新築住宅を建てる過程には、いろいろな検査や保険の制度があります。いくつか代表的なものを並べてみます。
- 建築確認制度:義務(一部地域を除く)
- 住宅瑕疵担保責任保険:保険加入か供託のいずれかを事業者が選択
- 住宅性能表示制度:任意
- フラット35:この住宅ローンを利用する為の基準をクリアしているか検査(任意)
不動産会社やハウスメーカーなどの営業担当者が「これらの検査や保険があるから安心です」と言うけれど、本当に安心できるのか?とアネストへ相談する人は少なくありません。
本当に安心できるのでしょうか?
アネストでは、これまでに大変多くの建物の住宅検査(ホームインスペクション)をしてきましたので、その経験をもとにこれら検査の概要と実態について簡単に解説しておきます。参考にしてみてください。
建築確認制度
建築確認制度は、建築基準法で定められた義務であり、建築物を建てるときに遵守する必要があるものです。もちろん、住宅も対象となります。
この制度は、かなり昔からあるものですが、今も昔も全国で欠陥住宅問題が絶えないことからもわかるとおり、この制度があるからといって安心できないことは既に証明されています。
この制度では、その建物の条件等にもよりますが、建築途中に行う中間検査と完成後に行う完了検査があり、それぞれに合格すれば、中間検査合格証や完了検査済証が交付されます。
しかし、これらの検査は、非常に短時間で部分的に行う検査であるため、この検査で住宅の欠陥や施工不具合の問題をなくすのはもともと無理があります。
たとえば、アネストが1.5時間程度かけて行う検査を僅か10~20分ほどで終えてしまうものですから、これに期待しすぎないことです。
住宅瑕疵担保責任保険
次に、新築住宅の住宅瑕疵担保責任保険です。これはよく瑕疵保険と呼んでいることも多いですが、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)により、2009年10月からこの瑕疵保険への加入か法務局への供託が義務化されたものです。
しかし、これはあくまで保険であり、構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分の瑕疵が生じた後に、補修費用等を保険金で賄うという問題解決方法の1つを示しているものです。
保険をかけるために現場検査を行うものの、その検査内容は簡易的なもので、欠陥住宅や不具合を未然に防ぐことができるような検査制度というわけではありません。
瑕疵保険ではなく、法務局への供託を選択しているハウスメーカー等の住宅である場合、この簡易な検査すらも実施されていません(自社もしくは他社の別の検査を利用することはある)。
住宅性能表示制度
そして、住宅性能表示制度です。こちらは、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づくものです。
構造耐力、省エネルギー性、遮音性などの性能の表示に関することが主な目的で、そのなかで現場検査を行います。
この検査内容も簡易的なもので、欠陥住宅や不具合を未然に防ぐことが十分にできる制度ではありません。
一定のルールに基づいて住宅の性能を表示することは、施主や買主にとって家選びをする上でよい参考になることが期待された制度なのですが、その表示ルールなどを理解している営業担当者は不足していますし、その結果として消費者への理解も進まず、上手く機能していないところがあります。
フラット35の検査
最後に、フラット35の検査は、フラット35という住宅ローンを利用する為の住宅金融支援機構が定めた技術基準を満たしているかどうかを確認する検査です。
このフラット35の現場検査によって十分に欠陥工事や施工不具合を無くせるものではありません。
買主側のホームインスペクションの重要性
建築確認制度に基づいていて、住宅瑕疵担保責任保険に加入していて、住宅性能表示制度も利用していて、さらにはフラットの仕様にも適合している住宅であっても、施工不具合が見つかることはよくあることです。
いずれの制度に基づく検査も、住宅の新築工事における欠陥工事、施工不具合を無くすことが目的というわけではないこともあり、工事の施工精度の検査という意味では、どれも過信できません。
営業担当者が「これらの検査や保険があるから安心です」と言うのは、無知で言っていることもあれば、安心できないとわかっていて言っていることもあるようです。
それぞれの住宅検査(診断)についての比較表はこちらです。
以上のことより、新築住宅の施工品質をきちんと確認するためには、買主側でホームインスペクションを依頼して、検査してもらうことを考える方がよいでしょう。
これから建築する住宅ならば、基礎から完成までの間に検査してもらい、完成物件を購入するのであれば、契約前か引渡し前のタイミングでホームインスペクションしてもらうとよいでしょう。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。