新築住宅の売買契約や工事請負契約をしていた人のもとへ、売主や販売会社、建築会社から内覧会の案内状が届き、それを見てから内覧会について調べてみて急に不安になったという人から相談を受けたことが何度もあります。
「内覧会のことは知らなかった」
「他人のブログを読んでみたところ、内覧会を終えてがっかりしたと書かれていた」
「ただ採寸すればよいだけだと思っていた」
これまでにこの類の話を何度も聞いてきました。住宅購入が決まった時点では、それだけ引渡し前の内覧会の重要性を認識していない人が多いのです。
今回のコラムでは、新築一戸建て・新築分譲マンションのいずれかを購入した人を対象に、内覧会に臨む前に知っておくべき基礎知識や当日までの流れ、注意点などを解説します。また、内覧会で実際に確認すべきチェックポイントや専門家の内覧会同行サービスで見つかった指摘事例を紹介します。
ここで紹介していることを参考にして、内覧会の実施後にがっかりしたり、後悔したりしないようにここで学んでおきましょう。
内覧会に専門家の同行を考えている人は、「建築士の内覧会同行・立会いサービス(新築一戸建て・マンション)」も参考に読んでおきましょう。
新築住宅の内覧会の基礎知識
最初に、内覧会とはどういうものか、何をする場なのか、そしてどのような流れで進んでいくものか説明します。内覧会のイロハを知っておかないと注意すべきことや対策を理解することも難しいですからね。
内覧会とは?
内覧会の読み方は、「ないらんかい」です。
新築住宅の内覧会とは、購入した住宅が完成したときに、「契約通りに建てられているか」「施工ミス・不具合がないか」という2点について確認することと、住宅に付属する設備機器について使用方法や取扱い上の注意点の説明を受けることが主な目的です。
内覧会の目的・やるべきこと
- 契約通りに建てられているか買主がチェックする
- 施工ミス・不具合がないか買主がチェックする
- 売主から住宅設備機器の使用方法等の説明を受ける
前者の「契約通りに建てられているか」「施工ミス・不具合がないか」という2点の確認は非常に重要なものです。この内覧会で契約との相違点や施工ミス・不具合について指摘し、是正・補修してもらっておかないと、気付かずに引渡しを受けた後では対応してもらえないこともあるので要注意です。
内覧会は、買主にとっては引渡し前に実施する完成検査という意味が強いのです。売主や建築業者によっては、内覧会ではなく、買主の完成検査や施主による竣工検査などと呼んでいることもありますが、本来はこちらの言葉の方が適しているでしょう。
注文住宅の場合、建築業者や設計者が同業他社や一般ユーザー向けに行う内覧会というものがあります。これは、新規顧客獲得などを目的とした販売促進活動であり、このコラムで取り上げている内覧会とは別の意味ですから混同しないでください。
内覧会が大事な理由
前述したように、内覧会には、「契約通りに建てられているか」「施工ミス・不具合がないか」という目的があります。引き渡し前のタイミングで、この2点について問題があれば、売主や建築会社に指摘して是正対応してもらう必要あります。
もし、このタイミングで指摘できずに引き渡しおよび残金決済をしてしまい、入居した後に問題に気づいても、売主側の対応が悪くなることもあります。いつまでも、対応してもらえずに時間が経過してストレスを感じることや、不安を抱くことがあるのです。
引き渡し前であれば、残金決済する前ですから、売主側も対応が早いことが多く、買主としても交渉しやすいです。それだけに、内覧会は大事なイベントだと言えます。
内覧会を行うメリット
内覧会を行うメリットは、施工ミスなどをチャックして売主側に是正対応を求めることができるという点と、住宅設備機器などの使用方法の説明や取り扱い上の注意点を聞くことができる点、そして、家具やカーテンの選択・設置のために室内を採寸できるという点にあります。
