新築の建売住宅購入を考えている人や注文住宅を建築するための土地探しをしている人が、様々な物件を検討するなかで建築条件付き土地の購入をするかどうか考える機会に遭遇することは少なくありません。
建売住宅や注文建築のいずれにも関係のある建築条件付き土地とは、どういったものなのでしょうか。そのメリットやデメリットはもちろん、購入する上での注意点も理解したうえで建築条件付き土地を購入するかどうか慎重に考えなければなりません。
建築条件付き土地とは何か
最初に建築条件付き土地に関する基礎的なことを学んでおきましょう。どういうものかわからずに取引を進めることで後悔する人は少なくないので注意してください。
建築条件付き土地の基礎知識
建築条件付き土地とは、土地の売買契約ではあるのですが、その土地に建てる建物についてはどの建築会社(工務店)に工事を発注しなければならないか土地の売主から指定されているというものです。指定された業者が土地の売主自身であることもあれば、その関連会社であることもあります。
土地の売主としては、土地の売買による利益(仕入れ値と売値の差額から経費を引いたもの)だけではなく、建物の建築工事代金でも利益を出せるというメリットがあります。また、建物について建築確認を得ていない段階でも工事請負契約を締結できるというメリットもあります。
建売を探していた人にとっては、「ある程度はプランを自由にできますよ」などと営業マンから言われて魅力を感じることもあるでしょう。また、注文建築するための土地を探していた人にとっては、希望の立地でこの条件が付いた土地を見つけることができることもあります。
建築条件付き土地の購入から建物完成までの流れ
建築条件付き土地を購入した場合、建物が完成して入居するまでの流れはどのようになるのでしょうか。この流れを大雑把に表せば以下のようになります。
- 土地の売買契約を締結して手付金を支払う
- 銀行に融資申し込みを行う
- 建物プラン(間取り・仕様等)の打合せを行う
- 建築工事請負契約を締結し手付金を支払う
- 着工する
- 完成する
- 引渡し前の施主検査を行う
- 引渡しを行い、残代金(土地代金及び建物の請負代金)を支払う
- 入居する
上の流れに出てくるように、2つの契約があることを理解しておきましょう。1つ目が土地の売買契約であり、この契約のなかに建築条件が付けられています。2つ目が建物の工事請負契約です。
相談を受けた人から話を聞いていると、建築条件付き土地を契約したことは理解しているものの、建物の工事請負契約をしたかどうか把握していないという人が多いですから、あなた自身が取引の流れのなかのどの段階にいるのか、どの契約を交わしたのかきちんと理解しながら進めていきましょう。
建築条件付き土地に家を建てるメリット
よく建築条件付き土地を買うのは危ないとか、トラブルが多いと言われていますが、実際にそのように耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。リスクがある物件をなぜ買うのでしょうか。ここでは、建築条件付き土地を購入して家を建てるメリットをあげています。
- 建築条件なしの土地より物件を探しやすい
- 間取り・プラニングが自由(自由でないこともある)
- 建築会社(工務店)選びで苦労しない
- 建築中に工事品質をチェックして欠陥を防ぎやすい
- 住宅ローン(融資)を借りやすい
- 土地と建物が別の取引よりも安い
主なメリットは以上の通りです。これをもう少し掘り下げてみましょう。
建築条件なしの土地より物件を探しやすい
注文住宅を建てたくても土地を持っていない人ならば、まず土地探しをしなければなりません。しかし、土地を探してみた人ならわかると思いますが、希望する土地を見つけるのは簡単ではありません。
郊外の住宅地や地方であればまだ見つけやすいことも多いですが、都市部で注文住宅を建てるのに適した土地を適切な価格(相場と大きく開きの無い価格)で見つけるには相当な時間を要することもありますし、いくら時間をかけても見つからないこともあります。
しかし、建築条件付き土地を検討対象とした途端に選択肢が増えるということはよくあることです。不動産会社が土地を仕入れた場合、更地で転売するよりは建物の売買や建築でも利益を求めるのは自然なことですから、土地だけで売ってもらえないことは多いのです。
間取り・プラニングが自由(自由でないこともある)
建築条件付き土地では前述の通り建築会社を指定されていますが、土地の買主(建物の施主)が希望する間取りやプランで家を建てることができるという特徴があります。こだわりのある家を希望している人には嬉しいメリットですし、強いこだわりがなくとも間取りを自由にできることは多くの人がメリットだと感じるでしょう。
