2013年に国土交通省が策定した住宅診断に関するガイドラインがあり、これを既存住宅インスペクション・ガイドラインと言います。このガイドラインでは、検査項目が示されていますが、ガイドラインで示している検査項目とアネストが行う住宅診断(ホームインスペクション)の検査項目の相違点についてご紹介します。
既存住宅インスペクション・ガイドラインとは?
まず、既存住宅インスペクション・ガイドラインについて簡単に説明します。
中古住宅が売買される時点における物件の状態を消費者が把握できるようにすることで、中古住宅の流通促進につながると考えられており、さらに物件の状態を把握する方法として中古住宅の住宅診断(ホームインスペクション)の活用が有効だと考えられています。
しかし、住宅診断(ホームインスペクション)を行う会社は多数存在しており、提供する品質レベルに大きなばらつきがあることなどが懸念されている状況です。そこで、適切な業務実施を通じて住宅診断(ホームインスペクション)に対する信頼確保や円滑な普及を図ることが、この既存住宅インスペクション・ガイドラインの目的となっています。
ガイドラインでは、検査の内容や手順、検査担当者、公正な業務実施のために遵守すべき事項などが示されています。但し、ガイドラインは強制力があるわけはないため、これに沿った業務を行っていない業者も存在しています。
そして、もう1つ大事なことは、ガイドラインは最小限度のことを示したものであり、これで十分だとしているわけではありません。最小限でしかないため、真剣に消費者のことを考えれば、自然とより多くの項目をプラスして診断していく必要が出てくるのです。
建物外部の検査項目の相違点
それでは、ガイドラインで示された検査項目とアネストの住宅診断(ホームインスペクション)の検査項目の相違点を建物外部から順に説明していきます。
屋根
ガイドラインでは、屋根は足場等を組まずに確認できる範囲としているため、地上やベランダから目視確認できる範囲での検査(インスペクション)となり、これについてはアネストの住宅診断と同等のものです。
しかし、ガイドラインでは屋根の検査項目として「屋根葺き材に雨漏りが生じる可能性が高い欠損やずれ」とのみにしているのに対して、アネストではこれらに加えて、腐食、色褪せ、破風の塗装落ち、水切り等金属部の錆・腐食なども対象としています。
これらの項目が全ての住宅で確認できるとは限りませんが、雨漏りに直接関係しないことであっても、検査するのがアネストの住宅診断です。
外壁
ガイドラインでは、「外壁材に雨漏りが生じる可能性が高い欠損やずれ」「シーリング材や防水層に雨漏りが生じる可能性が高い破断・欠損が生じている状態」とのみにしているのに対して、アネストの住宅診断ではこれらに加えて、外壁仕上げ材の剥離、腐食、カビ、錆なども確認し、さらに外壁に接する設備器具(雨樋を含む)の固定状況なども確認します。
ここでも雨漏りに関することはもちろん、それ以外の劣化具合までも確認するという点でアネストの住宅診断がより詳しいところまで診ていることがわかります。
基礎
基礎も大事なところですね。ガイドラインでは、「コンクリートに幅0.5mm以上のひび割れ又は深さ20mm以上の欠損」「鉄筋コンクリート造で鉄筋が腐食している可能性が高い状態(錆汁)や腐食する可能性が高い状態(鉄筋の露出)」という項目が挙げられています。
0.5mm以上の巾があるひび割れや深さ20mm以上の欠損、錆汁、鉄筋の露出といずれも大事な項目であるのは確かなのですが、これらは極端な症状に限定されている印象を受けます。
確かにこれらの症状があれば、注意を要するものですが、ここにあげた数値以下であっても状況によっては大いに心配されることがありますし、他の症状(ジャンカや基礎表面の変色、基礎パッキンの状況など)についても細かくチェックしなければ、後に大きな問題となることがいくつもあります。
アネストの住宅診断では、そういった項目までもフォローしているという点でガイドラインとは大きな違いがあります。
サッシ(屋外に面した箇所)
ガイドラインでは、「建具や建具まわりに雨漏りが生じる可能性が高い隙間や破損」「シーリング材や防水層に雨漏りが生じる可能性が高い破断・欠損」があげられています。