はじめてマイホームの内部をゆっくり見られる機会だけに、ワクワクする気持ちが大きいですが、これらのメリットをしっかり享受できるように目的を達成できるよう冷静に当日を迎えるようにしてください。
戸建てもマンションも内覧会がある
新築住宅の内覧会は、一戸建てもマンションも両方が対象となります。一戸建てであってもマンションであっても、施工状態などの確認が大事であることにかわりありませんので当然ですね。
また、一戸建ての中でも、建売住宅と注文住宅の両方が対象となります。一戸建ては、建売でも注文建築でも内覧会を行うものです。建売だから内覧会を実施しないなどということは、本来ならありえないはずです。
アパート一棟を建築した場合でも内覧会が行われます。ただし、この場合は、完成検査や施主検査といった別の言葉で呼んでいることの方が多いです。
分譲マンションでは、完成時期が近づくと売主や販売会社から買主に対して内覧会の案内状を一斉送付します。注文建築や建売住宅では、案内状を送付することはあまりなく、担当者から電話やメールで内覧会実施日について日程調整の連絡があることが多いです。
内覧会当日を迎えるまでの流れ
住宅を購入してから(契約してから)内覧会の当日を迎えるまでの流れについて理解しておきましょう。
- 売買契約を締結(または工事請負契約を締結)
- 売主や建築業者から買主や施主に内覧会の日程に関して連絡が入る
- 内覧会の日程が決定
- 内覧会の立会い・同行業者に依頼する
- 建物が完成
- 内覧会を実施
以上が、契約後、内覧会の当日を迎えるまでの基本的な流れです。
「4.内覧会の立会い・同行業者に依頼する」は任意ですから、必要ない人は無視してください。また、契約した時点で建物が完成しているならば、「5.建物が完成」はないですね。
同行業者へ依頼を検討するなら、一戸建ては「内覧会立会い・同行(竣工検査・完成検査)」、マンションは「内覧会立会い・同行(マンション)」をご覧ください。
既に契約が済んでいて建物の完成日が近いはずなのに、まだ内覧会の日程について連絡がないならば、あなたから積極的に聞いてみるとよいでしょう。建売住宅の購入に際しては、直前まで案内してこない担当者もいますが、急な日程では対応が難しい場合もありますね。
内覧会当日の流れ
次に、内覧会の当日の流れについても抑えておきましょう。
- 約束の時間に物件前で集合
- 売主・建築業者から内覧の進め方等について説明
- 住宅や設備機器等の取扱い説明等を実施
- 完成検査(施工ミス等のチェック)
- 指摘事項を売主・建築業者へ伝達
- 補修後の再確認日を調整
- 解散
以上が当日の流れです。但し、当日の流れは売主や建築業者によって相違することも少なくありませんから、必ずこの通りに進めるとは限りません。
たとえば、「3.住宅や設備機器等の取扱い説明等を実施」を最後に実施するケースもあれば、別の日に実施するケースもありますし、「5.指摘事項を売主・建築業者へ伝達」は「4.完成検査(施工ミス等のチェック)」と並行して進めることも多いです。また、「6.補修後の再確認日を調整」は内覧会の翌日以降に行うこともあります。
マンションの内覧会では、受付カウンターが用意されていて、最初にそこで受付を済ませることが多いです。その後、共用部等の説明を受けてから、購入した住戸(専有部)に移動して内覧が始まるという流れです。ここからは、「3.住宅や設備機器等の取扱い説明等を実施」以降の流れですが、「5.指摘事項を売主・建築業者へ伝達」は住戸内で行うこともあれば、受付カウンターへ戻って行うこともあります。
現場によって異なることを理解しておき、柔軟に対応できる心構えが必要です。
初めて経験する内覧会なので舞い上がってしまったという声を聞くこともありますが、流れをイメージしておき、落ちついてその時を迎えたいですね。
住宅展示場やモデルハウスの内覧
この記事では、新築住宅の完成後に行う竣工検査としての内覧会について解説していますが、家を建て始める前に行く住宅展示場やモデルハウスを見学することについても内覧と呼ぶことが多いです。
