建売住宅の売主である不動産会社や注文建築を請け負うハウスメーカー、工務店などは、買主や施主に対して、「建築確認の検査が入っているので施工は安心」「瑕疵保険の住宅検査が入るので大丈夫」だと説明することが多いです。
買主が自分で第三者に住宅検査を依頼しようとすると、「当社でも第三者の検査機関を入れているから意味がない」と説明することも非常に多いです。ここで不動産会社やハウスメーカー、工務店が話す主な第三者の検査機関としては、日本住宅保証検査機構(JIO、ジオ)や住宅保証機構、ハウスプラス住宅保証などがあります。
不動産会社、ハウスメーカーの言う第三者検査機関とは?
これらが本当に第三者と言えるかどうかについては、以前から業界内でも異論がありますが、それぞれの出資者(株主)を確認すれば、状況が見えてきます(主な検査機関のみをあげています)。
※2016年4月現在、各社のHPより
これを見ればわかりやすいですが、ハウスメーカーが出資した検査機関がハウスメーカーの建てる住宅を検査して、第三者と称している事実があります。また、住宅設備メーカーやガス会社にとって重要な取引先がハウスメーカーや不動産会社であることは言うまでもありません。
住宅に関わる建築、不動産関係の企業が、自分たちの建てる住宅を検査するようなシステムになっているのが現実であり、このような関係のなかで行われる住宅検査が本当に第三者の検査と言えるのでしょうか。本当に安心できるものだと言えるのでしょうか。
第三者と言いつつも住宅供給者側の住宅検査機関とも言える仕組みになっているのがわかります。
住宅供給者側の住宅検査機関と不動産会社、ハウスメーカーの歪んだ関係
住宅供給者側の住宅検査機関は、資本関係があるとはいえ、個々に経営されている企業ですから、売上をあげ利益を出していかなければなりません。そのためには、多くの仕事が必要です。そして、その仕事を発注するのは、不動産会社やハウスメーカー、工務店です。つまり、これらの住宅検査機関にとってのお客様は消費者ではなく、不動産会社やハウスメーカーなのです。
発注者 : 不動産会社、ハウスメーカー、工務店
受注者 : 住宅検査機関
住宅検査機関は同業他社との間で激しい受注競争があります。様々な努力をして受注しているのは事実ですが、発注者(おお客様)である不動産会社やハウスメーカー、工務店から仕事をもらう立場であることから、第三者性に疑問が生じます。継続的に発注者から仕事をもらいたいため、発注者に対して弱い立場になることもあります。
次の「建築確認や瑕疵保険の住宅検査で安心できるか?(2)」では、実際に住宅供給者側の住宅検査機関の検査を実施した住宅で施工ミスなどが見つかっているのかどうかお伝えします。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。