投資用アパートの購入にインスペクションが必要か?

ホームインスペクションは、マイホームを購入するときや新築するときに利用するサービスだと思っていませんか?

その考えは正しいのですが、実はマイホームの購入時だけではなく、投資用のアパート一棟を購入するときや建築するときにも利用されています。不動産投資家によっては、売買する際はいつも利用しているという人もいるくらいです。

大企業が大きなビルなどを購入するときに専門的なデューデリジェンスを行っていますが、個人や小規模な資産管理会社でも、インスペクションくらいは行おうと考える人が増えているのです。大企業ほどに詳細なことは難しくても、できる範囲のことをしてリスクヘッジしておこうということです。

ここでは、主に新築・中古のアパート投資を行う個人や資産管理会社、アパートのオーナー向けに、購入するときや売却するときなどに役立つホームインスペクション(住宅診断)について、基礎知識や見落とされがちなリスク、インスペクションの必要性、業者の選び方を紹介します。

はじめに|アパート投資で失敗しないために必要な視点

アパート投資に際して、ホームインスペクションを利用する人が多くなりましたが、投資家のなかでも考え方はいろいろあります。しかし、物件を購入するときが非常に大事であることは言うまでもないですね。購入するときの大事さとインスペクションがアパート投資に役立つことを紹介します。

不動産投資は購入するとき、建築するときが大事

アパートなどの不動産へ投資する際、つまり投資用の物件を購入したり、新築アパートを建築したりするとき、投資家にとってとても重要な局面であることは言うまでもありません。投資資金に対するリターン、利回り、節税効果、保有・運用・修繕などのコスト負担をよく検討しているはずです。

そして、将来の売却のこと(出口戦略)や用途変更(住居から宿泊施設へ、テナントビルから住居へなど)などのことまで考えて、購入判断することもあるでしょう。

購入するときに、将来のことまで検討・試算しているわけです。

アパート投資にインスペクションが役立つ

対象物件の将来のことを考えるとき、建物の状態を把握することは大変重要です。凡その修繕コストや修繕を要する時期を検討する上で参考になることもありますが、購入直後に大きな補修費用が発生しそうにないか確認することは、投資効果を考える上で大事ですね。

アパートなどの投資用不動産を購入する前に、ホームインスペクション(住宅診断)を入れることが増えているのは、それだけのメリットを感じている投資家が多いからです。

インスペクションを入れることは、その調査費用が新たなコストになるものの、購入するときだけではなく、将来のことまで考える上で必要な投資だととらえる視点が必要です。

アパート投資で見落とされがちなリスクとは?

見落とされがちなリスク

収益用にアパートを購入するときに、建物に関して考えられる代表的なリスクを紹介します。

賃貸中の物件で建物の詳細を把握しづらい

1つ目のリスクは、中古アパートを購入するときのものです。中古物件の多くは、オーナーが賃借人(法人を含む)に部屋やテナントを貸しているため、売買に際して購入検討者などが、室内を確認できる機会がほとんどありません。

また、共用部の確認も入居者に遠慮する心理から、細かな確認をしていない人が多いです。

古い建物だけではなく、築浅の建物であっても、想像以上に劣化事象が見つかることがあるものですが、そういった問題点を把握する機会が少ないわけです。

修繕費の見込み違いで利回りが低下

新たに投資物件を入手するに際して、多くの買主(投資家)は、ざっくりとした修繕費用を見込んでいることでしょう。投資によって得られる家賃収入と修繕費などの支出などを考慮して利回りを計算しているでしょう。しかし、その修繕費が見込みよりも遥かに大きな負担となってしまった場合、利回りも低下してしまいます。

インペクションで建物の全ての問題点を把握できるわけではないですが、自分だけでは把握できなかった問題点(リスク)を把握できることがあるため、その診断結果を投資判断に活用することができます。

ただし、インペクションだけで修繕費用を算出してもらえるわけではないため、診断結果から大きなコスト負担となりそうかどうか、施工業者などに相談することも同時に考えましょう。

