今年も6月に入りました。
この時期になれば、ホームインスペクション(住宅診断)を行う会社には、毎年のように増える調査依頼が雨漏りです。
台風による被害も増えますが、この数年増えている豪雨の影響で雨漏りしたという相談も増えます。以前は知らなかった線状降水帯という言葉もニュースに出ていますが、いずれにしても降雨量が増えると雨漏りが増えるのは当然だと言えるでしょう。
今回は、台風や梅雨の時期に多い雨による住宅への影響について、紹介します。
降雨量より強い風の影響が大きい
雨漏り調査の依頼をお受けすることがあるのですが、雨漏りは雨が降っているとき、もしくは降った直後に被害が確認されることが一般的です。そして、降雨量が多いときに発生しやすいのは、想像しやすいですよね。
しかし、降雨量が多いというだけでは漏らず、風が強い雨の時だけ漏水する住宅も多いです。強い風を伴う雨に票注意ということです。
その理由は、強い風があることで、風がなければ吹き込まないような箇所にまで雨が降りかかってしまい、雨漏りが起こることがあるからです。たとえば、軒裏から浸水するケースや室内からベランダへ出るサッシの下部などです。
また、風の強さだけではなく、風向きが影響することはあります。北風の時は漏らないのに、南風の時には漏るという具合ですね。つまり、浸水してしまう箇所に雨が降りかかるどうかということです。
雨漏りは、雨が降れば常に生じるというよりは、降雨量・風の強さ・風向きによって、漏るときや漏らないときがあるということです。
建築中の雨濡れ被害
この時期になれば、よく持ち上がる問題の1つが、建築中の住宅の雨濡れ被害です。
建築会社は、上棟した後、建物内部にあまり雨水を入れたくないので、早めにサッシや防水シートを施工しようと考えることが多いですが、それでも間に合わず、建物内部、つまり室内側に雨が入ってくることがあります。
そういったとき、吹き込んだ雨の量やそれで濡れた部位によっては、その後の影響が心配されることもあります。特に床材にしばらく雨水が滞留していたときや、床下へ大量の雨水が入って滞留していたときです。
そういう雨濡れ被害にあったときには、各部材の乾燥後の状態で異常がないことを確認してから、次の工程へ進んでもらえると安心できます。酷いときは十分に床下地材が乾燥していないにも関わらず、フローリングを施工してしまうことがありますが、見えない部分のカビや腐食が心配になりますね。
床下は通気されているとはいえ、長時間の雨水の滞留はカビの発生要因になりますので、早めに排水・乾燥してもらいたいところです。
床下浸水被害
建築中の雨濡れ被害のなかでも床下の浸水被害について触れましたが、既存住宅(完成後の新しい住宅や古い住宅を含む)であっても、大雨のあとに床下浸水被害に合っている住宅が稀にあります(僅かなケースです)。これは、河川の氾濫や近隣の排水溝が溢れて浸水するという話を除外しても起こるケースについてです。
なぜ、そのような床下浸水が雨に関連して起こることがあるかと言えば、以下の理由からです。
- 基礎の立ち上がり部分と底版部分の継ぎ目から床下へ浸水
- 基礎の水抜き穴から床下へ浸水
知らないと少し意外に感じるかもしれません。
基礎の立ち上がり部分と底版部分の継ぎ目から床下へ浸水
基礎コンクリートの多くは、新築工事の際に、その立ち上がり部分(外部から見えている部分)と底版部分(基礎の底の部分)の2度に分けて打設されています。よって、目で見てもわからないレベルで、立ち上がり部分と底版部分にごく僅かな隙間が生じていることがあります。
また、敷地内に大量に雨が降ったとき、地面から浸水した雨水が地中深くに浸透したり、敷地外へ充分に排水されたりせず、基礎周りにしばらく滞留してしまうことがあり、この雨水が基礎立ち上がり部分と底版部分のごく僅かな隙間から床下へ浸水してしまうことがあるのです。
基礎の水抜き穴から床下へ浸水
住宅を新築するとき、基礎の内側(床下側)に降った雨水を排水するために、基礎に水抜き穴を設けることがあります。これは必要だと考えて対処されていることですからよいのですが、この水抜き穴を埋めずにそのままにしておくと、大雨のときなどに、地中に浸透した雨水が水抜き穴から床下へ流れてくることがあるのです。
しばらく時間を経過すると、その床下浸水した雨水が、同じ水抜き穴から出て行くこともあります。
長い年数の間に、この理屈で雨水が床下に入ったり出て行ったりを繰り返すことがあり、アネストのホームインスペクション(住宅診断)で床下へ潜ったときに、水染みが見つかったり、高い湿度を感じたり、カビを確認したりすることがあります。
床下の水分は、床下環境として歓迎できないことですから、こういうことがないようにしたいものです。
床下は、浸水被害以外にも大事な構造耐力上の部位や断熱材なども確認できるスペースですから、5年1度くらいは点検しておくとよいでしょう。床下では、虫(クモ・ゴキブリ・その他の昆虫など)がいたり、釘が出ていたりすることがあるので、自分で潜っていくときは十分に注意してください。
関連記事
執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。