2000年代になって徐々に社会に浸透してきたホームインスペクション(住宅診断)について、特に中古住宅(既存住宅)に関して一般化してきたことをかんたんに解説していきます。
ホームインスペクションの基礎知識
ホームインスペクションとは、住宅の購入や売却の際に、建築に関する専門的な知識と技能を持つホームインスペクターが建物の状態を調査し、報告するサービスです。
インスペクションは新築住宅だけでなく、中古住宅に対しても行われ、購入者や売却者にとって非常に重要な役割を果たします。
以下に、ホームインスペクションの基礎知識について詳しく説明します。
ホームインスペクションの目的
ホームインスペクションの主な目的は、住宅の現状を正確に把握することです。これにより、購入者は物件が抱える問題点(早急に補修すべき箇所など)を知ることができ、住宅購入時の参考とすることや、リフォームやメンテナンスの参考とすることができます。
買主にとっては、何も知らずに購入してからトラブルになることを防ぐ効果が期待でき、売主にとってはインスペクションを通じて物件の強みや弱点を明確にし、適正な価格設定や売却前の修繕をできる点がメリットと言えます。
ホームインスペクションの調査範囲
ホームインスペクションでは、住宅のさまざまな部分が点検されますが、主な調査項目は以下の通りです。
- 構造: 基礎、床、壁、天井、屋根などの主要な構造部分をチェックし、ひび割れや沈下などの問題を確認します。
- 外装: 屋根材、外壁、雨樋、窓周りなどのシーリングの状態を調査し、雨漏りの兆候を確認します。
- 住宅設備: 配管、建具、水周り設備などが正常に動作するかチェックします。
- 断熱: 断熱材の状態を確認し、エネルギー効率や室内環境の快適さに問題がないかを確認します。
- 内部仕上げ: 床材、壁材、天井材、窓、ドア、キッチンやバスルームの設備などの仕上げ部分を点検し、損傷や欠陥がないかを確認します。
ホームインスペクターの選び方
インスペクションを依頼する上で、第三者の立場である信頼できるホームインスペクターを選ぶことが重要です。資格(一級建築士・既存住宅状況調査技術者)や実績、経験、コミュニケーション力を重視して、依頼するインスペクターに依頼しましょう。
ホームインスペクションは中古でも新築でも普及している
今の時代、住宅の購入時にホームインスペクション(住宅診断)を利用する方は一般化しており、新築建売住宅の購入前や建築中に契約した新築住宅の完成後・引渡し前のときに買主がインスペクションを取り入れるようになりました。住宅購入が一生に何度もない大きなイベントであり、数千万円もの金額を投じて行うリスクを伴う行為であるだけに、自然な時代の流れだと言えます。
ホームインスペクション(住宅診断)を利用するということは、何も新築住宅に限ったことではありません。中古住宅の購入時にも多く利用されております。ちなみに、中古住宅は既存住宅とも言い換えられますが、既存住宅のインスペクションの普及は今後も加速していくでしょう。
ホームインスペクションは国交省も注目
国交省は2013年6月に「既存住宅インスペクション・ガイドライン」をとりまとめました。
国交省のHPには、「消費者が中古住宅の取引時点の物件の状態・品質を把握できるようにするため、第三者が客観的に住宅の検査・調査を行うインスペクションにつき、検査・調査を行う者の技術的能力の確保や検査・調査の項目・方法等のあり方について検討を行い、今般「既存住宅インスペクション・ガイドライン」をとりまとめました。」とあります。
既存住宅のホームインスペクション(住宅診断)は、国も注目し適切な普及を後押ししている状況です。
さらには、2018年4月に改正・施行された宅建業法により、売買時にはホームインスペクション(住宅診断)について、不動産業者が買主や売主に対して説明することやホームインスペクション業者(住宅検査事業者)を紹介・斡旋できるか告知することが義務化されました。
ホームインスペクションの義務化(告知と紹介・斡旋)も参考にご覧ください。
中古住宅を購入される方の多くは、「建物はまだ長く居住できるだろうか」「買ってすぐに大きな欠陥(瑕疵)が見つかって多額の補修費用がかからないだろうか」などと建物に対する不安を持っています。
そして、長く既存住宅(中古住宅)のホームインスペクションをしてきた経験から、住宅によって建物の状態が大きく異なることをアネストはよく知っているので、購入時のインスペクションの重要性や有効性をよくわかっています。購入する住宅によって、失敗もありうることをわかっているのです。
これから中古住宅を購入される方は、できれば契約される前に、既に契約した方や入居された方はなるべく早いタイミングでホームインスペクション(住宅診断)の利用を検討されることをお奨め致します。
ホームインスペクション業者は自分で探すべき
新築でも中古でも言えることですが、実際にホームインスペクション(住宅診断)を利用する方が注意しなければならないのは、買主の立場にたったインスペクションを利用するということです。このサービスが普及するに従い、不動産業者などが販売促進のためにインスペクションを取り入れることが増えてきました。
買う人のためのインスペクションが売るためのインスペクションになってしまっていることも増えているということです。売るためのインスペクションは、買主に適切に伝えるべき情報を伝えなかったり、施工不具合や問題ある劣化事象などの説明の仕方で表現を抑えてあまり問題ないかのように印象付けたりすることがあります。これでは、何のためのホームインスペクション(住宅診断)であるかわかりません。
ホームインスペクション(住宅診断)を利用する時は、不動産業者の関連会社や紹介などではなく、ご自身で提供事業者を探すべきでしょう。アネストのホームインスペクション(住宅診断)は買う人の立場で行うサービスです。建物の保証も希望するなら、中古住宅建物保証(既存住宅かし保険付き)も検討するとよいでしょう。
実際に業者探しをする際は、ホームインスペクション業者の選び方を参考にしてください。
執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。