アネストでもこれらの項目を大変重視しており、同様の確認を行っています。建具(サッシ)周りに限らず、外壁に接する設備器具の防水状況は必ずチェックします。配管が貫通する箇所などもそうです。
外構
既存住宅インスペクション・ガイドラインでは、外構部分については何も触れられておりません。検査の対象外ということですね。しかし、外構(塀や門扉など)にも心配される劣化事象があれば、購入判断や補修有無の判断のために情報が欲しいものです。アネストでは、この外構部分も確認対象としています。
建物内部の検査項目の相違点
次に建物内部における相違点を見ていきましょう。
床・壁・柱
ガイドラインでは、「6/1000以上の傾斜」を検査項目としています。一般の方は6/1000の傾きと言われても理解しがたいですが、この傾きは相当な角度のものであり、一般の人でもその場に立てば傾きを感じるほどのものです。
これを対象とするのは当然のことではあるのですが、これよりも軽微な傾きであっても構造的に心配されることはよくあることですから、もっと小さな数値にも注目しなければなりません。但し、傾きの数値だけで判断できるものではなく、壁や天井などに関連するひび割れ等の症状が出ていないかどうかも合わせて検査する必要があります。
傾きがある場合、その事象だけが独り歩きしてしまい、判断を誤ってしまう人も少なくないですが、アネストの住宅診断では、傾きの他に壁などのひび割れ、建具の動作状況なども確認したうえで診断結果やアドバイスを出しています。
また、ガイドラインでは雨漏りに関することとして、天井や壁、小屋組の漏水痕の確認を検査項目としていますが、これはアネストと同じです。室内側から雨漏りの有無について確認するには、漏水痕(水染み)を確認していくことが基本となります。
部屋だけに限らず、押し入れやクローゼットなどの内部でも同様に確認していいきます。ただ、こういった収納内については荷物の関係で確認できる範囲が一部に限られることが多いことも知っておきましょう。
床下・小屋裏
ガイドラインでは、床下や小屋裏については点検口から目視できる範囲を検査対象としています。アネストの住宅診断でも基本的にはこれと同様ですが、依頼者の希望に合わせて床下や小屋裏(屋根裏)の内部へ進入して実施する調査をオプションとして選択することも可能です。
床下や小屋裏は主要構造部などの大事な項目を確認することができる重要なスペースであるため、できればオプションまで利用する方がよいです。
ガイドラインでは、「小屋組・柱・梁・土台・床組等の蟻害・腐朽・腐食」を挙げていますが、アネストではこれらのほかに構造部を留める金物の有無や設置状況、さらに断熱材の有無や状態も確認しています。金物は耐震性に関係する大事なものですから、可能な範囲でチェックすべきですし、断熱材は施工不良や劣化が指摘されることが非常に多いものですからチェックすべきです。
ここでも、ガイドラインとアネストの検査項目の相違点の大きさが表れています。
設備配管
給水管や排水管の検査も大事なことですね。ガイドラインでは、「給水管の錆による赤水」「水漏れ」「排水管のつまり」「換気ダクトの脱落・接続不良」があげられていますが、アネストの住宅診断では給排水管の固定状況・損傷も対象となっています。
特に排水管の固定状況は大事です。劣化等により固定状況があまくなっていると、排水時に排水管のはずれや割れによって漏水してしまうことがあるからです。
ちなみに、検査時点で水道が使用できないときには、実際に排水して水漏れしていないかを確認することができません。
ここまで見てきただけでも、既存住宅インスペクション・ガイドラインの検査項目よりもアネストの住宅診断(ホームインスペクション)の方がより多くの大事な項目を対象としていることがわかりますね。ガイドラインだけではフォローできないところに大事な項目がありますから、アネストのオリジナル調査項目までが安心するために必要なものだと言えます。
アネストが対象としている項目の一覧は、「住宅診断(ホームインスペクション)の具体的な調査項目」でもご覧頂くことができます。自分自身でチェックするときのチェックリストにも使えますから、一度見てみてはいかがでしょうか。
関連記事
執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。