また、住宅が完成した段階で、その住宅の施主や買主以外へのアピールとして一般公開するイベントについても内覧会と言うことがよくあります。この場合は、見学会と言うこともあります。
同じ言葉でも用途が異なるものなので注意してください。
内覧会の注意点と対策
内覧会に関する基礎知識を身につけたところで、注意点と対策についてアドバイスを読んでおいてください。内覧会で失敗、後悔しないためにはここからが大事なことです。
内覧会を終えてから準備と対策ができていなかったと感じたとか、住み始めてから施工状態などが酷いものだと気づいて施工会社とトラブルになるといったことを少しでも減らしたいですね。
当日に用意しておきたい持ち物と服装
内覧会の当日、買主が用意しておきたい持ち物と参加する買主の服装について説明します。
当日の持ち物(用意すべきもの)
内覧会の当日に、買主が用意しておくべきものを紹介します。
- メジャー
- スリッパ
- デジタルカメラ(またはスマホのカメラ機能)
- メモ帳・筆記用具
- チェックシート・チェックリスト
- 間取り図(または平面図)
以上のものは必須ですね。
メジャーは、内覧会の際に家具やカーテンのためにいろいろな箇所を採寸したい人にとっては必須です。また、現地で契約したプランと相違点があるのではないかと感じたときにメジャーで計測する可能性もあります。
スリッパは、売主や建築業者が用意していることもありますが、用意が無いことも多いので自ら準備しておいた方が無難です。内覧会の時点では床が綺麗に清掃されておらず、靴下が真っ黒になることもありますし、寒い季節ならスリッパなしでは足が冷たくて耐えられず、内覧どころではなくなります。
デジタルカメラは、スマホのカメラで代用してもよいでしょう。使わないことも多いですが、指摘箇所を記録しておき、補修後の再チェックの際に場所の確認や症状の確認に役立たせることができます。当日、間取り図に指摘箇所を書きこんでいくことが多いですが、それだけでは後から忘れてしまうことも多いのです。
メモ帳や筆記用具は、指摘事項や気づいたこと、後で確認しておきたいと思ったことなどを書き留めておくために使います。指摘事項を記録するために、売主側がペンを用意していることが多いですが、家族それぞれが持っていた方が都合がよいです。
チェックシート・チェックリストは、何を見るべきか現場で確認するために必要です。はじめての内覧会では舞い上がってしまって、予定していたことを確認できなかったという経験者は多いです。漏れなく落ち着いて確認するために、リスト形式にしたものを持参した方がよいです。
施工ミス・不具合を確認するために役立つチェックリストは後述しますが、それ以外に、注文しておいたオプション設備や内装材のカラーなども、契約通りに設置・使用されているか確認する必要がありますから、あなたのオリジナルチェックリストも必要です。
指摘事項が見つかったとき、その場所を後からでも容易に確認できるようにするため、間取り図があると便利です。該当箇所を間取り図に記録していくわけです。
上の項目にはあげておりませんが、小さなお子さんを同行するのであれば、寒さ対策は考えておいてください。内覧会の間、ずっと抱いているわけにいかないかもしれないですが、当然ベッドも何もない状況ですから対策が必要です。床にそのまま置いておくわけにもいきません。
服装
内覧会の当日の服装について説明します。
現場では、歩き回るだけではなく、屈んだり床に伏せるたりすることもあるので、動きやすい服装で臨むことをお勧めします。伸縮性の高い服ならなお良いでしょう。
一般的には、内覧会を実施するタイミングではエアコンがないため、夏など暑い季節には、速乾性の高い生地の服がよく、汗を拭くタオルも準備しましょう。逆に冬のように寒い季節なら、ダウンジャケットがある方がよいです。室内で動き回って暑くなれば脱げばいいですね。
