住宅を購入しようとするとき、購入検討者は販売中の物件と出会う1つのきっかけとしてオープンハウスをしている物件を訪問して、建物の内部・外部を確認することがあります。つまり、現地見学や内見というものです。
しかし、住宅購入者のなかには、オープンハウスの意味を誤認していることや、せっかく行ったオープンハウスで何をすべきかわからないということがあります。
そこで、今さら聞けないオープンハウスの意味と基礎知識、買主や売主にとってのメリット・デメリット、購入検討者が現地見学するときの注意点を解説します。
オープンハウスとは?
最初にオープンハウスという用語の意味と基礎知識を紹介します。
販売中の住宅を見学(内見)できる現地販売会
オープンハウスとは、住宅を売るためにその売主や売主から委託された不動産会社が対象物件を一般公開して、購入検討者などに見学してもらう機会です。広告などを見て現地訪問した購入検討者が、実際の建物や敷地を確認することや、営業マンから説明を受けることができます。
住宅を賃貸するときにも同じように物件を公開する(オープンハウスをする)こともあります。
見学者は事前に予約しなくても内見できることが多いですが、物件や日程・曜日によっては、事前の予約が必要な場合もあります。予約が必要なケースは、あまり多くの見学者が見込めない平日に開催するときや、不動産会社が人手不足のとき、混雑を避けたいときなどです。
ちなみに、会社によっては、現地販売会や現地内覧会と呼ぶこともありますし、マンションの場合は、オープンルームと呼んでいることもあります。
オープンハウスとモデルハウスの違い
オープンハウスに近い意味で使われる用語に、モデルハウスというものがあります。この2つの違いを説明します。
モデルハウスとは、住宅展示場や大規模分譲地などでハウスメーカーや建売住宅の売主が建設して、注文住宅の建築や、大規模分譲地の建売住宅の購入を考えている人に見てもらい、見込み客を集める目的で運用されているものです。
基本的には、公開されているモデルハウスそのものを販売するのではなく、モデルハウスで確認できる外装・内装・設備などを参考に見てもらうことで、新築工事の受注や同じ分譲地の物件購入に結びつけようとするものです。つまり、販促活動のために用意された住宅です。ただし、その役割を終えたモデルハウスそのものが、販売されることもあります。
オープンハウスは、その住宅そのものを販売するという点で大きな違いがあります。
なお、マンションの場合は、モデルルームということが一般的です。
新築でも中古住宅でもオープンハウスが開催される
オープンハウスの対象となる物件は、新築住宅も中古住宅の両方です。
新築なら基本的には建売住宅で、その売主や不動産仲介業者などが実施しています。中古住宅なら、売主が不動産会社以外(一般個人など)の場合は不動産仲介業者が実施し、売主が不動産会社の場合は仲介業者のほかに売主が自ら実施することもあります。
完成住宅の見学会
オープンハウスとは何かについて説明してきましたが、実は、別の意味でこの用語を使うこともあります。
それは、施主から注文を受けて建築したハウスメーカーや設計者などが、完成した住宅を一般公開して、その住宅の施主以外に内覧してもらう機会としてのオープンハウスです。これは、「当社は、こういう家を作っていますよ」と実物を見てもらうもので、見込み客の獲得などの販促活動として実施しています。
オープンハウスという不動産会社もある
不動産業界でオープンハウスの話をしていると、オープンハウスという社名の不動産会社の話と混同することがあります。この会社は、規模が大きく、オープンハウスグループには、オープンハウス・ディベロップメント、オープンハウス・アーキテクト、ホーク・ワン、プレサンスコーポレーション、メルディアなどのグループ企業があります。
特に新築住宅の購入を検討している人なら、広告や物件を目にする機会も多いでしょう。
この記事では、あくまでも「販売中の住宅を見学(内見)できる現地販売会」としてのオープンハウスについて、書いていますので、同社に関することを書いているわけではありません。
オープンハウスのメリットとデメリット
オープンハウスをすることについては、その物件の売主にとっても買主にとっても、メリットとデメリットがありますので、それを説明します。
売主や不動産会社のメリットとデメリット
まずは、売主のメリットとデメリットから紹介します。ただし、売主だけではなく、その住宅を販売する不動産仲介業者や売主から販売委託を受けた販売代理業者も同様です。
メリット
売主や不動産仲介業者、販売代理業者にとってオープンハウスを行うメリットとしては、以下のことが挙げられます。
- 見込み客の獲得
- 見込み客との関係強化
- 契約(購入)の決断を促す機会となる
住宅の売主や売主から依頼された不動産仲介業者にとって、最大のメリットは、見込み客の獲得です。たとえ、その物件を買ってもらえないとしても、別の物件を紹介するなどして営業を継続することができます。
また、既に接点を持っていた見込み客に参加してもらうことで、新たなコミュニケーションの機会を作ることができ、関係を強化できることもあります。すぐに購入などを決断しない人であっても、将来のために関係を保っておいたり、強化したりすることは大事なことです。
