新築住宅を購入した人には、その住宅の完成後、引き渡し前のタイミングで内覧会というものがあります。住宅の売買契約をする前から、内覧会のことを知っている人は、早めに準備していることも多いですが、契約後や内覧会の直前になって初めて知った人は、どう対応すればよいかわからず、焦ってしまうこともあるようです。
引き渡し前に建物の施工不具合などをチェックする大事な機会である内覧会ですが、何をチェックすればよいか判断できず、且つ、十分に対策もとっていないために、その当日を何となくやり過ごしてしまい、入居後に後悔する人もいます。
そこで、新築の内覧会で買主が確認しておくべきチェックポイントを写真も交えて丁寧に解説します。その内容は、新築一戸建て住宅を主としたものとなっていますが、分譲マンションを購入した人にも十分に役立つ内容となっています。
チェックリストのPDFファイル版も公開しているので、上手く活用してください。
内覧会は、チェックポイントを把握するだけで容易に乗り切れるものではないため、これと関連することとして、内覧会の基礎知識やその重要性を紹介し、その上で、買主がやるべきこと、チェックポイント、プロに同行依頼できることなども解説します。
内覧会とは?基本を学ぼう
新築住宅における内覧会の基礎知識を紹介します。ここで取り上げる内覧会は、販売促進のために、購入検討者などにモデルハウス等を公開する内覧会ではなく、その住宅の購入者が引渡し前にチェックする機会のことです。
内覧会とは完成後・引き渡し前のタイミングで行う建物チェック
新築住宅の内覧会とは、その住宅の購入者が、建物が完成した状態で施工ミスがないかどうか、基礎や外壁、床・壁・天井、設備などを現地で実物をチェックする機会です。
建売住宅であれば買主が、注文住宅であれば施主がチェックを行うことになります。
建物が完成した状態でチェックすると書きましたが、それだけではなく、その住宅の引き渡しを受ける前のタイミングで実施することが大事だと理解しておきましょう。
竣工検査や施主検査も内覧会とほぼ同じ
建物の完成状態でチェックするわけですが、内覧会は、言い換えれば、竣工検査や施主検査でもあります。竣工検査は、その言葉どおり建物が竣工(完成)した状態で行う検査ですね。内覧会は、竣工検査の役割も含まれているため、ほぼ同じ意味を持つ言葉です。
ただし、検査以外にもすることがあるため、それについては、次の「内覧会の当日にやること」で説明します。
内覧会の当日にやること
内覧会の当日は、建物の施工状態をチェックすること以外に、以下のことも同日に行うことが多いです。
- 建築会社または不動産会社から、使用上の注意点の説明を受ける
- 建築会社または不動産会社から、住宅設備機器の取り扱い説明を受ける
- 建物チェックで指摘した事項の補修期間・補修方法・補修後の確認日を聞く
以上です。
内覧会とは、直接関係ないですが、同日に金融機関との金銭消費貸借契約(=住宅ローンの契約)を締結することもあります。当日にやることは、取引によって異なることもあるため、建築会社などにも確認しましょう。
内覧会では当日のチェック(不具合の確認)が超重要
内覧会が、建物の施工不具合の有無をチェックする機会だと理解できたと思いますが、その重要性について説明します。不動産会社から、「30分くらいで傷を確認してください」と簡単に案内されることがありますが、そのように簡単なものと捉えない方がよいでしょう。
引き渡し前に建物の不具合を補修してもらうべき
多くの住宅で、手抜き工事をするつもりがなくても、何らかのミスや不注意によって、施工不良と言える工事が見つかることがあります。担当者がどれだけよい人でも、そのハウスメーカーや不動産会社がどれだけ大手の有名企業であっても、ミスが生じることがあるのです。
これまで、本WEBサイトを運営するアネストでは、非常に多くの内覧会に同行して現場を見てきましたが、細かな指摘が2~3ある程度の住宅もあれば、何箇所も大きな施工ミスが見つかった住宅もあります。
こういった施工ミスによる不具合は、引き渡し前に補修してもらう必要があります。
その理由としては、以下の2点が大きいです。
引渡し前に補修してもらうべき理由
- 引き渡しの際に購入代金(または建築代金)の全てを支払ってしまうこと
- 代金を支払った後(引渡し後)に対応が悪化する業者がいること
多くの住宅取引を見てきたからこそ知っている住宅・不動産業界の問題点です。必ず、引き渡し前に補修してもらうようにしましょう。
