかなければなりませんし、振込するのであれば振込元の口座に資金を入れておかなければなりません。
「売買契約」における流れの詳細や注意点
契約の流れとして以下をあげました。
- 不動産会社より重要事項説明を受ける
- 売買契約を締結する(同時に手付金を支払う)
- 融資(住宅ローン)の申込書類を準備する
これらについて、1つずつ詳細を説明します。
1.不動産会社より重要事項説明を受ける
購入する物件に関する重要なことについて書面で説明を受け、その書面に署名・押印します。これを「重要事項説明」と言います。不動産業界では略して「重説(じゅうせつ)」と呼んでいますので、営業マンによってもこの略称を買主に対しても使うことがあります。
この重要事項説明は必ず売買契約の前までに実施すべきと義務付けられておりますが、売買契約の直前でも構わないため、売買契約と同日に実施することが多いです。
重要事項説明書やこの後に説明する売買契約書に押印する印鑑について、認印で良いか実印が必要なのかを事前に不動産会社に確認しておきましょう。
2.売買契約を締結する(同時に手付金を支払う)
売買契約は契約内容について説明を受けた後に、署名・押印することで契約書を交わします。「契約前の準備」であげた「4.重要事項説明書と売買契約書を事前チェックする」をしっかりしていれば、事前に受領していた写しと内容に相違ないかを確認してサインすれば安心です。
事前に写しをチェックしていないのであれば、時間をかけてでも内容を理解しておく努力が必要で、不明点について納得できるまで繰り返し質問することです。瑕疵担保責任の確認について既に説明しましたが、契約する直前にも契約書の記載箇所を見て確認しておいてください。
売買契約の締結時には手付金を支払います。契約の席で現金で支払うこともあれば、前もって振込しておくこともありますので、あらかじめ不動産会社と打合せしておきましょう。
3.融資(住宅ローン)の申込書類を準備する
金融機関からの融資(住宅ローン)を利用する際は、その申込書類を記入するなどして申し込みの準備をします。売買契約日に申込書に記入することも多いのですが、スケジュールについては不動産会社と事前に打合せをしておきましょう。
融資の申込書類への押印も基本的には認印でよいはずですが、実印が必要かどうかを金融機関に確認しておきましょう。
金融機関への申し込み時に提出すべき書類である所得証明書や住民票などの準備をしましょう。金融機関によって提出書類が異なることもありますので、指定された書類について確認しましょう。書類の一部については不動産会社が準備をすることもあります。売買契約の時などに打合せして確認しておくとよいでしょう。
「契約後から入居まで」における流れの詳細や注意点
契約後から入居までの流れとして以下をあげました。
- 買主が金融機関に融資(住宅ローン)の申し込みをする
- 金融機関から融資承認の連絡がある
- 引渡し日の日程調整を行う
- 司法書士に必要書類を送付する
- 引渡し・残代金の支払い・登記手続きを行う
- 入居する
これらについて、1つずつ詳細を説明します。
1.買主が金融機関に融資(住宅ローン)の申し込みをする
予め準備しておいた融資の申込書類や申込時に必要な書類を持参して金融機関に住宅ローンの申し込みをします。金融機関によっては、インターネットで申込をして必要書類は郵送する場合もあります。また、不動産会社が買主に代わって書類を金融機関へ提出することもあります。
2.金融機関から融資承認の連絡がある
金融機関から買主へ融資の審査結果に関する連絡が入りますが、不動産会社の提携ローンであれば、金融機関から不動産会社に連絡が入り、その不動産会社から買主に連絡が入るという流れのときもあります。
金融機関から買主へ直接に連絡があったときには、すぐに不動産会社へその結果を伝えなければなりません。
3.引渡し日の日程調整を行う
売買契約の際に引渡し日について取り決めていることが多いですが、この頃にも引渡し日の変更がないか再度売主と確認をしあいましょう。売主の都合等によって引渡し日を変更したいということもありますので、その際は売主の申し出に対して買主側で問題が無いかどうか慎重に判断してください。
4.司法書士に必要書類を送付する
中古住宅の売買において必要となる登記は、土地・建物の所有権移転登記と住宅ローンの抵当権設定登記です。この登記を委託する司法書士に、登記手続きに必要な書類を送付します。
この必要書類は、売買契約のときか融資の審査結果が出た直後くらいに、不動産会社から説明されます。
ちなみに、売主の融資等に関する抵当権などの権利が設定されたままの物件も多く、その場合はその抹消手続きを買主への所有権移転登記と同時にすることもあります。もちろん、そのために必要な書類は売主が準備します。
5.引渡し・残代金の支払い・登記手続きを行う
引渡しは、金融機関で実施することが多いです。融資を受けた金銭と自己資金の残りを合わせて売主へ支払い、さらに登記手続きに必要な書類に署名・押印します。
引渡し自体はこれで完了しますが、登記上の名義はまだ買主に変わっていません。この直後に司法書士が登記申請を行い、後日、登記が完了します。登記完了後に司法書士から送付されてくる登記事項証明書で登記が完了していることを確認しましょう。
また、売買契約の前に住宅診断(ホームインスペクション)を利用していない人は、引渡し後に専門家による中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)を利用するとよいです(契約不適合責任が設定されている場合には、その期間内に実施すると良いでしょう。)
6.入居する
売主から買主へ引渡しされたということは、その物件の所有者は買主だということです。よって、買主の都合で引っ越しの日程を決めて問題ありません。ただ、引渡し当日に引っ越すよりも引渡し日から少し日数を空けて引っ越しされる事をお勧めします。その理由は引渡し日が変更になる可能性があるからです。
以上が、中古住宅の売買契約、引渡し、入居の流れとその注意点などです。すぐに完ぺきに把握することは現実的ではありませんから、ある程度の全体像を理解すれば、後は取引の進捗に応じて何度も読むことをお勧めします。
執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。