住宅を建築する途中で検査する大事なチェックポイントは多く、何も対策をとっていなければ、完成後に後悔することもあります。多くの建築中の住宅検査をしてきたアネストの実績から、大事なポイントを解説していきますので、これから建築する方や既に工事が始まっている方も参考にしてください。
以前に、基礎配筋工事のポイントについては「基礎配筋検査の立会いのチェックポイント」で解説しましたが、今回は構造金物や柱、梁、筋交いなどを対象とした構造躯体の検査について解説します(木造軸組工法を対象とした記事です)。
構造躯体の検査のタイミング
構造躯体を検査するタイミングは、基礎工事の後に土台を設置して上棟まで工事を進めた後です。ただし、上棟してすぐに検査してしまっては、少しタイミング早すぎることが多く、上棟日より数日後となることが一般的です(現場によって工事の進捗速度が異なるため、施工者に確認が必要です)。
また、上棟より前の工程の土台を設置した状態で行う住宅検査も大事です。
土台の設置後
この記事で紹介するメーンの検査は上棟後の構造躯体の検査ですが、その前の工程で土台についても触れておきます。土台も構造体の一部である大事な部位です。
上棟後の検査の時点では、1階の床を施工していることが多いため、その時点では土台の詳細(特に床下側)を確認できないため、前もって検査しておく必要があるのです。
上棟(棟上げ)と構造金物
上棟とは、棟上げとも呼ばれていますが、屋根の最上部にある棟木を取り付けることです。たまに屋根工事を終えるところまでだと誤解されている人がいますが、それは正確ではありません。屋根工事は、上棟した後も野地板の施工やルーフィング(屋根の防水シート)を施工するところまで含めて言うことが一般的です。
一般的には、この上棟の時点では、まだ柱や梁、筋交いなどに構造金物が取り付けられておらず、この時点で検査するには早すぎる理由がここにあります。大事な構造金物をチェックできないからですね。
構造金物とは、木材の接合等の補強等のために用いる金物で、接合金物とも呼ばれており、使用する箇所によって金物の種類の使い分けがあります。
構造金物と屋根の下葺き材(ルーフィング)は一緒に検査できることが多い
構造金物の取り付け工事と概ね並行して、もしくはその前に、屋根の野地板の施工や下葺き材(ルーフィング)を施工することが多いです。つまり、構造金物を検査するタイミングでは、ルーフィングの施工状況を一緒にチェックできることが多いということです。
このルーフィングは、屋根の防水において非常に大事な役割をしているものですから、可能であれば一緒にチェックしておきたいものです。
構造躯体(構造金物・柱・梁・筋交い)のチェックポイント一覧
次に、構造躯体における具体的なチェックポイントを紹介します。
土台のチェックポイント
土台のチェックポイントは以下のとおりです。
- 基礎との取り合い(ずれ・レベル)
- 土台継手とナットのかかり方、締付け力
- 仕口位置
- 継手位置
- 接合方法
- 接合状態
- 金物の状態
- 金物の認定マーク
- 防腐措置
- 防蟻措置(塗布回数・塗布範囲)
土台には工場で記号を付けられているので、この記号を確認しながらプレカット図と照合していきます。工場で加工されているとはいえ、現場で検査をしてみると材料の欠損が見つかることもありますし、アンカーボルト金物が適切な位置にないときや大きく傾いて取付られているときもあるので、きちんと見ておきたいところです。
床組のチェックポイント
床組のチェックポイントは以下のとおりです。
- 位置
- 高さ
- 床束の取付け
- 束石の取付け
- 根がらみの取付け
- 仕口位置
- 継手位置
- 接合方法
- 接合状態
- 金物の状態
- 火打ち
- 構造用合板による
- 剛な床組
- 防腐措置
- 防蟻措置(塗布回数)
- 防蟻措置(塗布範囲)
図面通りの仕様で施工されていることや、金物の設置状態などを検査していきます。根太を用いない工法も多いですが、その場合は床の構造用合板の厚さの確認もする必要があります。
柱のチェックポイント
柱のチェックポイントは以下のとおりです。
- 通し柱の位置
