新築住宅(建て売り)の売買契約をしてから、引渡しまでのことについて心配になる人は多いです。初めての住宅購入であれば無理もありません。前回のコラム「新築住宅の売買契約から引渡しの流れ」では、その間の一般的な流れを紹介しましたが、今回はその間に買主が注意すべき点を紹介します。
住宅ローンのこと、引越し準備のこと、引渡し前の立会い確認のことなど、いずれも大事なことばかりですから、売買契約が済んでからも油断することなく、慎重に取引を進めてください。
他のローンを組まない
住宅を購入するときに住宅ローンを利用する人は非常に多いですが、新築住宅を買う人も同じですね。住宅ローンを利用する人の全てが注意すべきことが、新たにローンを組まないということです。
売買契約の条件の1つに、住宅ローン特約(=融資利用の特約)があるはずです。万一、住宅ローンの審査で否認されたときには、売買契約を解除して、手付金を返金してもらうというものです。住宅ローンを借り入れできないなら家を買えないので白紙解約するわけですね。
しかし、買主のうっかりミスなどで住宅ローン審査を否認された場合には、この特約の対象となりません。たとえば、新たにカーローンを組むなどの借り入れをした場合です。また、既に借りている何らかのローンで滞納した場合にも住宅ローンが否認されることがあります。
一般的には、売買契約の締結前から借りていたローンが原因となったならば、住宅ローン特約で解除できますが、売買契約後のものが要因となれば問題視されるのです(契約後か前かがわかるかどうかは別問題です)。
ちなみに、買主が故意に住宅ローン審査の承認を得られないようにしたときもこの特約で契約解除することはできません。たとえば、いつまで経っても審査に必要な書類を提出しないとか、偽造した書類を提出した場合などです。
万一、住宅ローンが否認されたら
住宅ローンを借りるには審査がありますから、様々な要因によって承認を得られない、つまり否認されてしまうこともあります。残念ながら否認されてしまったときに買主が取るべき行動に注意してください。
売買契約において、住宅ローンの承認を得られないときに自動的に契約解除となるとしているならば、承認されなかったことを売主へ通知すれば契約解除の手続きに入ってくれます(不動産仲介業者を介しているときはその仲介業者へ連絡する)。
しかし、自動的に契約解除とならず、買主から売主へ契約解除することを通知することになっているときには、必ずその手続きを経なければなりません。具体的には不動産会社へ承認されなかったことと共に契約解除することを告げて、手続き方法を聞くことになりますが、書面での申出が基本です。
自動的に契約解除か、または買主から契約解除の申し出が必要かは、売買契約書の融資利用の特約の条項でご確認ください。
また、住宅ローンが否認されたときでも、他の金融機関に追加で審査申込することもできますので、不動産会社と相談するとよいでしょう。
引越し時期と引越し業者選び
売買契約後は、引越し時期を検討して早めに引越し業者を選ばなければなりません。希望の引越し時期が引越し業界の繁忙期と重なるときには、希望日で予約を取れないことは非常に多いですから、早めに決めておく必要があるのです。
また、繁忙期は引越し代が高額になっているので、可能ならば時期をずらした方がよいでしょう。最大の繁忙期は春休みですね。
引渡し時の境界確認
引渡しに際しては、売主から境界を明示してもらうことになっています。このことは、売買契約書にも明記されているはずです。購入する前に現地で境界を確認している人もいますが、そこまで気にせずに契約している人も多いので、引渡し前に必ず現地で境界の位置を確認してください。
境界の確認方法は、現地で売主から境界の位置がどこであるのか説明を受けることです。
境界標(杭など)の位置や境界線(隣地との塀の中央など)について聞いてください。境界線は、隣地との塀の中央ということが多いですが、物件によっては塀の手前や向こう側ということもありますから思い込みは危険です。
また、建築途中の新築住宅を契約した場合、契約時点では境界杭が現地で明らかになっておらず、境界位置を確認できていないことも多いです。工事中は、土砂や材料、車両などで隠れてしまうからです。完成した後も境界杭が地中に埋まったままという現場も少なくありませんから、引渡し前に必ず現地確認してください。
引渡し前の立会いで施工不具合を要チェック
新築住宅の売買契約をしてから引渡しまでの間には、買主による立会い検査の機会があります。建物の完成状態を買主の目でチェックし、施工不具合などがあれば指摘し、売主に補修対応して頂く大事な機会です。
未完成の住宅を契約した人にとっては、初めて完成状態を見学できるときなので、施工不具合をチェックするというよりはお披露目会のような形できちんとチェックせずに終えてしまっている人もいるので注意が必要です。
このときに、施工不具合をきちんと指摘して補修してもらわないと、入居後では対応してもらえないことや対応が悪くなることも多いので引渡し前の機会を逃さず活用してください。できれば、一級建築士といった専門家に依頼して建物のチェックをお願いするとよいでしょう。
もし、契約前に専門家に住宅診断(ホームインスペクション)を依頼していたならば、この時点ではその時に指摘した項目の補修状況を確認するとよいでしょう。
補修工事を確認してから引渡し
引渡し前の立会いで指摘した事項は、引渡し前に補修してもらう必要があります。さらに、その補修後の状況の確認も引渡し前に行うことが理想です。本来ならば、売主からそういったスケジュールを組んで提案してくるべきなのですが、補修や補修後の確認の機会まで考慮していないケースもあるので注意してください。
引渡し前の立会い(=内覧会)から、引渡し前では2週間程度の期間をあけておくことが理想ですが、ときには立会いの翌日に引渡しというスケジュールを組んでいることもあるので、早めにスケジュールを聞いておいてください。
補修後の確認を引渡し前にすべき理由は、購入した商品の完成状態を確認してから受け取って代金を支払うべきだからです。この順序を守らないと、売主がきちんと補修対応してくれないこともあり、買主のリスクが高くなってしまいます。
以上が、新築住宅(建て売り)の売買契約をしてから、引渡しまでの間で買主が注意すべき点です。引渡し後に後悔することのないように、ここに挙げていることはきちんと対応してほしいものです。
買主が引渡し前に抑えておくべき3大ポイントは「新築住宅の引渡し前のチェックポイント」をお読みください。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。