新築の建売住宅を購入したとき、または注文建築の家を建てたとき、売主や建築会社(ハウスメーカーを含む)から買主や施主へ住宅が引渡しされる際には、様々な書類も引渡されます。この書類のなかには、住み始めてから、もしくは将来的に重要な役割を果たすものもあるため、漏れなく受け取っているか確認しなければなりません。
しかし、住宅の購入や建築に慣れていない人が漏れなく引渡し時の書類を受け取っているのかチェックするには、知識が必要ですね。そこで、一般的に考えられる引渡し時の書類リストを紹介し、併せてそれぞれの書類の解説もしておくので役立ててください。
但し、ここで取り上げているものは新築住宅の引渡し時の書類です。中古住宅については後日、紹介します。
新築住宅の引渡し時の書類チェックリスト
一般的に考えられる書類の名称を一覧にすると以下の通りです。
- 建築確認申請書(副本)・確認済証・中間検査合格証・検査済証
- 設計図書(竣工図書)
- 打合せ記録
- 地盤調査報告書・地盤改良施工報告書
- 設備機器等の取扱説明書
- 保証書
- 保険付保証明書
- アフターサービス規準書
- 住宅性能評価書
- 重要事項説明書に記載された書類(建売住宅の場合)
- 工事完了・引渡し証(注文建築の場合)
- 鍵の引渡し証
- 工事業者の一覧(注文建築の場合)
- 工事監理報告書(注文建築の場合)
- 登記識別情報
書類の名称は、売主や建築会社などによっては異なるものもあるので注意してください。たとえば、「工事監理報告書」を「施工監理報告書」としていたり、「アフターサービス規準書」を「保証及びアフターサービスに関するご案内」としていたりすることはよくあることです。
以下ではそれぞれの書類について簡単に解説しておきます。
建築確認申請書(副本)・確認済証・中間検査合格証・検査済証
住宅を含めて建物を建築する際に、確認検査機関にこのような建物を建てるという内容を申請して確認を受けることを建築確認と言い、このことは建築基準法で規定されております。
このときの申請書面である建築確認申請書の副本と確認を受けたことを証する確認済証は、建売住宅なら売買契約時に、注文住宅なら建築確認がなされた直後に受け取っておくことも多いですが、引渡し前に受け取っていないならば、引渡し時には必ず受け取ってください。
建築工事の途中で確認検査機関によって中間検査が実施されることがありますが、実施された場合は中間検査合格証が発行されます。中間検査が必要ない(実施されない)物件が多いので、この書類がないことも多いと覚えておきましょう。
建物が完成した後には、確認検査機関によって完了検査が実施され、合格すれば検査済証が発行されます。これは全ての物件であるはずのものですから、必ず受け取ってください。但し、引渡し時に書類発行が間に合っていないこともあるので、引渡し日よりも後から受け取るケースは多いです。
中間検査や完了検査は、10~20分程度で行う非常に簡易的な検査ですから、施工不具合等が心配な人は買主側で建物をチェックしてくれる第三者の検査サービス(建築中なら住宅あんしん工程検査、完成時なら内覧会立会い・同行)を利用しましょう。
設計図書(竣工図書)
建物には必ず図面があります。最初に不動産業者などから見せてもらえる簡単な間取り図とは別に設計図があるはずです。建築する前の設計段階で作成されるものを設計図書(せっけいとしょ)と呼びますが、これは契約時点で受け取っておくべきものです。
※図面1枚1枚のことを設計図と呼び、多くの図面をまとめたものを設計図書と言います。
そして、工事が完了してから改めて作成されるものが竣工図書です。工事完了後に改めて作成と聞くとおかしいと考える人もいるので説明しておきます。
着工してから完成するまでの間に、プランの一部を変更するケースは少なくありません。建築する過程でプラン上の問題点に気づいたときや施主の要望による変更などの理由で、変更されるのです。変更されたのであれば、それを図面に反映しなければなりませんね。それが竣工図書です。
よって、設計図書と竣工図書には一部で相違点があるわけです(仮に、建築中に何も変更されなければ同じものとなります)。そのため、契約時に設計図書を受け取っていたとしても、引渡し時には竣工図書を受け取る必要があるのです。
打合せ記録
打合せ記録は注文建築で家を建てるときに多いものです。着工前(ときには工事が始まってからも)に施主と建築会社の間で打合せて取り決めた約束事をまとめた書面のことです。設計図書に記載されていない詳細なことを打合せ記録という形で書面に残すことはよくあります。
打合せ記録は、打合せの都度、お互いに同じ書面(一方が写し)を保管することになりますが、その打合せ結果をさらに変更していくことも珍しくありません。そういった打合せを重ねているうちに、最終的に合意したものが何かわかりづらくなることもあるので、そういったときは最終合意内容をまとめた書面を作成しておくことをオススメします。
引渡し時というよりは、着工前後から完成までの間に受け取ることが多いものです。
地盤調査報告書・地盤改良施工報告書
住宅を新築する際は、地盤調査を行っているはずです。その調査結果や地盤調査会社による見解が記載されたものが地盤調査報告書です。これは契約時や着工前にもらっておくべきものです(建売住宅なら契約前に受け取って内容を確認しておくべきです)。