一戸建て住宅の場合は、建物の外周部も確認することになるため、靴も動きやすさ重視で選んでください。何度か脱いだり、履いたりを繰り返すこともありうるので、ブーツは不向きです。
内覧会の同行人数は2人以上で
内覧会に一人で臨む人がいます。夫婦のいずれかが仕事で対応できないケースや独身でマンションを購入したケースなどです。
しかし、慣れない内覧会に一人だけで臨むことはあまりオススメできません。売主や建築業者などがいる現場で、1人だけであれば、プレッシャーを感じてゆっくり見ることもできないでしょう。家族や親しい友人などに依頼して同行してもらうことをオススメします。
また、小さなお子さんを同行することもあまりオススメできません。指摘事項を示すテープを現場で貼っていくことが多いですが、お子さんがはずしてしまって指摘箇所がわからなくなることもありましたし、走り回っているうちに付けたキズなのか、建築業者が付けていたキズなのかわからないものが出てくることもありました。
内覧会は2人以上で参加すべきですが、お子さんの同行については慎重に考えてみてください。
所要時間の上限に惑わされない
内覧会の所要時間について売主や販売会社などから、時間の上限を通知されることがあります。たとえば、30分以内に見てくださいといった具合です。
建物の大きさ(面積)にもよりますが、施工ミス・不具合の確認等を30分だけで終えることは不可能です。目立つキズや汚れを見るだけで終わってしまうことでしょう。専門家を同行して診てもらうと2時間程度の時間がかかるものですから、これくらいの時間は必要だと思っておいた方がよいです。
もし、一戸建て住宅で床下や屋根裏内部の奥まで確認するには、3~4時間くらいの時間が必要になります。
時間の上限を指定されたとしても、「大事な機会なので、ゆっくり時間をかけて確認したい。」とはっきり意思表示してください。
内覧会は引渡しの10日以上前を推奨
内覧会当日の流れを紹介するなかで、「補修後の再確認日を調整」と書きました。解散する前に、補修後の確認日を決めておくことが多いのですが、つまり補修工事が入るということです。
指摘事項が全く何もない内覧会というのは稀ですから、基本的には何か指摘が生じて補修を求めることになると考えておくべきです。その補修工事に要する期間は、指摘した内容や建築業者が職人を手配する段取りなどに影響を受けますが、多くの場合、10日間ほどあれば対応できるはずです。
ただ、分譲マンションなどのようにまとまった戸数がある場合は、順番に補修していくこともありますから、もっと日数が必要な場合もあります。
状況に応じてゆとりあるスケジュールを組む必要がありますが、内覧会と引渡し日は10日以上あけることをオススメします。
売主から内覧会を案内されないことがある
一般的には、売主や建築業者から買主に対して内覧会の開催時期について案内があります。しかし、実はこれは必ず案内されるとは限りません。
特に小規模な売主から建売住宅を購入した人は注意してください。買主が検査するための内覧会を開催しようともしない業者があるからです。完成日や引渡し日が近いのに内覧会の案内や説明がないときは、自分から売主に聞いてください。ここで遠慮することは禁物です。
内覧会には専門家の立会い・同行が有効
内覧会では、建物の施工不具合の有無をチェックすることが大事な目的ですが、建築知識や経験がないと自分で実施するのは簡単ではありません。
自分の判断が正しいかどうか自信を持てないことも多いし、指摘しても建築会社や不動産会社から、「それはそのようなものです」と言われてしまうと本当かどうか心配になることもあります。
そこで、専門家に依頼して一緒にチェックしてもらうことも考えてみましょう。引渡し前の大事な立会いの機会に専門家を同行するのは、1つの有効な解決策です。そのサービスについては、「建築士の内覧会同行・立会いサービス(新築一戸建て・マンション)」を参考にしてください。
専門家への同行依頼は早めに手配すべき
