配管のホームインスペクション(住宅診断)

新築でも中古住宅でも、購入時のホームインスペクション(住宅診断)を依頼するときに「配管設備(給水管・排水管など)も一緒に確認してもらえるか?」と考える人は多いです。住宅設備のなかでも給排水管に関するトラブルは多いですから、尤もな考えです。

ホームインスペクション(住宅診断)では、診断時点で目視確認できる範囲が調査対象となるため、配管設備の確認範囲には制限がありますが、このあたりのことについて詳しく解説します。また、実際に配管関係のトラブルが発生してしまった時の対応方法も紹介します。

配管設備(給排水管)も大事だからホームインスペクションで見てほしい

ホームインスペクションで検査する配管設備(給排水管)の確認範囲の話の前に、配管の重要性やリスクについて説明しておきます。

住宅の配管設備とは

住宅における配管設備とは、給水管・排水管(雑排水・汚水)といった水道に関するものと、換気用のダクトなどがあります。建物外部には、雨樋もありますね。このなかでも、給水管と排水管のチェックを中心に紹介している記事です。

ちなみに、配管とは、給水管や排水管を施工することを言いますが、給水管や排水管のことを配管と呼んでいることもあります。また、給水管と排水管をまとめて、給排水管と言います。

給排水管の施工不良・著しい劣化のリスク

給排水管の内部は水(上水や雑排水、汚水)が流れているわけですから、新築工事やリフォーム工事の際に施工不良があれば、この水が漏水してしまうリスクが高くなります。また、給排水管が古くなって老朽化してしまうことで、漏水してしまうリスクもあります。

漏水すること自体も問題であるのは当然ですが、床下に配管されていることが多いために、漏水に気づくタイミングが遅れてしまい、気付いた時にはカビや木部の腐朽・腐食、金属部の錆などを引き起こしてしまうことも多いです。

可能な範囲で検査・診断してほしい

アネストでは、漏水後に原因や被害範囲を確認するための調査に伺うことも多いですが、状況が酷い時には床を全面的に張替え、さらに一部の壁も再施工してもらうこともありました。それだけ、給排水管のインスペクションも大事なことだということを理解しておきましょう。

完成後、既存の建物では、配管経路の全てを確認することは不可能ですが、可能な範囲で確認しておきたいものです。

配管設備を検査できる範囲

次に、配管設備をホームインスペクション(住宅診断)で検査できる範囲を紹介します。対象物件が既存の建物であるか、もしくは建築途中であるかによって検査範囲に違いがあることは理解しておきましょう。

新築一戸建て(完成物件)と中古一戸建ての場合

新築一戸建ての完成状態や中古一戸建てのホームインスペクション(住宅診断)では、給排水管のチェックは、主に床下・シンク下部・建物外部の3箇所で行うことができます。

床下での配管チェック

床下の給水管

給排水管ともに床下に配管されていることが多いですが、床下スペースへ潜ることができる住宅プランになっているならば、床下へ潜っていき、可能な範囲で給排水管を確認したいものです。床下点検口から覗いたときに、配管経路の一部を確認できることもありますが、床下へ潜ることで広範囲に確認できる可能性が高まります。

ただし、その配管そのものが障害になって、床下の奥まで進入できないこともあります。

シンク下部での配管チェック

次にシンク下部ですが、キッチンや洗面台のシンクの真下は多くの場合、収納に利用されています。このスペースには、シンクから真下へ排水管が出ており、さらに上水管も確認できることが多いです。確認範囲は限定的ですが、このスペースで多少の漏水を確認することもあるので見ておきたいチェックポイントです。

建物外部での配管チェック

建物外部の配管

そして建物外部です。トイレやキッチンなどの排水管が、階下へ(床下へ)配管されていることもありますが、水平方向に配管して外壁を貫通して外部へ配管することもよくあります。この場合、外部で目視確認することができます。

外部では、雨樋も確認することができます。また、敷地内の排水桝の蓋を容易に開けられる場合は、その内部をチェックすることもできますが、堅すぎて容易に開けられない場合は確認できないこともあります(枡の蓋が開く場合でも確認してくれない業者もあります)。

給排水管は、地中を通って前面の道路などへ配管されていますが、ホームインスペクション(住宅診断)では地中の配管は確認することができません。

既存の完成物件、中古住宅の調査項目は「住宅診断(ホームインスペクション)の具体的な調査項目」で詳しく確認できます。

新築一戸建て(建築途中)の場合

建築中の給排水管のチェック

新築一戸建ての建築途中にホームインスペクションを依頼する場合、完成物件よりも広範囲に給排水管を確認できることがあります。

たとえば、壁内に配管される給排水管を確認できる場合や、床下に潜らなくても床下配管を確認できる場合があります。

しかし、建物プランや建築工事の進め方(工程)によって左右されることですので、建築途中であっても検査回数などの条件次第では確認できないこともあります。

新築・中古マンションの場合

マンションでは、新築であっても完成時しか買主側がチェックするタイミングがないこともあり、新築・中古マンションともに配管設備の確認箇所は非常に限定的で、ほとんど確認できないと言っても過言ではありません。

シンク下部では、一戸建てと同じようにチェックすることができる一方で、床下の配管経路をチェックできることは非常に稀です。仮にチェックできたとしても、点検口から覗いて目視できる範囲だけにとどまるでしょう。

入居してからの再点検も大事。

ホームインスペクションにおける給排水管のチェックは、配管の内部状況を確認するわけではなく、配管の外部状況を目視確認したり、触診(ぐらつきの確認)したりするものです。管の固定金物も一緒に確認しますが、これも外部状況です。

そして、目視では発見できないような微細な隙間やひび割れから漏水することもありうるため、ホームインスペクションで異常がなかったとしても、入居してしばらく水道を使ってから再点検することを忘れないでください。

住宅配管設備でトラブルが発生したときの対応方法

給排水管から漏水というトラブルが発生してしまった場合の対応方法を紹介します。漏水は早期発見・早期対処を心掛けたいですね。

床下漏水

施工業者へ連絡

築年数が浅い場合、新築工事に原因があった可能性が考えられます。また、リフォーム工事後に発生したのであればリフォームに原因があった可能性が考えらえます。こういう場合は、すぐに施工業者へ連絡を入れて現地確認を求めてください。

新築後の経過年数が長い場合でも、施工業者に確認を求めるのは1つの良い対応策です。保証の対象から外れている可能性が高くても、一度相談してみるとよいでしょう。

設備業者に診てもらう

その住宅を建築した施工業者は、設備のことについては設備業者を同行して現地確認することも多いです。設備業者が不在のままで現地確認している場合、設備業者の同行を依頼してもよいでしょう。やはり、専門分野の人に診てもらう方がより確かな情報を得やすいからです。

本当に配管設備(給排水管)からの漏水か

床下で水が溜まっている状況を発見した場合、そのすべてが配管設備からの漏水とは限りません。雨水の浸水、地下水(湧き水)、著しい結露といったこともありうるのです。まずは、原因が何であるか確認するところから始めましょう。

被害範囲の確認が大事

漏水の原因を確認したところで、忘れてはならないことがあります。それが、被害範囲・被害状況の確認です。特に床下での漏水の場合、カビや木部の腐朽・腐食、金属部の錆などの二次被害が起こることがあるので、この確認は必須です。

実際に床下漏水が起こっているなら「住宅の水漏れへの対応方法と漏水調査のポイント」や「床下の水漏れの原因や被害と調査方法」も参考にしてください。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。
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住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。