「引き渡しの前までは、良い人だったのに・・・」と後悔の声を聞くことがあります。引き渡し時に代金を払った途端に態度を変えるなんて驚きますが、現実に起こっているトラブルです。
補修要求するために内覧会でしっかりチェックしよう
引き渡し前に、不具合の補修をしてもらうためには、当然のことながら、内覧会でしっかりチェックして売主側へ補修を要求しなければなりません。内覧当日に、大事な見落としがあって補修してもらわなければ、後で影響を受ける不具合が残ったまま住み続けることになるかもしれません。
内覧会では、何を確認すべきなのか、どこを診るべきなのか、チェックポイントを理解して対応する必要があるのです。
補修後の再チェックも引渡し前にやるべき
チェックして、売主側へ指摘事項を伝えれば終わりというわけではありません。指摘したことがきちんと補修されたかどうか確認することも大事です。そして、その補修工事を終えた後は、現地で再び補修状況を確認してください。不適切な補修状況であれば、再度の手直し工事を要求する必要があるからです。
補修工事や補修後の再チェックも引渡し前に実施すべきことですので、内覧会から引き渡し前の期間には注意したいものです。たまに、内覧会の3日後に引渡しの予定だと伺うことがありますが、それでは、補修や補修後の再チェックをする時間を取れないリスクがありますので、注意してください。
チェックリストを用意しよう(PDF版を無料で公開)
内覧会の当日に現地で確認すべきチェックポイントをまとめたチェックリストがあると便利です。住宅購入者から依頼されて代わりにチェック業務を行うプロでも、見落としするといけないので、チェックリストを使用するくらいですから、用意しておくことをおすすめします。
チェックリストを無料で公開しておきますので、ご利用ください。
内覧会でのチェックポイント
ここまで読み進めてきて、内覧会の重要性や引渡し前にチェックリストを準備して対応すべきことが理解できたことでしょう。しかし、チェックリストを見ただけで、現場で対応できる人はそう多くはありません。建築の知識と経験が十分にないのに、チェックリストを用意するだけで適切に確認できるほど甘いものではないからです。
そこで、大事なチェックポイントにできる限り、写真を混ぜて紹介しますので、ここでチェックポイントをしっかり学習しておきましょう。
外構(敷地内の建物本体以外)
敷地内の建物本体以外の部分についても内覧会で確認しておきましょう。
フェンス
フェンスは、取付状態(ぐらつきの有無)を確認する。
ブロック塀
新築住宅であっても、既設の古いブロック塀をそのまま利用することがあるため、ぐらつきが無いか確認する。新設したブロック塀でもぐらつきの有無を確認する。
カーポート
カーポートの支柱の設置状態(ぐらつきの有無)を確認する。
境界
境界の位置を示す杭の有無を確認する。
玄関ポーチのタイル
玄関ポーチにはタイルが施工されていることが多いが、割れや浮きの有無を確認する。
犬走り
基礎周囲の犬走りのコンクリートの著しい割れの有無を確認する。
フェンスやブロックの状態は、子どもなどが体重をかけたときに倒壊するなどして、怪我をする可能性があるので、重要です。通りがかりの人や隣家へ被害を与えるリスクもあります。
玄関ポーチと玄関の床に施工したタイルでは、浮きが見つかることが多いです。その状況次第で貼り替えか経過観察をするとよいでしょう。
建物の外部
外壁や屋根などの建物外部の部位は、雨漏りを防ぐという重要な役割があるので、その施工ミスは雨漏りリスクにつながるものが多いです。
基礎の配管周り
基礎を貫通する配管周りの隙間を確認する。隙間があると床下浸水リスクがある。
基礎モルタルの浮き
基礎モルタルの浮きが広範囲にないか確認する。直ちにリスクがあるわけではないが、広範囲にあると短期間ではがれ等の可能性がある。
金物のビス忘れ
雨樋等の固定金物のビス止めを確認する。ぐらつきの有無も確認する。
外壁の配管周りの隙間
外壁を配管等が貫通する部分の隙間を確認する(雨漏りリスクがある)。
外壁材の割れ
外壁材(サイディングなど)の割れの有無を確認する。
フード周りの隙間
フード周りのシーリングの有無を確認する。サッシ周りも同様である。
シーリングの隙間
外壁材の継ぎ目のシーリングの隙間の有無を確認する。
軒裏
軒裏の割れ、隙間、染みを確認する。換気口が塗装等で塞がっていることもある。
屋根材の割れ
屋根材の割れや隙間を確認する。
バルコニーのサッシ下部