新築一戸建て・マンションの引渡し前の内覧会に、専門家の立会い・同行サービスを依頼する人は多いですが(特に新築一戸建てで多い)、その日程次第では早めに依頼しないと同行業者のスケジュールが一杯で対応してもらえないこともあります。
依頼を前向きに検討しているなら、早めに同行業者へ問い合わせて、依頼しておくことをおすすめします。
内覧会の当日にひどい施工状態だったときの対処法
専門家に同行依頼せず、買主だけで内覧会の当日に施工状態をチェックしたものの、あまりにも施工がひどい状態でショックを受けたという人も少なくありません。楽しみにしていたマイホームとの初対面の場で、酷い工事を目の当たりにすればショックなのも無理はないでしょう。
そのようなときの対処法は、以下のとおりです。
- 気持ちを入れ替えて対応することを自分自身に言い聞かせる
- 落ち着いて時間をかけてゆっくりチェックする
- 引渡し前に再チェックの機会を設けてもらい、専門家を同行する
売主や建築会社に対して怒りたい気持ちになるのも理解できますが、喧嘩みたいに揉めてトラブルが大きくなっても得することはありません。一度、気持ちを抑えて落ちくことから始めましょう。
また、状況次第では、再度チェックする機会を設けるように売主側と交渉し、そこに専門家を同行するとよいでしょう。その際は、できる限り、引渡し前に同行依頼することをお勧めします。
誰だって内覧会の後でひどい想いをしたくないですよね。施工不具合を内覧時に指摘して補修してもらうため、ホームインスペクター(検査の専門家)への依頼も検討しましょう。
内覧会で便利なチェックリスト(調査項目)
内覧会の当日にあると便利なチェックリストを紹介します。これを活用して、内覧会でのチェックに役立ててください。
内覧会は完成状態で実施されますから、隠れて見えない箇所があります。それはやむを得ないことです。当日、確認できる範囲について全てチェックするつもりで臨むとよいでしょう。
室内であれば、各部屋で床・壁・天井の仕上がり具合をじっくり見ていき、サッシ・建具・設備は全て動作状況をチェックします。戸建て住宅なら床下や小屋裏の中も確認すべきですが、これは一般の人には危険なのでオススメしません。
それでは、具体的なチェックリストを紹介します。ここで紹介するチェックポイントは実際に専門家も診ている項目ですからよい参考になるはずです。
建物外部
建物本体の外側の部分のチェックリストです。分譲マンションの場合は、これは除外となります。
基礎
- ひび割れ
- 仕上材の剥離・欠損・浮き
- 基礎表面のカビ・変色・シミ・ジャンカ
- 鉄筋の露出
- 白華現象
- 基礎パッキン及び水切りの状況
- 換気口の状態
- 蟻道
外壁
- ひび割れ
- 仕上材の剥離・欠損・割れ・浮き・腐食・カビ・錆
- 防水シートの破断
- シーリング材の破断
- 設備器具の固定箇所及びスリーブ周囲の防水状況
屋根
- 著しい割れ・欠損・ずれ・腐食
- 仕上材の色褪せ
- 保護層の著しいせり上がり(フラットルーフの場合)
- 防水層の破断
- 破風・鼻隠しの塗装落ち
- 水切り等金属部の錆・腐食
軒裏
- ひび割れ、欠損
- 漏水跡
- 浮き、剥がれ、腐食
- 軒裏換気口の状態
雨樋
- 破損、ひび割れ
- 掴み金物のぐらつき
- つまり
バルコニー
- 床の沈み・欠損・腐食・勾配
- 防水層の破断
- 排水溝の勾配、排水口のつまり
- 手すりのぐらつき
- 支持部の欠損・割れ・腐食
- 立ち上がり壁(内側)の欠損・割れ
- 物干し金物の取り付け状態・動作
外構
- ブロック塀、フェンス等の不良、アプローチの不良
- 玄関・車庫の門扉等の不良
- 雨水・雑排水・汚水桝の設置状況
- 門柱等の設置物の著しい劣化・異常
- 犬走り・テラス・地面の勾配・著しい陥没
- 排水溝のつまり・勾配
玄関ポーチ
- 床の仕上げ、タイルの著しい浮き・欠損
- 壁・天井の仕上げ
- 照明の点灯
- 新聞受けの取り付け