但し、後述しますが、それほど自由ではない取引も決して少なくありません。これについては、この後のデメリットのところであげている「間取り・プラニングに対する制約が多いことがある」や「建築会社(工務店)の標準仕様を強制されることがある」を熟読してください。
建築会社(工務店)選びで苦労しない
注文住宅を建てるときは、土地探しと同じくどの建築会社(ハウスメーカー等)に工事を依頼するかで迷い、悩むものです。いろいろなハウスメーカーや工務店の話を聞くうちに、一体何がよいのかわからなくなり、疲れ果ててしまう人もいます。
建築条件とき土地では、土地の契約においてはじめから建築会社を指定されているため、建築会社選びで苦労する必要はありません。会社選びに時間・労力を費やしたくない人や建築を希望するハウスメーカー等が無い人には向いていると言えます。
建築中に工事品質をチェックして欠陥を防ぎやすい
建売住宅を探していた人にとって、これから建築工事を始めようとする物件を買うことは、建築中の様子をチェックできるというメリットがあります。完成済みの建売住宅ならば完成時の状況しか検査できませんが、これから建築するわけですから、基礎工事から完成まで第三者の住宅検査を入れて欠陥工事を未然に防ぐことができるのです。
住宅ローン(融資)を借りやすい
住宅ローンを利用する人にとっては、土地と建物が完全に別の契約である場合、住宅ローンの借り入れに苦労することがあります。
建物プランの具体性や建築時期などが障壁になることがあるからです。建築条件付き土地の売買の方が金融機関が前向きになってくれる確率が高いです。
土地と建物が別の取引よりも安い
土地のみを購入して建物を注文建築で建てる場合、土地の取得価格が割高になりやすいため、総額が高くなりがちです。
一方で、建築条件付き土地と建物の建築であれば、建売住宅を購入するのと変わらないくらいの価格帯になることも多く、総額を安く抑えられる可能性が高いです。
結果的に、この価格の違いは購入する住宅の大きさにも影響を与えることですね。
建築条件付き土地に家を建てるデメリット
メリットだけではなく、建築条件付きとのデメリットも見ておきましょう。これを見てあなた自身に合うものかどうか判断するのもよいでしょう。
- 希望の建築会社(工務店)で家を建てられない
- 間取り・プラニングに対する制約が多いことがある
- 建築会社(工務店)の標準仕様を強制されることがある
- 間取り検討に十分な時間をもらえないことがある
以上が代表的なデメリットですが、気になる項目がありましたら要注意です。以下で1つ1つ説明していきましょう。
希望の建築会社(工務店)で家を建てられない
建築条件付き土地の特徴の1つが、建築会社を指定されることですから、既に希望するハウスメーカーや工務店がある人にとっては、この点を妥協できるかどうかが非常に大きな壁となります。
住宅展示場巡りをして建築会社を先に決めている人もいますが、建築会社選びと土地探しを平行しならがら、希望を調節していきたいところです。
間取り・プラニングに対する制約が多いことがある
建築条件付き土地を購入した場合、建物の間取りや仕様といったプラニングの点で建築会社からいろいろな制約を設けられることがあります。希望を伝えても、「それではできない」と返答されることが多いという悩みを持っている人は少なくありません。
土地の売主が不動産の売買を主な事業としており、建築工事や設計を外部にほぼ丸投げしているような会社である場合、こういったことがよくあるようです。
土地の売主は、もともと建売住宅を販売するくらいの感覚で建築条件付き土地の販売をしていることがあり、そういった土地を買うとよくトラブルが起こっています。「フリープラン」「自由設計」などと謳っておきながら、何も自由に決められないというクレームは多いのです。
建築会社(工務店)の標準仕様を強制されることがある
ときには、建築会社があらかじめ用意している標準仕様なるものを強制されることもあります。キッチンやユニットバスなどの設備からフローリングなどの内装まで指定されたものを強制されるのです(もしくはいくつかの選択肢から選ぶ)。
注文住宅だと思っていたのに、ほとんど施主の意思を反映してもらえないとなれば、不満が溜まり後悔するのも無理はありません。
なかには契約前に不動産会社から「建売みたいなものですから」と説明を受けており、納得して購入している人もいますが、「フリープラン」「自由設計」などと言われていた人ならば納得できるはずもありません。
間取り検討に十分な時間をもらえないことがある
土地の売買契約を締結してから間取り・仕様を決定するまでの期間は、いくらでも好きなだけあるわけではありません。一般的には、土地の売買契約から建物の工事請負契約を締結するまで3カ月です。