- 通し柱の垂直度
- 隅柱の補強
- 土台との接合(割れ)
- 土台との接合(隙間)
- 土台との接合(ねじれ)
- 横架材との接合(割れ)
- 横架材との接合(隙間)
- 横架材との接合(ねじれ)
- 金物の状態
- 欠込み部の補強
- 防腐措置
- 防蟻措置(塗布回数)
- 防蟻措置(塗布範囲)
柱やこの後に出てくる梁等の横架材、筋交いは図面通りであるか確認しつつ、金物の設置状態を検査することが重要です。誤った金物が取付られていることや、緩みがあること、付け忘れていることなどが検査で見つかることがあります。
大事な構造躯体でこういった施工不具合があると不安になりますね。
横架材:梁・桁・胴差のチェックポイント
梁・桁・胴差のチェックポイントは以下のとおりです。
- 構造耐力上支障のある欠込み
- 仕口位置
- 継手位置
- 接合方法
- 接合状態
- 金物の状態
図面と照合しながら検査するのは同じです。たまに、梁の割れについて相談を受けることがありますが、さほど問題ないものも多いです(材料の状態によるので一概には言えません)。気になるところがあれば、検査時に検査担当者へ相談するとよいでしょう。
筋交いのチェックポイント
筋交いのチェックポイントは以下のとおりです。
- 端部接合方法
- 金物の取付け
- 両端の柱の金物による固定
- 使用箇所
- 本数
- 寸法
筋交いの確認をしていて見つかる施工不具合の事例として、筋交いの設置方向が逆になっていることや、ダブル(交差するようにクロスに施工すること)の箇所がシングル(方掛け)になっていることがあります。図面と丁寧に照合して確認すれば起こらない施工ミスですが、実際に起こっていることですので、施主や検査会社としては確認しておくべきところです。
耐力面材のチェックポイント
耐力面材のチェックポイントは以下のとおりです。
- 筋交いに代わる合板の設置
- 筋交いに代わる合板の釘の種類
- 筋交いに代わる合板の釘ピッチ
筋交いの代わりに耐力面材を用いることは多いです。これも図面と照合し、設置位置や仕様に間違いないか確認します。
小屋組のチェックポイント
小屋組のチェックポイントは以下のとおりです。
- けた行筋交いの設置状態
- けた行筋交いの振れ止め
- 火打ちの設置状態
- 垂木の緊結方法
- 垂木の状態
- 仕口位置
- 継手位置
- 接合方法
- 接合状態
- 金物の状態
- 野地板の状態
図面と照合しながら検査するのは同じです。天井材を施工する前であれば、小屋組みをよく確認できるので、一緒に検査してもらうとよいでしょう。
屋根のチェックポイント
屋根のチェックポイントは以下のとおりです。
- 下葺き材の重ね合わせ
- 下葺き材の立上げ寸法
- 板金による捨て谷、本谷、雨押さえの状態
- 浅木の取付け状態
- 緊結状態
下葺き材とは基本的にルーフィングのことで、防水という大事な役割があります。構造躯体の検査の際に、足場に残ると確認できることが多いです。大雨による影響を抑えるため、早めにルーフィングの上から屋根材(サイディングなど)を施工していくことがあるため、その前の段階で検査できれば一緒に確認できるでしょう。
構造躯体(構造金物・柱・梁・筋交い)の検査を依頼するとき
構造躯体の検査は、大きく分けて、土台設置状態と柱・梁・筋交い等の構造金物の設置状態の2回の検査タイミングがあります。
土台設置状態の検査は、「土台設置後、1階床材の施工前」に行ってもらいましょう。柱・梁・筋交い等の構造金物の設置状態の検査は、「構造金物の取付後、外壁の防水シートや断熱材の施工前」に行ってもらいましょう。
アネストの住宅あんしん工程検査(建築中の住宅検査)では、そのタイミングで調整することが一般的です。もちろん、個々の現場の状況や依頼者の希望もあるので、それぞれの状況に応じて調整することもあります。
建築会社から中間立会いを提案されることがあります。そういうときは「施工中の中間立会いで行うホームインスペクション(住宅検査)と依頼時の注意点」も参考にしてください。
執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。