既に所有している自宅を、または購入した中古住宅をリフォーム、リノベーションするとき、初期段階で悩むことの1つに発注するリフォーム・リノベーション業者をどの会社にするかという問題があります。
価格や実績、有名会社、提案力など様々な点で比較して決めていくことになりますが、比較検討するときに大事な点を間違ってしまえばリフォーム・リノベーション工事の完了後に後悔することもあります。そこで、失敗しないためのリフォーム・リノベーション業者の選び方を解説します。
相見積もりで見積書を比較
リフォーム・リノベーション業者の比較ポイントはいくつもありますが、最も大事なのは見積書の比較です。工事の見積りを1社のみに依頼しては比較できませんし、そもそも大損する可能性が高くなりますから、必ず複数の業者から相見積もりをとらなければなりません。
リフォーム・リノベーション業者から、「他の業者からも見積りをとっていますか?」「他にも検討している会社はありますか?」とストレートな質問を受けた人は多いと思いますが、1社を単独指名する形になってしまうと割高な見積りが出てくることが多いですから注意してください。
複数の業者から見積書を提出してもらったら、一体、どこを見て比較すればよいのでしょうか?
まず、工事代金の見積り総額です。しかし、総額だけを比較してしまっては、大失敗してしまうことは非常に多いです。安ければよいわけではないことは間違いありません。同時に以下の点もしっかりチェックして比較してください。
書式・項目
そもそも構成のわかりづらい見積書を出すような業者はあまり信用できません。しかし、注意すべきなのは見やすい見積書ならよいかといえばそうでもないという点です。
見積書にはいろいろな情報が入るべきであり、かつ一般の人は見慣れていないものです。よって、見てすぐに簡単に理解できるのは必要な情報が不足してしまっている可能性があります。工事項目を詳細に分けて記載し、それぞれの単価や数量がきちんと記載されているか確認してください。
複数の業者の見積書を見比べることで、工事項目が少なすぎるとか、数量や単価が記載されていないといった問題に気づきやすいでしょう。
数量
数量とは、使用する材料の量に関する項目です。たとえば、壁のクロスならば、32m2のように記載されているはずです。これも複数業者の見積書を見比べることで、A社では数量が明確な項目なのにB社では数量が不明瞭で一式表示になっているなどと違いを見分けることができるはずです。
現場調査
見積書を出すときには、施主からどのようなリフォーム・リノベーションをしたいかという要望を聞くだけでは工務店側は対応できるものではありません。既存の建物がどのようなものか、どのような状態なのかという条件によって費用がかわるはずだからです。
よって、見積りを出す前に現場へ確認に来る業者であるかどうかは、大事な要素であり、基本的なチェックポイントです。
費用の発生タイミング
リフォーム・リノベーションを進める上で少し難しい点は、どの段階から費用が発生するのか不明瞭なときがあることです。
施主から工事への要望をヒアリングし、現地調査をしてから最初の見積りを提示するまでは無料でやってくれるはずですが、その後の対応は会社によって違いがあります。簡単な間取り図などのラフプランを作るところまでは無料ということもあれば、ラフプランは2回目から有料としている会社もあります。
正式に工事請負契約を締結していないにも関わらず、プランの提案に10万円程度の費用を請求することも少なくありません。
リフォーム・リノベーション業者側からすれば、何度もプランを提案し直したにも関わらず、契約に至らないということもあり、それまでにかかった労力を請求したいと考えるのは無理のないことかもしれません。これを完全に無料で対応する会社もあれば、費用を請求する業者もあるということです。
最初の見積りを提示してもらう前に、その業者と接点をもった最初の時点で、どの段階からどれだけの費用がかかるのか聞いておき、それをリフォーム・リノベーション業者選びの参考材料にするとよいでしょう。
担当者が約束を守るか
小さな工事のリフォームならそれほど気にしない人もいるかもしれませんが、工事規模が大きくなれば、投資する金銭が大きいということもありますが、業者と打合せなどで連絡をとりあう期間も長くなります。
