中古住宅を購入するならば、不動産ポータルサイトなどで物件情報を探し、気になる物件があれば問合せするという人が多いですね。見学に行ったときに、初めて不動産会社の営業担当と会うという人が多いのではないでしょうか。
中古物件を探すときには、不動産業界の慣習や問題点を理解しておいた方が、機会損失をせずに済むことも多いですから、ここで業界知識や物件の探し方を学んでおきましょう。
中古住宅売買の不動産業界の問題点
中古住宅の探し方のコラムですが、ここのタイトルは「中古住宅売買の不動産業界の問題点」です。探し方をお話しする前に、抑えておきたい不動産業界のポイントがありますから、少しお付き合いください。
歩合給制度と営業成績
中古住宅を購入するのであれば、多くのケースにおいて仲介業者を介して物件を購入することになります。これは一般個人の売主が直接買主を探すのは困難ですし、買主も売主を直接探すのは困難ですから当然ですね。
その仲介業者の営業マンの多くは、歩合給という給与制度で働いています。売主や買主から頂く仲介手数料のうちの何%かが給与の一部となるのです。何%であるかは、会社と営業マンの雇用契約によります。
具体的な数値で見てみましょう。
売買価格3,000万円で買主側の仲介をして契約した場合、買主から会社へは96万円(税抜き)の仲介手数料が入ります。これが会社の売上です。この会社と営業マンの間では、仲介手数料の20%を歩合給として支払う雇用契約を結んでいる場合、この仲介による歩合給は19.2万円です。
基本給が20万円であった場合、この月の給与は歩合給と合わせて39.2万円となります。同じ価格の仲介が2件あれば、58.4万円が給与となります。
営業マンが必死になるのは当然の仕組みですよね。ちなみに、基本給や歩合の割合は会社などによっていろいろあります。
物件の囲い込み
次に知っておくべき不動産業界の知識としては、物件の囲い込みの問題があります。囲い込みとだけ聞いてもわかりづらいですね。少し我慢して以下を読んでみてください。
中古住宅の売主は少しでも有利な条件で自宅を売却するために、本来ならばできるだけ多くの不動産会社(仲介業者)に自宅の販売(営業)を頑張ってほしいものです。その方が売る機会が増えますから、売主の利益につながります。
買主にとっても、全ての不動産会社に接触するのは不可能ですから、多くの不動産会社が他の会社と同じだけの物件情報を持っている方が便利です。
上に述べたような売主や買主にとって便利な環境を作るため、不動産業界にはレインズという物件情報を不動産会社間で共有するための素晴らしいシステムがあるのですが、残念ながら適切に機能していません。機能しない理由は不動産会社の自己都合にあります。
売主から売却を依頼された不動産会社は、その物件が売れれば売主から仲介手数料をもらうことができます。そして、その物件をその不動産会社が買主を見つけて売れば、買主からも仲介手数料をもらうことができます。つまり、売主と買主の双方を同じ不動産会社が仲介すれば、1つの物件の売買で売上が倍になるのです。営業マンにしてみれば、歩合給が倍になるのです。
不動産会社としても営業マンとしても、売主と買主の双方からの仲介手数料という売り上げを狙いたくなるのも当然の状況だと言えるのではないでしょうか。
不動産会社は売主から売却を依頼されると、他社と物件情報を共有すると他社が売ってしまう可能性があり、それは自分たちに不利になることなので、物件情報を共有せずに隠す(=囲い込む)ことがよくあるのです。
中古住宅の物件を探す方法
物件の囲い込みについて理解できれば、中古住宅を探すときに注意すべきことが何か少し見えてきた人もいるでしょう。それをここで説明しておきます。
不動産業者を限定しない
中古物件を探し始めて最初に出会った不動産会社の担当者が親切で信頼できる人だと感じたとき、その人に物件探しを委ねてしまう人がいます。
たとえば、ある営業マンのAさんが「物件情報を業界内で共有することになっているので、私に任せてもらえれば他に物件探しを依頼しなくても大丈夫です」と言います。
買主は、信頼できそうな人だからと考えて、その人から紹介される物件を待ってしまうことがあるのです。そして、しばらくしてから「他社の広告で見た条件の良さそうな物件を紹介してくれないなぁ」と気づきます。担当のAさんにその物件について問い合わせると、「もう売れた」と言いますが、本当かなぁと疑念が残ります。
このケースでのAさんは本当に信頼に値する人とは言えません。なぜなら、業界人ならば物件情報が適切に共有されているわけではないことを知っているからです。他社でないと紹介が困難な物件があることももちろん知っています。
騙そうとまでは考えていないかもしれませんが、それでも事実と異なることを言っているわけです。
物件の囲い込みがよくある業界事情を考えて、物件を探すときは特定の会社に任せてしまうのではなく、他の会社から買うことも常に考えておかなければならないのです。不動産会社を限定するのは危険です。
物件情報はマメにチェック
不動産会社を限定しないならば、どのようにして物件探しをするべきなのでしょうか。それは、不動産ポータルサイトやポスティングなどの広告をマメにチェックしておくということです。不動産を探すときは、会社から入るのではなく、物件から入った方がよい結果を生み出しやすいです。
また、親切だと感じた営業マンも上に挙げた例のように実はそうでもないことが多いですから、買主がそこにこだわり続ける必要もないわけです。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。