新築住宅の欠陥工事の要因を解説

新築住宅の建設現場において、欠陥工事が行われることがあることは、多くの人がニュースや被害者のブログ、YouTubeなどで見て、知っていることでしょう。

住宅を建築するときには、以下のような検査制度があり、欠陥工事や施工ミスといったものを無くす、または減らすための枠組みがないわけではありません。

  • 建築基準法に基づく中間検査と完了検査
  • 住宅性能表示制度に基づく現場検査
  • 瑕疵担保責任保険に加入するための現場検査

このように検査が入る制度があるにも関わらず、いつまでも欠陥工事による被害者が無くならない要因として、施工する会社と工事監理をする会社が一緒になっていることが非常に多いという問題があります。

もちろん、他にも要因はあるのですが、ここでは欠陥工事が起こる住宅業界の根本原因である施工と監理の問題について解説します。

住宅の欠陥工事が無くならない要因のワースト5

住宅の欠陥工事が無くならない要因のワースト5

いつまで経っても無くならい住宅の欠陥工事問題ですが、その要因はいくつかありますので、そのうち主だったものを紹介します。

  • 施工と工事監理を同じ会社がしていることが多い
  • 大工等の職人の育成システムが確立していない会社が多い
  • 現場監督の技術・知識レベルが低いことが多い
  • 工務店の経営者には現場に無関心な人がいる
  • 慢性的な人手不足

以上の5つが、欠陥工事が無くらなない要因となっています。

大工等の職人の育成に励む建築会社は出てきていますが、まだまだ少ないですし、現場監督はほとんど経験がないままに工事管理(進捗管理や下請け業者の手配など)を任されていることが散見されます。そのうえ、慢性的な人手不足で仕事の定着率も低くなっており、人を育てることが難しくなっている状況があります。

施工と監理の基礎知識

施工と監理の基礎知識

5つ挙げた要因のうち、「施工と工事監理を同じ会社がしていることが多い」という問題について解説するのですが、そもそも施工と工事監理という言葉の意味から整理しておきましょう。

施工とは?

建設現場で、基礎業者・大工・設備業者・内装業者などが行う工事作業を行うことです。1軒の住宅を建てるだけでも、多種多様な職人さんが現場に入って、施工していきます。

工事監理とは?

工事監理とは、建築士法の第2条8項において、「工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」と定義されており、一定の建築物については、建築士が工事監理を行うものとなっています。つまり、建築士の独占業務ということですね。

建築基準法では、一定の建築物については、工事監理者を定めることが必須となっていますので、住宅を新築する際には、建築士である工事監理者が工事監理していることになります。

工事監理の内容とは?

建築士が行う工事監理は、どのような業務をしているのでしょうか。それを理解するのに役立つものが、国交省の工事監理ガイドラインです。

このガイドラインには、工事監理の基本的な考え方として、「設計図書に定めのある確認方法による確認のほか、目視による確認、抽出による確認、工事施工者から提出される品質管理記録の確認等、確認対象工事に応じた合理的方法により行うこと」と記載されています。また、工事と設計図書の照合及び確認をした記録の整備もすることとなっています。

ちなみに、監理の内容として、仮設工事や地業工事、基礎工事、木工事、屋根工事、断熱工事、防水工事、造作工事、外壁工事、左官工事、内外装工事、給排水工事などの工程ごとに、確認項目や確認方法を提示されています。

建築士は、この業務において、責任を負うべき立場だと言えますが、その職務を適切に全うすれば、全国の欠陥工事を無くすことはできなくても、今より大きく減らすことはできそうに思えますね。

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施工と工事監理をわけるべきなのにわけていない

ここまでの説明で想像できると思いますが、施工という物を作っていく作業に対して、工事監理はチェック機能があるわけです。設計図書と異なる施工になっていたり、施工ミスを起こしていたりしたときに、その是正指示や是正方法の協議・判断などをする大切な役割があるわけです。

そうなると、本来ならば、チェックする人とされる人の間には、客観性が必要ですね。

施工する人と工事監理をする人が同じ会社にいると、適切にチェック機能を果たすことができるでしょうか?誰でも疑問に感じることです。

同じ会社なら、遠慮することもありうるし、社歴や役職などによっては、工事監理者が何も言えないと言うことも起こりうりわけです。

建築業界では、施工と監理は別である方がよいと長い間、言われてきました。しかし、現実には建築会社が自ら工事監理もしている現場が非常に多く、住宅の新築工事において施工と監理をわけているケースは稀です。分けることでコスト負担、手間の負担などが増えるので敬遠されがちです。

工事監理者が実質不在の現場が多い

同じ会社内で施工と工事監理をしていたとしても、工事監理が適切に機能しているなら、リスクを減らすことができます。しかし、適切に機能していないどころか、ほとんど何もしていないケースも少なくありません。

工事監理者が、建築確認申請書に明記されているにも関わらず、名前を表示しているだけで仕事をしていないケースがあるということです。つまり、工事監理という大事な業務が名ばかりとなっているのであり、欠陥や施工ミスが起こるのは必然とも言える状況です。

欠陥住宅の要因の1つ

本来の工事監理がなされていないことが原因の1つとなって、未だに新築工事における施工ミス、欠陥工事が無くならないでいるとも言えます。

これは、建築会社が工事と施工監理の両方をしているデメリットであり、リスクだと言えるでしょう。

ただ、誤解してはならないことは、建築会社が自ら自社の工事を検査するのは当然のことであり、自社で監理すること自体を悪というわけではないことです。きちんとした社内検査体制を築いている会社もあるのです。

しかし、残念ながら社内の検査体制を構築していない会社の方がはるかに多く、工事監理者が名前だけで監理業務をほとんどしていない会社が多すぎるため、施工ミスがなくならないのです。

欠陥工事が生じるリスクを抑えるためにも、施工者と工事監理者を別の会社に分けて、その工事監理者に適切な報酬を支払って本来の仕事をしてもらう必要があります。

工事監理を補うためのホームインスペクションが人気

建築会社にとって、工事監理を適切に行うことは、必要なことのはずではあるものの、主にコストの面で障壁があって、いつまでも改善しない状況で蟻、大事な業界問題となっています。ただ、問題意識を持っていない業界人が多いことから、今後も急な改善は期待しづらいでしょう。

しかし、家を建てる人、新築の分譲住宅(建て売り)を買う人にとっては、それを容易に許容できるものではありません。

そこで、消費者が自ら住宅検査のプロ(専門家)に、着工時から完成するまでの建築途中の住宅検査を依頼することが増えました。最近では、この検査サービスのことをホームインスペクションと呼ぶことが一般的となり、広く普及しました。

建築会社側に多くを期待できない状況であれば、消費者がホームインスペクションの利用を検討して、自己防衛することも必要です。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。
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住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。