その3カ月間に建築会社や設計者と何度も打ち合わせの場を設けて話し合い、もちろん家族でも話し合って決めていかなければならないのです。契約前に決めたプランの図面を提示してもらって、それを確認してから契約するわけですから、打合せや検討に避ける期間は長くても2カ月半程度です。
ときには、時間が足りずに見切り発車となってしまい、後から後悔している人もいます。
建築条件付き土地を購入するときの注意点
これまでに建築条件付き土地を購入する場合のメリット・デメリットを見てきましたが、いくつかの大事な注意点についても説明しておきます。
建売住宅と同じ扱いに注意
建築条件付き土地と言っても、本当の注文住宅のように自由に設計できるケースと建売住宅のように多くの制約があるケースの2通りがあることを理解しておくべきです。土地の広告を見ただけでは、それがわかりづらいことも多いので、営業マンによく確認してください。
建売感覚の物件でよいのか、本当の自由設計の家を建てたいのか、家族で考えを整理しておくことが建築条件付き土地を購入するどうか判断するうえで大事です。
土地の売買契約から建築工事請負契約までの期間
前述の「間取り検討に十分な時間をもらえないことがある」で述べたように、土地の売買契約締結から建物の工事請負契約締結までは3カ月間とすることが原則です。これより長い期間とするのは構いませんが、短い期間とすることは基本的にはあってはいけません。
3カ月未満とすることは独占禁止法で定めている抱き合わせ販売の禁止に抵触する恐れがあるとされているからです。土地の買主にとっては間取りを検討する時間を確保できないので、不利でもあります。
なかには、土地の売買契約の締結と同日に工事請負契約も締結しようとする業者がいますが、これはきっぱりと断るべきです。まだ、建売住宅としては販売してはいけない状況(開発申請の関係で建物の売買が出来ない状況)であるにも関わらず、強引に売ってしまおうとする業者がこの手法をとることがありますが、その時点でよくない業者だとわかります。
違法行為をしていることを理解していない営業マンもおり、「当社はいつもこうしているから問題ない」と言って対応を改めない不動産業者もいます。これは、いつも違法行為を繰り返している恐れのある業者ということです。
このような業者や担当者には、充分に注意した方がよいでしょう。できれば、買わない方がよいです。
建築工事費まで仲介手数料の対象にされる?
建築条件付き土地を不動産仲介業者に紹介してもらって購入するときには、その土地の売買について仲介手数料を買主から支払わなければなりません。
しかし、建物の請負代金についてまで仲介手数料を請求する業者がありますので注意してください。
建築条件が付いている土地の売買であって建物の売買ではありませんから、不動産仲介業者は土地分しか仲介手数料は請求できないにもかかわらず、不動産仲介業者によっては、買主が知らないことをいいことに建物分まで求めていることがありますが、もしそのような請求があれば断ってください。知らずに支払ってしまうと、建物の請負代金にもよりますが数十万円の損害になってしまいます。
工事監理や社内検査をしていない?
注文住宅であっても建築会社によっては工事監理や社内検査を適切に行っていないことはよくあることです。建売感覚で取引している現場ではより一層その傾向が強く、取引上のトラブルだけではなく建築上のトラブルも多いです。
施工品質を確認する者が不在で、建築会社が委託している検査機関が部分的に簡易な検査をしているだけということが大半を占めています。それでも「第三者検査をしているから安心だ」と説明していることが多いですから注意してください。
施工品質、安全性を考える上では施主が自ら建築途中のホームインスペクション(住宅検査)を利用する方法が有効です。
建築条件を外せるか
土地探しをしている人にとって、建築条件付き土地として販売されている物件の「建築条件」を外せないかという問題は大事な課題になっています。
その物件が長期間、売れずに残っているときには、交渉次第で条件を外してもらえることもあります。売れない物件を保有し続けることは、不動産会社の財務状況の悪化要因になるため、条件を緩和してでも売りたいということもあるのです。
また、土地価格に数百万円の金額を上乗せして支払うことでも外してもらえることがあります。売主は、建物の請負代金でも利益を得る目的ですから、その分の利益を土地に上乗せすることで応じてもらえることがあるのです。
しかし、ほとんどのケースでは断られます。ダメもとで聞いてみてはいかがでしょうか。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。