そして、現地で実物を見学してもらうことで、購入の決断を促しやすいメリットもあります。買主に実物を見てもらって不安を払拭することや、他の見学者がいることを見てもらうことで、「早く購入しなければ、買えなくなる」という心理を期待でき、購入の決断に至りやすくなるのです。
デメリット
売主や不動産仲介業者、販売代理業者にとってのデメリットを紹介します。
- 広告費がかかる
- 人件費がかかる
- 来場者の数を予測しづらい
オープンハウスをするからには、できるだけ多くの来場者を得たいものです。そのためには、広告費に予算を割く必要があるので、その費用がかかります。また、広告の準備やオープンハウス当日の現場待機の営業担当者の人件費もかかります。広告を見た人からの問合せ電話・メールへの対応なども必要ですね。
また、当日の来場者の数を予測しづらいのもデメリットと言えます。オープンハウスに訪れる人の数は、その物件の立地・価格などの物件や販売に関する条件のほか、当日の天候にも左右されます。雨天はマイナス効果となることが多いですが、大雨になると全く来客がないということもあるのです。
ちなみに、中古住宅の売主が、不動産会社にオープンハウスをしてもらう場合、基本的には売主が広告費や人件費を負担することはないので、安心してください。
買主のメリットとデメリット
次に、買主にとってのオープンハウスのメリットとデメリットを紹介します。
メリット
買主にとって、オープンハウスのメリットとしては以下が挙げられます。
- 実物を見ることができる
- 営業担当者に質問しやすい
- 堂々と遠慮なく見学できる
買主にとって何よりも大きなメリットは、実物を見て購入判断することができる点です。部屋の大きさや設備などは、広告ではわかりづらいですし、そもそも広告に載せられた情報が十分ではないこともありますが、現地で実物を見れば多くのことを理解できます。
また、実物を見ながら、自然と営業担当者にわからないこと、聞きたいことを質問することができます。マイホーム購入ではわからないことが多いのも当たり前ですので、その住宅に関することだけではなく、住宅ローンや税金のことなどを聞くこともできます。
そして、堂々と気軽に見学できるのもメリットと言えます。購入検討者に見てもらうことを目的に開催されているわけですから、売主などへ遠慮する必要がないですね。
たとえば、中古住宅を売主が居住しながら販売しているケースでは、内見時に売主がいるために遠慮してしまう人も多いですが、たとえ中古住宅のオープンハウスであっても、その売主が希望して公開していることが明確ですから、そういったことがありません。
デメリット
買主にとって、オープンハウスのデメリットとしては以下が挙げられます。
- 営業担当者から個人情報や資金計画などを聞かれる
- 営業される
- 始めてのオープンハウスなら緊張する
- 開催日が限定されて日が合わないことがある
営業担当者から、氏名・連絡先などの個人情報や、年収・自己資金などの資金計画に関する情報を聞かれることが多く、この対応が嫌だと感じる人もいます。個人情報などの回答は、基本的には必須ではないので、最初は断ってもよいことを理解しておきましょう。
また、一度、見学した後にしつこく営業されたくないという人もいます。何度も電話がかかってくると面倒ですよね。
本来ならば、気楽に見学してもらうためのオープンハウスではあるのですが、それでも慣れない機会だけに緊張するという声もあります。これは、「営業されるかもしれない」という心理も影響しているでしょう。
そして、オープンハウスの開催日が限定されていて、見学したても行けないということもあります。そういう場合は、不動産会社に相談して、開催日以外でも見学させてもらえるよう調整するとよいでしょう。不動産会社も買って欲しいわけですから、対応してもらえるものです。
オープンハウスを見学するときの注意点
販売中の住宅を見学(内見)できる現地販売会としてのオープンハウスへ行くときに、購入検討者が知っておきたい注意点を紹介します。その物件を販売するわけではないモデルハウスとして公開される住宅のことは含まれていないので注意してください。
建物の仕様(仕上げ・設備も)をよく確認する
オープンハウスは販売中の現物を見ることができる機会ですから、間取りや大きさ、立地の確認だけではなく、建物の仕様をよく確認してください。
床・壁・天井の仕上げ材(フローリングや壁紙など)の種類や色、トイレやキッチンなどの住宅設備などを細かく確認するのです。食洗器の有無やサイズ、水栓がシャワー水栓かどうか、屋外水栓があるかなど、欲しい設備の有無をきちんと確認すべきです。
欲しいものがないときや内装材で変更したいものがあれば、購入後、自己負担で対応することを考える人もいますが、その場合は予算についても一緒に考えなければなりません。
建物周り・敷地周りも確認する
見学時に確認すべきなのは、建物の内部だけではありません。敷地内の建物以外の部分、たとえば駐車スペースが十分か、駐車スペースの屋根があるか、隣地との境界にあるフェンスや塀に問題ないかといったことです。