ホームインスペクションとは?投資用アパート物件にも必要な理由

ホームインスペクションが、アパート投資に必要なものであるかどうかは、インスペクションの基礎知識を理解することと、これを利用するメリットを把握することで判断できるでしょう。

インスペクションの基礎を理解しよう

ホームインスペクションとは、建物の施工品質や劣化状態を把握するために行う建物調査のことで、一般的には建築士の資格を持ち、調査の経験・実績・ノウハウがある専門家によって実施されています。

住宅(一戸建て・マンション)の購入判断とすることやリフォーム・リノベーションの施工品質チェックなどを目的として利用されることが多い建築系の専門サービスですが、実は、アパート等の一棟の建物を購入するときにも利用されています。

アパートに対するインスペクションは、ホームインスペクション業者のなかでも対応している会社と対応していない会社があるため、個別に問合せて確認しましょう。

投資アパートにインスペクションをするメリットと注意点

投資用のアパートにホームインスペクションを行うメリットには、以下のものが挙げられます。

  • 購入するときの判断材料になる
  • 修繕項目の判断材料になる
  • 施工業者に修繕計画・案を提示してもらう材料になる
  • 購入時の価格交渉の材料になることがある
  • 売却時のアピール材料になることがある

これら5つのメリットは、いずれも大きな意味を持ちますね。これらのメリットのことを考えれば、購入するときだけではなく、売却するときや、保有するアパートのメンテナンスをするときにも役立つことを理解できるでしょう。

インスペクション業者の選び方|投資家目線でチェックすべきポイント

インスペクション業者の選び方

アパートに対してホームインスペクションを入れる場合、依頼者が、インスペクション業者選びに際して考えておくべきことを紹介します。

アパートの調査経験があること

業者選びに際して、依頼者が最初に考えるべきことは、アパートの調査経験の有無です。アパートなどの共同住宅には、一戸建て住宅では存在しない共用部分(共用廊下・階段など)があり、その部分の調査も重要ですが、これらの調査経験が無いホームインスペクターも多いです。

現地で行う建物調査は、調査マニュアルだけではなく、経験が重視されるため、全く経験が無い人ではなく、ある人にお願いしたいものです。

一戸建て住宅のインスペクション経験も豊富なこと

アパートのインスペクション件数は、一戸建て住宅に比べると相当少ないです。棟数が全然違うため、当たり前のことなのですが、アパートの経験だけを重視していては、全体の調査件数が少ない人にお願いすることになってしまいます。

一戸建て住宅に対して行うインスペクションの経験をアパートにも活用できることが非常に多いため、一戸建ての経験も重視しましょう。

一級建築士に担当してもらえること

規模が大きな建物は、二級建築士より一級建築士の方が、設計監理の経験を有している確率が高いです。これは、構造種類や建物の規模・階数によっては、二級建築士が設計監理をできない建物があるからです。アパートのなかには規模が大きな建物も多いため、一級建築士の方が経験を積みやすくなっています。

また、規模に関係なく、一級建築士の方が二級建築士よりも良質な業務経験を積んでいる確率が高いこともあり(人により個人差がある)、できるだけ二級より一級建築士に担当してもらう方が無難でしょう。

建物規模によっては複数人で対応してもらえること

アパートは、建物規模が大きいものもありますが、それを一人で診断するのは難しいため、複数人で担当してもらえる方がよいでしょう。規模だけではなく、調査依頼する範囲・建物形状などにもよりますので、できればインスペクション業者に図面を提出して相談するとよいでしょう。

まとめ

アパートを投資用に購入する人向けに、ホームインスペクションの基礎知識や利用するメリット、必要性を説明しました。また、投資のリスクを知ることで、インスペクションが必要なものだとも解説しました。

投資家の皆さんが、不動産投資、アパート投資に際して、建物の状態を把握することの大切さとホームインスペクションが役立つことを理解できたことでしょう。利用するタイミングは、購入前や建築中がベストですので、慎重に検討して利用してみてください。

アネストの住宅インスペクション

執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。
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住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。