室内からバルコニーへ出る窓の下部で、コーキングやビス忘れの有無を確認する。
笠木と外壁の取合い
バルコニーの笠木と外壁材の取合い部分のシーリングの状態を確認する。
バルコニーの笠木
バルコニーの笠木の板金の隙間の有無を確認する。
床下の換気不足
床下換気に必要な箇所がモルタルで塞がれていることがある。
屋根は、地上やベランダから目視できる範囲で確認しますが、階下の屋根は上階の窓から確認することもできます。たとえば、2階の窓から1階の屋根を確認するということです。
建物の内部(屋内)
屋内は、玄関・廊下・リビングや各居室ほか、洗面脱衣室・トイレ・浴室などの全てが確認対象です。ここで、傷や汚ればかり見てしまう人もいますが、それ以外の確認を怠らないようにしましょう。
不動産会社から、「内覧会では傷チェックをしてください」と言われて、傷だけを見ればよいと誤解している人もいますが、気つけてください。
床の傾き
床の傾きを計測する。著しい場合は補修等の必要性を検討する。
壁・天井の染み
完成後すぐに染みがある場合、原因の確認を施工者へ要望する。
壁の傾き
壁の傾きも計測する。
手すりのぐらつき
階段などの手すりのぐらつきを確認する。
配管からの漏水
キッチンや洗面台等で排水し、直下の配管周りの漏水有無を確認する。
サッシ周り
窓周りのビスの抜け、動作状況(重さ)を確認する。
ここに挙げたもの以外で、タオル掛けやドアなど、様々なものについてぐらつき(取付状態)や動作状況を確認しましょう。入居後に見つけても、症状次第では買主責任とされることがあります。
床下
床下は、基礎・床組みなどの構造耐力に関わる部位と、断熱材や漏水等の問題を確認できる場所です。
床下漏水
床下で配管からの漏水有無を確認する。奥へ進入しないと確認できないものもある。
床下浸水
新築時点でも屋外から床下へ雨水が浸水していることもある。
構造金物
床下で構造金物の状態を確認する。写真はアンカーボルトが土台から外れている状態。
床下のゴミ
床下ではゴミや残材が多く見つかるので確認する。
基礎の著しいひび割れ
基礎の立上りや底盤の著しいひび割れ。じゃんかの有無を確認する。
土台の著しい欠損
土台(構造材)の著しい欠損の有無を確認する。
断熱材の施工不良
断熱材の設置忘れ、垂れ下がり、落下の有無を確認する。
支持金物の固定
配管等の指示金物のぐらつきの有無、ビス止めを確認する。
床下は、基礎や土台、断熱材、配管などの重要な部位が多い上に、指摘事項が多いスペースです。新築の内覧会のタイミングで床下の漏水が見つかることは驚くほど多いです。
屋根裏(小屋裏)
屋根裏では、小屋組みという構造耐力上の大事な部位を確認できます。慣れない人が屋根裏内部へ入って行くのはリスクが大きいので、点検口から覗いて目視できる範囲で確認しましょう。
金物の施工不良
羽子板ボルトを固定するボルトがない。このような金物の施工不良を確認する。
ボルトの緩み
構造金物のボルトの緩みの有無を確認する。
屋根裏の断熱材
断熱材の設置漏れ、隙間を確認する。
屋根裏の染み
雨漏り等の疑いがある染みの有無を確認する。
屋根裏では、断熱材の施工ミスが非常に多く見つかります。また、新築時点で野地板などで水染みが見つかることがあり、雨漏り結露の被害ではないか確認が必要となります。構造金物の施工不良、特に緩みも意外と多いです。
買主が自分で適切に対応するための注意点
引き渡し前の内覧会について、買主が適切に対応していくために必要なことを紹介します。
何よりも事前準備が大切
多くの人にとって、引き渡し前の内覧会は人生で何度もあることではありません。つまり、どの人にとっても経験値が低いということです。これは恥ずかしいことではなく、誰でも同じですね。その経験をフォローするために必要なのは、何よりも事前準備です。
その準備としては、このコラムを読み込んでしっかり学ぶこと、そしてチェックリストを用意しておくことです。この2点が必須事項です。チェックリストは、このページで前述したものをご活用ください。
建築会社や不動産会社が誤魔化そうとすることがあることを理解しておく
事前準備で必要なことの1つが知識武装です。その知識として理解しておいてほしいことは、建築会社や不動産会社は、自社のお客様を相手にしていても、誤魔化そうとすることがあるという点です。
買主が、施工ミスの可能性があると感じて、現場で建築会社の担当者へ伝えたとき、「それは、そういうものです」「どの住宅でもだいたい同じですよ」「構造的に問題ないです」などと説明されることが多いですが、その回答や説明が本当かどうかを考える必要があるのです。
