購入するかどうか検討中の中古住宅がリフォーム済み物件というケースは多いですが、リフォームと言いましてもいろいろな工事があるものです。
壁や天井の内装材(クロス)の張替えだけをしている簡易的なリフォームもあれば、キッチンやトイレなどの水周り設備の交換を伴うもの、さらには間取り変更したものもあります。
リフォーム工事の内容や規模によっては、住宅購入者(買主)が慎重に注意すべきことも増え、且つ専門的な確認を要することもあります。今回は、間取り変更をしている中古住宅を購入しようとするときに、買主が注意すべき点を解説します。
間取り変更で建物構造に悪影響がないか確認すべき
間取り変更で既存の壁や柱、筋交いを無くしたり、移動させたりしている場合、その建物の構造耐力に決して小さくない影響を与えていることがあります。これに該当する中古住宅ならば、少し用心したいものです。
既存の壁・柱・筋交いの撤去や移動をしているかチェックする
間取り変更と言っても、単純に和室を洋室に変更しただけで、壁や柱を変更していない場合は、それほど大きな心配はありません。注意したいのは、既存の壁や柱を撤去したり、移動させたりしている住宅です。
壁や柱、筋交いは、上からの重さを支えたり、建物のバランスを整えたりする上で大変重要な役割を担っていることが多く、耐震性に大事な影響がある柱や筋交いで構成された壁を耐力壁と言いますが、この耐力壁は安易に変更を加えてよいものではありません。
買主は、売主や不動産仲介業者より、間取り変更などの工事に伴い、既存の壁や柱の撤去・移動の有無をヒアリングしてください。回答が曖昧だと感じた場合、できれば、新築当時の設計図の提出を求めて、現状と比較して確認するとよいでしょう。
耐震性の検討および取るべき対策を取ったかチェックする
既存の壁や柱の撤去・移動するためには、きちんと構造を理解した設計者による検討が必要で、構造耐力・耐震性に影響がある場合は必要な対策もとらなければなりません。
そこで、もし、売主からのヒアリング等により、壁や柱の撤去・移動があったと確認された場合は、設計者による検討や対策をとっていたか確認し、その確認資料の提出を求めてください。こういった確認等が無かったという回答であれば、その時点で危険な建物である可能性が高いと判断し、購入の見直しを考えるべきです。
図面・耐震診断の報告書・耐震改修計画の有無をチェックする
耐震性の検討等をきちんとしたか確認するための資料としては、以下のものが挙げられます。
- 新築当時の設計図(平面詳細図などで柱や筋交いの位置・仕様を確認できるもの)
- 耐震診断の診断結果(報告書)
- 耐震改修・補強計画の図面・指示書等
- 改修工事の写真
ただし、これらの資料を提出してもらえたとしても、自分自身で判断するのは困難ですし、不動産仲介業者の営業マンでも適切に判断できる人はほとんどおりません。できれば、建築士に相談してみましょう。
改修・補強工事をしている場合、その工事が適切に実行されたか確認するのは、難しいことです。壁内のことなので、現地で目視確認はできません。
そこで改修工事の際の写真があれば(撮影箇所も明確なもの)参考になりうるのですが、そこまで残されていないことが多いため、どうしても確認できることが限定されてしまう点が間取り変更した中古住宅を購入するときのデメリットです。
建築基準法の建築確認申請の必要性と申請状況の確認
構造耐力に影響するような改築工事をする場合、建築確認申請が必要となる場合もあります(全ての改築で必要となるわけではありませんので、ご注意ください)。
しかし、建築確認申請が必要な工事であるにもかかわらず、必要な手続きをとらず違法建築になっている住宅は少なくありません。その中古住宅で行われた間取り変更等の工事が、建築確認申請が必要なものかどうか、必要なら申請手続きをしたかどうか、確認しましょう。
これは、自治体の建築指導課などで確認できるでしょう。
水周り設備の移動と増設に要注意
間取り変更に伴い、キッチン・トイレ・浴室などの水周り設備の位置を移動させたり、増設したりした場合も、注意が必要です。
配管の勾配不足がないか
水周り設備には配管設備が付きものですが、キッチン・トイレ・浴室などの位置を移動したときに、配管の距離が長くて適切な勾配をとりづらいときや、連続した配管の急な曲がり部分が生じているときがあります(特に排水管に注意です)。
こういったケースでは、排水がスムーズにいかない症状がでて、詰まりの要因になることがあるので、注意が必要です。
既存配管の状態がよければ、それを活かすリフォームはよいことですが、既存配管との接続の関係で上の問題が生じることもあります。
基礎や土台等の床組みの破壊
水周り設備の位置変更や増設工事によって、しばしば確認される問題の1つが、配管するために行われてしまう基礎コンクリートや土台等の床組みの一部破壊です。軽微な欠損ということもありますが、構造耐力に小さくない影響を与える酷い施工をしていることが見つかることもあります。
基礎を破壊したときに、コンクリート内部の鉄筋を切断してしまっていることもあれば、土台に無理矢理に給排水管を通すために大きな欠損を生じさせていることがあり、ホームインスペクション(住宅診断)で調査した時に驚くことがあります。
こういった問題は、床下で確認されるため、床下へ進入可能な住宅であれば、ホームインスペクションを依頼して床下まで確認してもらうことをお勧めします。
もちろん一般的な中古住宅の注意点にも注意しよう
間取り変更した中古住宅の注意点を紹介してきましたが、間取り変更した住宅においても、間取り変更に関係なく、一般的な中古住宅における注意点についても購入前に確認しておきましょう。
建物全体の劣化状態の把握、立地・環境、取引の進め方のこともしっかり確認した上で購入判断し、契約前には売買契約書も確認してください。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。