- インターホンの動作
屋外のその他
- 隣地境界の明確性、道路境界の明確性
- 屋根・雨樋等の構築物の越境、植栽(草木・植木等)の明らかな越境
- 屋外シンクの使用可否・設置状況・赤水
床下
次に床下スペースの調査項目(チェックリスト)です。床下への進入は慣れていない人には危ないため、点検口から目視できる範囲に留めておくことをお勧めします。
基礎
- ひび割れ
- 仕上材の剥離・欠損・浮き
- 基礎表面のカビ・変色・シミ・ジャンカ
- 鉄筋の露出
- 白華現象
- 基礎パッキン及び水切りの状況
- 換気口の状態
- 蟻道
土台・床組み
- 構造材の著しいひび割れ、腐朽・腐食
- 土台と床組みの接合部の浮き
- シミ・水濡れ
- 束の固定状況・錆
- 金物の設置位置と固定状況
- 金物等の錆、鉄骨の錆
- カビ
- 蟻道・蟻害
床下のその他
- 断熱材の有無、断熱材の設置状況
- 給排水管の固定状況・損傷
- 給排水管のからの漏水
- 漏水跡・異常な湿気
- 防腐・防蟻処理の有無
- 著しい地盤の陥没、地面・土間の著しいひび割れ
- ユニットバス周りの基礎断熱の有無
- 工事残存物・ゴミの有無
屋根裏(小屋裏)
屋根裏(小屋裏)スペースのチェックリストの紹介です。屋根裏は床下よりも危険なため、点検口から覗いて目視できる範囲に留めておきましょう。
- 木部のひび割れ・欠損・剥がれ
- 鉄骨材の劣化・腐朽・腐食・錆
- 金物の設置位置と固定状況、金物の錆
- 配線の整理・固定・被覆状況
- 屋根裏の断熱材の有無、屋根裏の断熱材の設置状況
- 漏水跡、シミ、異常な湿気
- 蟻害、蟻道
- カビ
- 壁内の筋交いの有無、壁内の筋交い上端分の金物の設置状況
- 火打ち梁の有無
- 外壁内の断熱材の有無
- 外壁の内張りの有無
屋内(建物内部)
建物内部(室内)のチェックリストです。玄関やリビング、洋室などで該当する項目に違いがあるものの、全体的に各所で同じようなチェックをしていくことになります。
玄関扉
- がたつき及び開閉時の音
- 扉の重さ
- 扉と枠の隙間
- 気密パッキンの抜け、切れ
- 鍵の施錠、アクローザーの動作
- ガラスの割れ・ビート材の緩み
玄関土間
- 土間床の傾き
- 床仕上げ材の浮き・はがれ・ひび割れ
- 上がり框のひび割れ
玄関収納・下足入れ・各収納
- 設置状況
- 棚板のがたつき
- 取っ手のぐらつき
- 扉の取り付け・動作・丁番の緩み
- ハンガーパイプの固定
LDK、洋室等の居室、納戸、洗面室などのスペース
- 床:床鳴り・床の沈み、凹みや浮き、著しい傾き
- 巾木:壁および床仕上げ材との隙間・欠損
- 壁:仕上材の割れ・はがれ・めくれ、著しい隙間やキズ、下地不良、傾き、漏水跡、著しい傾き
- 天井:仕上材の割れ・はがれ・めくれ、著しい隙間やキズ、漏水跡
- 畳の設置状況、表面のカビ、下地のカビ、下地材の著しいひび割れ(和室の場合)
- 扉:扉の動作、扉と枠の隙間、丁番の緩み等の取り付け、ドア下部の見切りとフローリングの隙間
- サッシ・網戸の動作、鍵の施錠、ビスの締め付け、ガラスの割れ、シャッター又は雨戸の取り付けと動作
- カーテンレールの取り付け
- エアコンスリーブの取り付け
- 給気口の取り付け
- スイッチ・コンセント・リモコンの取り付け
- カウンターの取り付け
水周り設備等
- シャワー水栓の漏水対策
- 給水・給湯管の化粧カバーの隙間・割れ
- 排水管の化粧カバーの隙間・割れ
- シンク下部の排水管の水漏れ
- 排水速度・排水音の異常、赤水、
- 天板の設置状況、天板と壁の隙間
- レンジフードの取り付けと動作
- 換気設備の動作
- 照明の点灯
- 床下収納庫の扉の開閉、床下収納庫の取り付け
- タオル掛けの設置状況
- 防水パンの設置状況
- 浴室:床のきしみ・欠損、壁の著しい傾き・欠損・割れ、天井の欠損・割れ
- 天井点検口内の換気ダクトの取り付け、各配線の取り付け・整理、断熱材の有無、断熱材の設置状況
