ホームインスペクション(住宅診断)をご利用のお客様より、「新築住宅なのに不具合があるのか?」「どのような指摘があるのか?」と質問を頂くことは大変多いです。ホームインスペクションを依頼するかどうか迷う人にとっては大事な参考材料になることかと思います。
そこで、長年、多くの新築住宅のホームインスペクションを行ってきたアネストの実績のなかから、よく見られる指摘事例についてランキング形式で紹介します。依頼の判断材料としてもそうですが、ご自身でチェックするときは、ここに上げたことくらいは最低限のこととして確認することをお勧めします。
中古住宅の事例は、中古住宅のホームインスペクションの指摘事例ランキングTOP5を参照してください。
新築一戸建て(完成物件)の指摘事例TOP5
完成済みの新築一戸建て住宅を対象として、アネストが行ったホームインスペクションにおける指摘事例の上位5つを紹介します。
ここでは、建物への影響が軽微な指摘事例を除いて(これを含めると多すぎてきりがないため)、建物の性能(耐久性や防水性など)・構造耐力に関わる重要な指摘に限った範囲で、事例をあげています。
基礎・外壁の貫通部の防水対策の不足
大事な指摘事例のうち、最も多いのは基礎や外壁の貫通部分における防水対策ができていない施工不具合です。
具体的には、基礎や外壁を貫通する配管周りのシーリングの施工忘れや、施工しているものの充分に充填できておらず、隙間がある状況です。
貫通しているものは、配管に限らず、換気口のカバーや給気口などいろいろなものがありえます。
この施工不具合がある場合、外壁では壁内へ雨水が浸水してしまう、つまり雨漏りしてしまうリスクがあり、基礎では床下へ浸水してしまうリスクがありますので、いずれも補修対応が必要です。
上の写真では、配管の周り(特に下側)に隙間あるのがわかりますね。
こちらの隙間は軽微だと思うかもしれませんが、こういった箇所から雨漏りすることもあるので、最初に補修しておきたいところです。
断熱材の施工不良
断熱材の施工不良も大変多い指摘事例です。完成物件で確認できるのは、主に床下と屋根裏の断熱材ですが、点検口などから壁内の一部を確認できることもあります。
床下では、設置した断熱材が落ちてきているという指摘が多く、屋根裏では、乱雑に設置されていて著しい隙間が生じているという指摘が多いです。ときには、一部の断熱材の設置忘れが確認されることもありますが、これは施工する職人もわかっていたのではないかと思われるものです。搬入された材料が不足してそのままにしていた可能性も考えられます。
屋根裏で目視できる断熱材がずれ下がった状態になっています。
床下で断熱材が完全に落ちてしまっていますね。
基礎の著しいひび割れ・欠損・ジャンカ
新築、つまり施工したばかりで基礎にひび割れが生じることがないと考える人も多いようですが、実際にひび割れが生じていて指摘になっている住宅は少なくありません。
コンクリート打設時の施工不良の可能性が考えられますが、完成時点のホームインスペクション(住宅診断)で構造的な影響が懸念されるひび割れが見つかる住宅は案外多いです。ひび割れに限らず、著しい欠損やジャンカが見つかることもあります。
基礎の底盤部分にひび割れです。新築時点でこの大きさは、なかなかのものです。
基礎立上り部分で大きな欠損になっている箇所です。
床下の漏水
床下で漏水が発見されると、「新築なのに」と驚く人も多いです。ホームインスペクションの調査項目のなかで、キッチンやトイレなどで排水状況を確認するのですが、その後、床下を確認すると配管から漏水しているということがあります。
全ての床下漏水が配管から漏ったと考えるべきではなく、基礎の打ち継ぎ部などから床下へ雨水が浸水することもあります。また、新築工事中に降った雨が残っていたというケースも一部では確認されています。
床下に水が溜まっている状況です。こういうことは意外とよくあることですが、もちろん充分に乾燥させ、原因を補修対応すべきです。
床下のゴミ・残存物
施工不良というよりも、現場の管理不足で起こってしまう問題ですが、床下にゴミや部材の切れ端などの残存物が見つかることは多いです。
木材が残っているとシロアリ被害にあいやすくなりますし、綺麗に清掃しておくべきでしょう。酷いときにはたばこの吸い殻や空き缶が見つかったときがあり、何も管理していなかったのかとお客様もショックを受けていたことがありました。
この写真の残存物は非常に多いですね。
ランキング外で重大な指摘事例
指摘事例のTOP5を紹介しましたが、多くのホームインスペクションの実績から、他にも様々な指摘があります。アネストには、毎日、全国から多数の調査報告が申請されるのですが、建物の性能(耐久性や防水性など)・構造耐力に関わる重要な指摘を含めると、本当に多くの指摘が確認されています。
たとえば、サッシのビスの締め忘れや抜け、建具の建付け不良、配管等の支持金物の緩みなどはよく見つかる指摘事例です。
ところで、TOP5には入らなかったもののたまに見つかることがあり、且つ、建物の性能や構造耐力に関わる重要な指摘についてもいくつか紹介しておきます。
構造金物の締め忘れ
床下や屋根裏、またはユニットバスの天井点検口から、梁・大引きなどの構造材に留めている金物(ボルトの類を含む)を最後まで締めていない施工不具合が見つかることがあります。
仮留め程度の非常に緩い状態のときもあれば、少し緩んでいる(最後まで丁寧に締めなかったのかもしれない)状態もあります。
写真では金物の緩みがわかりづらいですが、触ってみるとよくわかります。
こちらは明らかに目視で判断できるレベルです。
アンカーボルトの土台外れ
アンカーボルトが土台からずれて設置されている状況が見つかることがあり、構造的な影響の大きさを心配することがあります。これは、床下で確認されることがある指摘事例です。施工しているときに気付いていたはずですが、黙ってそのまま引き渡そうとしたのでしょうか。
みえてはいけないアンカーボルトが見えてしまっており、土台から外れてしまっていますね。
構造材の著しい欠損
床下や屋根裏で見つかることがある指摘の1つで、梁や土台、大引きなどの構造材の著しい欠損があります。多少のひび割れ程度ではなく、構造的な影響を懸念するレベルのものです。こちらも施工しているときに気付いていたはずです。
上の写真は、配管を通すために大引きを削ったと思われるものです。
ベランダの防水層の欠損
ベランダの床や壁の立上り部分には、防水層があります。雨漏りしやすい箇所ですから、丁寧な施工が求められる箇所ですが、施工後に大きく傷つけられた跡が見つかったことがあります。何かを落としてしまった可能性が考えられますが、そのときに防水層に問題が生じたと気づかなかったのでしょうか。ちょっと考えづらいです。
以上、様々な指摘事例について、ランキング形式とランキング外に分けて紹介してみました。
これだけの指摘事例を意外と感じる人も、「やっぱりか」と感じる人もいると思いますが、これが住宅業界の現実ではあります。もちろん、本当に丁寧に施工し、現場管理しているケースも多いので、どの住宅でもこういった指摘があがるわけではありません。
施工者が気づいていなかったと思われるもの、気づいていたのに放置していたであろうとものなど、いろいろありますが、できればこういったことを購入前にホームインスペクション(住宅診断)で確認しておきたいものです。既に契約済みの人なら、せめて引渡し前に確認するのもよいでしょう。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。