担当者が約束したことを守ってくれないようであれば、非常にストレスを感じることになるでしょうし、またトラブルが生じることも多くなります。工事が進んでいく過程で依頼した内容と違っていることに気づいたら、大きな不安がよぎることもあるでしょう。
そこで大事なことが、担当者の対応の良し悪しです。打合せのときに、担当者が回答できないこと等を会社へ持ち帰ってから返答すると約束することもありますし、見積書の提出期日を約束することもあるでしょう。そういった約束事を毎回、きちんと守ってくれるかどうかは大事です。
担当者の対応は、業者選びの重要なポイントだと考えるべきでしょう。
設計者と直接打合せできるか
小さな工事ならともかく、間取り変更を伴うような工事を依頼するならば、営業担当者のみではなく、ぜひ建築に関する専門知識や経験のある設計者(=建築士)と直接話をしたいものです。
希望する工事内容への意見を聞いたり、設計者からの提案内容を聞いたりすることで、住まいへの具体的な要求(デザイン面や安全面など様々な点に関する要求)が整理されていくことでしょう。営業担当者ではわからなかったことが、建築の専門家ならばわかるということも多いですし、話もスムーズに進みやすいですから、設計者と打合せできるのかどうか契約前に聞いておきましょう。
工期と着工・完成時期
希望するリフォーム・リノベーション工事をするのにかかる期間(=工期)も各社からヒアリングして比較すべきです。
希望する時期に入居できるスケジュールを組めるかどうかは重要な要素です。プランが決まってから何カ月も着工できないという人から相談を受けることもありますが、前もってわかっていることが多いですから、業者選びの初期段階で確認すべきです。
リフォーム・リノベーションの実績と経験
実績や経験は誰もが気にすることではないでしょうか。リフォーム・リノベーション業者から実績等について説明を受けたとき、その実績にリフォーム・リノベーション以外の新築工事が含まれていないかもヒアリングしましょう。
住宅を新築する実績は多いものの、リフォーム・リノベーションの経験が非常に少ないということは多いです。会社によって、それまでに何を主要事業としてきたか異なるのは当然のことですから、遠慮せずに聞いておくべきです。
住宅の新築工事とリフォーム・リノベーションは似ているようで、全く異なるものです。何もないところに建築するのと、既存の建物を補修したり活用したりしていく経験は別物なのです。ちなみに、補修や活用を考えなければならないリフォーム・リノベーションの方が難しいという見方が強いです。
また、リフォーム・リノベーションしてきた建物の構造がどういったものであるかも大事です。木造の経験しかないのに、鉄骨造のリフォームをするというのは避けてほしいところです。経験が不足する構造のリフォーム・リノベーションでは失敗する確率も高いと考えた方がよいでしょう。
工事監理・社内検査の内容
着工してから完成するまでの建築途中には、工務店や設計事務所の工事監理者(~建築士)が現場で工事監理したり、工務店が社内検査したりしながら工事を進めていくのが理想です。本来なら当然にすべきことなのですが、これが適切に実施されていないことも多く、下請け業者へ多くの工程を丸投げし、現場をほとんど監理していない業者は多いです。
どういった人がどれだけの内容の工事監理をするのか、社内検査体制がどのようになっているのか確認し、比較検討するとよいでしょう。工事監理や社内検査に不安がある場合には、第三者にリフォーム・リノベーションの住宅診断をしてもらうことも考えましょう。
保証・アフターサービスの内容・期間
工務店によって、工事後の保証やアフターサービスには違いがあります。保証等の対象となる範囲やその期間について確認して、業者選びの参考にしましょう。
そして、契約前に必ず保証関係の書面がどういったものであるか確認しておきましょう。口頭の説明と実際の書面内容が違ったという相談事例もありますから、注意したいものです。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。