また、敷地と道路の関係も確認しましょう。道路より敷地が低いときに雨水の排水計画がどうなっているか、車の出入りがしやすいかといったことです。
チェックリストの準備
オープンハウスに行くなら、何を見るべきか事前にチェックリストを用意しておくと便利です。各居室などのスペースに必要な家具・物を置くことができるか、動線に問題ないか(実際に家事をイメージして動いてみる)、建物内外からのプライバシーの確保に問題ないかといったことです。
また、お勧めの方法は、それまでに見学した物件でよかった点、よくなかった点をリスト化しておくことです。そうすることで、各物件を比較しやすくなります。
建物の施工不良や酷い劣化の確認はプロに任せる
オープンハウスしている物件は、その建物自体を購入することになるわけですから、建物の施工品質(施工不良の有無)や酷い劣化の有無を確認すべきです。基礎の構造クラック(ひび割れ)や防水上の懸念がある隙間、構造金物の緩み、断熱材の状態などのチェックのことです。
しかし、この確認には、建築知識や経験・ノウハウが必要であり、建築業界の人でも慣れない人には難しいものです。それを専門性のない一般の買主が自分でするのは無理があります。
そこで、第三者のプロに依頼するとよいでしょう。それが、ホームインスペクション(住宅診断)というサービスです。依頼者に代わって建物をチェックしてくれるので、検討するとよいでしょう。
ホームインスペクションは初見学の後に利用する
初めて物件見学に行くとき、たとえば、オープンハウスに行くときに専門家(ホームインスペクター)にホームインスペクションを依頼しようとする人がいます。
しかし、まだ一度も見学していない物件なら、見学したときの第1印象で購入しないと判断することも少なくありませんので、インスペクションを依頼していると費用が無駄になってしまいます。また、初めて見学する人がホームインスペクションを入れたいと不動産会社に申し入れしても、受け入れてもらいずらいでしょう。
一般的には、1~2度は自分自身で内見し、購入に前向きになった時点でホームインスペクションを依頼するものです。
営業の連絡を断ることや連絡先を明確にする
営業担当者からの連絡(営業行為)が苦手な人である場合、その物件を購入しないのであれば、明確にお断りの意思表示をしましょう。中途半端な対応をすると、営業担当者としても「まだ可能性があるかもしれない」と考えて悪意なく頑張ることがあります。
また、連絡先を家族の誰とするか、連絡手段をどうするかを明確にしておくのも1つの方法です。対応が苦手な人に連絡させないようにしたり、仕事が忙しい人なら連絡先をメールに限定したりするとよいでしょう。こういったことも、最初にはっきり伝えておく方が、自分にとっても相手にとってもよいことです。
住宅ローンや税金の相談に弱い営業担当者もいる
オープンハウスに行くと、必ず、営業担当者と話すことになります。いろいろな質問・相談をするなかで、住宅ローンや住まいに関わる税金のことを質問する人も多いです。
本来ならば、営業担当者ならば、住宅購入・建築に関係する住宅ローンや税金のことについては、すらすら回答できるほどの知識を持っておくべきですが、残念ながら、こういったマネー系の相談を煩わしいと感じている人も少なくありません。そして、明らかに知識が不足している人もいます。
よって、聞いたことを簡単に鵜?みにせず、インターネットなどで確認したり、他社の営業担当者にも聞いたりして、事実確認しておくとよいでしょう。
オープンハウスに行かないと話が進まない(躊躇しすぎないように)
オープンハウスに行くと営業されてしまうので、億劫だと言う人もいます。気持ちはわかりますが、マイホーム購入を前向きに考えているのであれば、行ってみないと始まりません。営業活動は決して悪いことではないので、躊躇しすぎず前へ踏み出してみてはいかがでしょうか。
トイレは使えない
オープンハウス中の物件では、トイレが使えません。よって、事前に済ませておく必要があります。親が他の部屋を見学中に子供がトイレを使ってしまったという事例がありましたので、注意しましょう。
対象物件を汚さない・傷めない
オープンハウスでは、対象物件を汚してもいけませんし、痛めてもいけません。よって、見学中は飲食禁止が基本です。販売する側の不動産会社がドリンクを用意していることがありますが、こぼさないように注意しましょう。
スマホを落として床を傷つけたり、壁にバッグを擦って傷つけたりする事例や、庭で子供が走りまわって植栽を痛めてしまった事例もありましたので、注意しましょう。
撮影するなら許可をとる
まだ購入するかどうかわからない状況で、あまり勝手に撮影しないように注意してください。前向きに購入を考える物件ならば、帰ってから見直すために撮影したいときもありますね。そういうときは、不動産会社に撮影してよいか許可を得てから撮影しましょう。
特に中古住宅で、売主が居住中の場合には、いろいろな物が写るわけですから、配慮が必要ですね。
以上、住宅購入検討者がオープンハウスへ行く前に知っておきたいオープンハウスに関する基礎知識やメリット・デメリット、注意点を紹介しました。
執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。