- 浴室換気乾燥機の設置状況
- トイレ設備:便器・便座の取り付け、排水速度・排水音の異常、便器等からの漏水
- 給水・給湯管の結露防止措置の有無、配管の金具等による固定状況、通気管の設置状況、排水管の勾配
- 電気設備:電盤の設置状況
内覧会でプロが指摘した事例(新築でも不具合がある)
新築住宅の引き渡し前の内覧会に、購入者からの依頼に基づいてホームインスペクションのプロ(専門家)が同行して、現場で指摘した事例を写真付きで紹介します。新築でもいろいろな不具合が見つかるものですが、この事例を見ることで、専門家に同行依頼することの効果や必要性も理解できるでしょう。
また、実際の指摘事例は、内覧チェックをするときの参考になるので、ご覧ください。
床下の漏水
床下のインスペクションで、漏水していることが分かった様子です。床下の床面に水が溜まっているよう状況がわかりますね。意外と新築した時点でも漏水していることがあります。
屋根裏の断熱材の不足
屋根裏のインスペクションで、屋根裏の一部に断熱材が設置されていないことが確認された様子です。建物の断熱性能に影響がある指摘事例で、このように広範囲に断熱材がないと影響も大きくなります。
床下のゴミ(残材)
床下のインスペクションで、床下に施工中の木材の切れ端などが落ちていた様子です。床下は買主も確認することが稀なので、職人が片付け・掃除を怠り、このようになっていることがあります。放置すると、いずれシロアリ被害の原因になりうるものです。
玄関ポーチのタイルの浮き
玄関ポーチや玄関の床(土間)にはタイルが施工されていることが多いですが、そのタイルが浮いていることがよくあります。程度にもよりますが、浮いたままでは、割れやすいために、できれば補修対応が望ましいです。
サッシ枠のビスの緩み
サッシの枠にはいくつもビスがありますが、それ緩んでいることがあります。また、一部のビスを留め忘れていることもあります。外部では緩みなどがあると、そこから雨水が浸水することもあるので、意外と重要なことです。
基礎の配管貫通部の隙間
基礎に配管しているため、基礎コンクリートの貫通部がありますが、その貫通箇所の周囲に著しい隙間があります。この隙間より、雨水が床下へ浸水して床下に水溜りができ、放置しているとカビや木部の腐食、金属部の錆などを引き起こしてしまいます。
基礎の構造クラック(ひび割れ)
床下で確認された基礎コンクリートの構造クラック(ひび割れ)です。ひび割れの幅が、新築した時点で0.5mmあり、構造耐力への影響が心配されます。コンクリート打設時の施工不良や乾燥収縮の影響が考えられます。
新築住宅なのに、そんなはずがないだろうと思われがちな施工不具合が見つかるケースがあるとわかりますね。これが現実であることを理解して、引渡し前にしっかりチェックしましょう。
まとめ
戸建てやマンションの内覧会の重要性や何をすべきであるか、どういった項目をチェックすべきかについて解説してきました。また、所要時間のこと、当日の人数のことなどの注意点もあげてきました。ここで書いていることだけでも多くのことがありますが、いずれも大事なことですから慎重に対応しましょう。
また、施工ミス・不具合をチェックするという点については、専門家の力を借りる方法もあります。一級建築士に同行を依頼して、内覧会に立会ってもらうことも考えましょう。特に、一戸建て住宅においては専門家のチェック(内覧会立会い・同行(竣工検査・完成検査))は心強いでしょう。
関連記事
- 新築住宅の引渡し前の注意点(内覧会と引渡し)
- 新築住宅の引渡し前の施主検査・完成検査(竣工検査)の立会いと注意点
- 新築一戸建ての内覧会(竣工検査)に立ち会うべき人
- 施主検査の第三者の立会いのメリット・デメリットと依頼時の注意点(専門家サポートの解説)
執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。