もちろん、事実を説明されていることも多いですが、一部で誤魔化しや虚偽があるので注意しましょう。
最低限の道具の準備
内覧会の当日は、いくつかの持参すべき物があります。知ってさえいれば、誰でも用意できる物が多いですから、準備しておきましょう。
図面・メモ帳・筆記用具
図面は、内覧当日に建物と図面に大きな違いがないか確認することに使えますが、施工不良などの指摘事項が見つかった箇所を後で見てもわかりやすいように、マーキングするのに便利です。同時にメモを取るために筆記用具やメモ帳があれば便利です。
最近は、タブレットに図面を取り込んで、画面上でメモ書きを残す人もいます。自分に合った方法で対応するとよいでしょう。
チェックリスト
このコラムで何度も登場していますが、チェックリストは必須です。ダウンロード&プリントして持参してください。
付箋・マスキングテープ
指摘箇所を後で見たときにわかりやすくするため、付箋やマスキングテープを用意しておくと便利です。指摘箇所に貼っていくのです。まだ、引き渡し前は買主の所有物ではありませんので、建築会社等の承諾を得てから貼っていくとよいでしょう。
カメラ・スマホのカメラ機能
指摘箇所の記録という意味では、写真撮影しておくことも便利です。補修後の再チェックに際しては、この写真と補修後の状況を比較するとわかりやすいです。
メジャー
メジャーは、内覧会の建物チェックのためには、それほど必要性はないですが、このタイミングで家具やカーテンなどのために必要な箇所を採寸しておくことができます。もちろん、図面との寸法の相違点が気になるようであれば、チェックすることもできます。
ここで挙げた道具類のうち、マスキングテープや指摘事項を記録するためのシート(用紙)は、建築会社側で用意していることも多いです。そのときは、それを利用するとよいでしょう。
内覧チェックをプロに任せる内覧会同行サービスも要検討
新築住宅の内覧会が大切な機会であること、その対策として、チェックリストなどを用意しておくことや、1つ1つのチェックポイントについて写真を参考にして理解すべきことを把握できたのではないでしょうか。
チェックポイントをよく理解してから、内覧会の当日を迎えるようにしてください。
準備しても不安を感じる人は多い
住宅の建築知識や経験が十分にない状況だけに、いくら準備をしても不安だという人も多いです。確かに初めての内覧会を自分たちだけで乗り切ることは難しいものですし、前述したように、建築会社や不動産会社の担当者へ指摘しても誤魔化そうとするケースもあるだけに、自信をもって対応していくのは簡単ではありません。
また、住宅の購入や建築にかける金額の大きさを考えれば、失敗したくないですし、引き渡しを受けて住み始めてから後悔しても遅いこともあるでしょう。
チェックをプロに任せることもできる
そこで、第三者のプロに内覧会で行うチェックを代行してもらうサービスを利用するのも1つの方法です。傷や汚れなどの見た目の問題点は、自分たちで確認し、構造耐力や防水・断熱などの性能に関わる専門的な部分を専門家に同行してもらって調査してもらうサービスです。
内覧会立会い・同行サービスは、多くの場合、建築士が行っていますが、一部では建築士の資格を持たず、本当に専門家としての知識と経験があるのかわからない人もいるので、依頼する際は注意してください。本WEBサイトを運営するアネストでは、必ず、一級建築士が同行して、検査業務を行っています。
プロのチェックはホームインスペクション
新築住宅の内覧会にプロが同行して行うチェックサービスは、ホームインスペクションとも呼ばれています。これは、建物の施工不具合の有無を確認する建築技術分野の専門的サービスであり、完成物件においては、その時点で目視できる範囲において調査します。ちなみに、建築途中のインスペクションや、中古住宅に対するインスペクションもあり、それぞれ多くの住宅購入者が利用しています。
新築住宅の建物完成後、引渡し前に行われる内覧会について、基礎知識や重要性、買主がやるべきこと、チェックポイント、プロに同行依頼できることなどを解説しました。内覧会がまだまだ先であっても、早めに準備しておくことで、安心して当日を迎えられるので、早めの対応をおすすめします。
執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。