そして、地盤改良・補強工事を実施した場合には地盤改良施工報告書が作成されるはずですから、この書類も引渡し前に受け取っておきましょう。
将来、建物に不具合が現れた際に必要となることがある大事な書類です。
設備機器等の取扱説明書
住宅にはキッチンや24時間換気設備などのように様々な付帯設備機器がありますが、これらの使用方法や使用上の注意点を記載した取扱説明書があるはずですから、引渡し時に受け取りましょう。
保証書
新築住宅は10年間の保証が義務付けられていますが、このことを保証書に記して買主へ渡すことがあります。
建売住宅では、重要事項説明書や売買契約書に10年間保証することを記載しているのみで保証書を発行していないこともありますが、保証書がなくとも義務ですから保証されます。
建築会社や不動産会社によっては、法律で義務付けられた10年間を超える期間(たとえば20年や30年など)の保証を謳っていることもありますが、この場合は必ず、保証期間や保証内容を明記した保証書を受けとってください。
保険付保証明書
新築住宅では10年間の保証義務がありますが、売主等がその保証を倒産等のために履行できないときに備えて、法務局に供託するか瑕疵保険に加入することが義務づけられています。大手ハウスメーカーを除いては瑕疵保険に加入していることが多いですが、その場合には保険に加入していることを証する書面(保険付保証明書)を受けとりましょう。
アフターサービス規準書
10年間の保証義務とは別に、住宅のいろいろな部位や設備に関して保証等の規準を設けていることはよくあることです。その書面(アフターサービス規準などと呼ぶことが多い)を契約時に受け取っていない場合は引渡し時に受け取ってください。
受け取った際には対象となる部位や期間が明記されていることを確認してください。
住宅性能評価書
住宅性能表示制度による性能評価の対象となっている物件であれば、性能評価書を受け取ってください。建築する前の設計性能評価と完成後に建設性能評価の2つがありますが、両方を受け取らないと意味がありません。
工事完了・引渡し証(注文建築の場合)
注文建築の工事請負契約をしている場合、建物が完成した後に工事完了を証する書面や引渡しを証する書面を交付することが多いです。建売住宅の場合はこういったものはないことが多いです。
鍵の引渡し証
書類ではありませんが、引渡し時には鍵を受けとります。そして、この際には鍵の引渡し証が発行されます。受け取った側は受取証にサインします。
工事業者の一覧(注文建築の場合)
注文建築の場合に限られますが、その住宅の工事に携わった工事業者(下請け業者)のリストを受け取れることがあります。ただ、これは必ず交付されるものではなく、貰えないことの方が多いです。設計事務所が主導して建築した場合にはもらえることが多いです。
工事監理報告書(注文建築の場合)
工事監理報告書は重要な書類で、工事監理者が、建築の過程で設計図書と現場を照合したり、施工品質をチェックしたりした経過を記載したものです。建築中の写真とともに報告されます。
但し、工事監理報告書が施主に提出されない住宅も多く、求めても提出してもらえないケースも少なくありません。工事請負契約を締結する段階で完成後、引渡し時にこれを提出してもらえるか聞いておきましょう。
登記識別情報
登記識別情報と言うと耳慣れない言葉だと思いますが、所有権移転をした際に法務局から発行されるものです。以前は権利証(登記済権利証)が発行されていたのですが、登記識別情報に変ったものです。登記識別情報は引渡し当日には発行されないので、数日を経過してから受け取ることになります。
重要事項説明書に記載された書類(建売住宅の場合)
建売住宅の契約前にサインした重要事項説明書のなかで、買主へ引渡す書類が記載されているはずですので、引渡しまでに受領していないものがあれば、それら全てを受けとりましょう。注文建築の場合は、工事請負契約時に案内されている書面の全てを受け取っているか確認してください。
新築住宅の引渡し時の書類に関する注意点
新築住宅の引渡しに際して受け取っていない書類があることに気づいたときは、速やかに売主や建築会社に請求してください。将来、必要になってから求めればよいと考えて先送りにしてしまうと後悔することがあります。
たとえば、何年も経過したときに書類やそのデータを売主等が保管していないことがあります。また、建物の不具合や施工不良等が見つかってから、その原因調査のために図面等を請求しても、施工ミスの指摘を恐れる建築会社が提出を拒否する事例があります。
そのときになってから入手するのは苦労が伴うか、そもそも入手できないこともあるので、引渡しの時に受け取るように注意が必要です。
引渡し前の大事な注意点や内覧会(施主検査)のことなら、「新築住宅の引渡し前の注意点(内覧会と引渡し)」を参考にしてください。また、施主検査の基礎知識やチェックリストなら「新築住宅の引渡し前の施主検査・完成検査(竣工検査)の立会いと注意点」が参考になります。
執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。