新築工事の遅延とトラブル

2023年になってもう3ヶ月。
早いものですね。

今年に入ってからは新型コロナも落ち着いてきて、マスクを外して生活する人も随分と増えてきました。
元どおりの生活はもうすぐそこでしょうか。

世界情勢の影響を受けて、一時は住宅建築に使われる部材や住設機器が入手困難・納期遅れが起こっていましたが、そういった情勢とは関係なく、この3月は工事遅延のトラブルが全国各地で頻発しています。

アネストでは、全国の広域で、新築住宅の引き渡し前チェック・立会いを含むホームインスペクション(住宅診断)をしていますので、工事遅延トラブルは肌で感じるものです。

毎年、確実に繰り返されている3月の工事遅延問題ですが、この問題には、住宅購入者(注文建築なら施主)にとって、以下のリスクがあります。

  • 引渡し日・入居日も遅れる
  • 突貫工事で施工不具合が増える
  • 未完成住宅の強引な引渡しと残代金の請求
  • 強引な引渡しによる二次被害(キチンと補修してもらえない)

上の項目を見るだけで、何となく意味が理解できることと、理解しづらいことがありそうですのでもう少し詳しく書いておきます。

引渡し日・入居日も遅れる

工事が遅れるということは、完成が遅れるということですから、引渡しも遅れるということに繋がっていきます。

引渡しとは、本来ならば、完成した住宅を買主(注文建築なら施主)へ鍵を渡して自由に使ってもらえるようにすることであり、同時に所有権を移転したり、残代金を精算したりします。

完成が遅れてしまえば、本来の引き渡しができないため、引渡しも遅延してしまうわけですね。もし、引渡し日の直後に引越しを予定していたとすれば、引越し(入居)も遅らせることになります。

引越し業者を手配していたのに、工事遅延により引越し日の再調整は大変です。特に、引っ越し需要が多い春休みとなれば、再調整は難しいかもしれません。引越し業界も人手不足ですから、困りますね。

大手ハウスメーカーでは、完成予定日と引渡し予定日の間に充分な期間を設けていることもあり、その場合はある程度の工事遅延でも問題なく、対応できますが、そのようなスケジュールを組んでいない住宅が多いので注意したいところです。

突貫工事で施工不具合が増える

次に突貫工事の問題です。

突貫工事というと大げさに聞こえるかもしれませんが、現場によっては予定していた工程から大幅に遅れてしまい、本当に突貫工事になってしまっていることもあります。

この言葉のイメージから、工事が雑になりがちだろうと想像できると思いますが、少し雑という程度ではない現場もあります。特にこの3月に多いです。急ぎすぎたあまり、施工不具合が多くなる時期なので、買主は引渡し前にしっかりチェックしてください。

未完成住宅の強引な引渡しと残代金の請求

本当に理不尽な話だと思うことの1つが、工事遅延で未完成であるにもかかわらず、買主のリスク・デメリットを考慮せずに、強引に引渡してしまおうとする不動産会社、工務店が少なくないということです。

前述したように、本来ならば、完成した住宅を引き渡すべきです。当たり前の基本的なことです。

しかし、未完成の住宅を買主へ強引に引渡して、残代金の請求を迫る事例が後を絶ちません。

買主側にも少し迷ってしまう問題が生じていることがあります。それは、現住居の退去期日と引越し業者の手配の問題です。早く引越ししないと、現住居の退去期日に間に合わないことや、引越し業者の手配の関係で引越し日の変更が難しいことがあります。

強引な引渡しによる二次被害(キチンと補修してもらえない)

最後に、強引な引渡しによる二次被害の問題についてです。

未完成物件を強引に引渡してしまい、その後も残工事を続ける現場では、やはり工事を急いでいますので、雑な施工が増えがちです。施工不具合が多いということです。

当然、そういった施工不具合は補修してもらうべきなのですが、引渡し時に残代金を全て支払ってしまっていると、この対応が悪くなる業者がいるのです。

口頭や書面では、引渡し後もきちんと対応すると住宅メーカー等が約束するのですが、守ってくれず困っている人が必ずおり、ホームインスペクション(住宅診断)のお問合せ時に相談を受けています。

さらには、ホームインスペクションで見つかった施工不具合によっては、一度、家財道具の一部を出さないといけなかった事例もありました。

これは、強引な引渡しを推し進めたことの二次被害と言えるでしょう。

毎年のように繰り返される住宅業界の問題です。何とかならないものでしょうか。「新築住宅の着工後に工事が遅延して引渡し日に間に合わないときの注意点」も参考にご覧ください。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。
住宅
ホームインスペクション

住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。