売主が不動産会社である中古住宅の注意点とメリット

中古住宅を買おうと思っていろいろな物件を見学していると、不動産会社が売主になっている物件が多いことに気づいた人もいることでしょう。中古住宅なのだから、売主はそれまでそこに住んでいた人だろうと考えがちですが、実は不動産会社が売主になっていることはよくあることです。

不動産会社が元の所有者から買い取って、それを再販しているケースですね。

不動産会社が再販している中古住宅の多くは、リフォームして綺麗にしています。買主にとってはそれが魅力の1つになっているようですが、実は気を付けなければいけないこともあるのです。

購入したい中古住宅の売主が不動産会社だとわかったときに注意しておきたい点を解説します。

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中古住宅のホームインスペクション

リフォーム済みで建物の症状が隠蔽されていることがある

不動産会社が買い取った物件を何もせずにそのまま再販(転売)することはほとんどありません。多くの場合で、リフォームしてから再販しています。

クロスの張替えだけか設備交換もしているか

リフォームと言ってもいろいろありますが、室内の壁や天井のクロスの張替えをするのは当たり前になっていて、それに加えて床フローリングの張替えをすることもありますし、扉を交換することやトイレなどの水回り設備まで交換していることもあります。

トイレ、キッチン、洗面台、浴室(ユニットバス)まですべて交換すると相当なコストがかかるため、そこまですることは多くないですが、それでも見た目は随分と綺麗になるものです。

見学時には綺麗な内装に注意

ここで注意したいのは、購入検討者が見学したときには既に内装がリフォームされて綺麗になっているという点です。

綺麗になっているからよいというわけではなく、元々あった重大な劣化症状がリフォームによって隠されているかもしれないという問題があるのです。

たとえば、壁や天井にいくつものひび割れが入っていたり、雨漏りの染みがあったりしても、クロスを張り替えたばかりならば、症状が再発しておらず問題を発見しづらいわけです。不動産会社がそういった症状を隠す目的でリフォームしているかどうかはわかりません。買い取った価格よりも高い価格で売るために工夫するのは当たり前のことですが、もし瑕疵の隠ぺいをしているようならば大事ですね。

買主としては、リフォーム済み物件ならば症状が隠蔽されている可能性があることを知っておく必要があるでしょう。

リフォーム済み物件の対策

効果的な対策は、第三者によるホームインスペクション(住宅診断)です。リフォーム済みの状況を確認してもらうのも大事ですが、床下や小屋裏といったリフォームされていない箇所まで確認することがより重要です。基礎や土台、梁などの基本構造部分の状態をチェックしてもらうことで、購入判断の参考とすることができます。

既存住宅売買瑕疵保険に加入できないことがある

中古住宅に既存住宅売買瑕疵保険に加入した物件を選びたいという人もいます。古い住宅だけに保険が付いていた方が安心だというのは当然です。

既存住宅売買瑕疵保険に加入できない物件は多い

この保険には現場検査を受けて審査に適合したものしか加入できないので、もともと加入できない物件も多いのですが、不動産会社が売主になっている場合、それが障壁となって加入できないことも多いです。

既存住宅売買瑕疵保険には、検査事業者が検査して保険に加入する方法や不動産仲介業者が加入する方法、そして売主である不動産会社が加入する方法があります。

不動産会社が売主である場合、検査事業者が検査して保険に加入する方法がとれないため、不動産会社がこの保険の取り扱いをしていなければなりませんが、残念ながら取り扱っていない業者が多いです。買主が希望しても取り扱わないとの一点張りで対応してもらえないことは多いのです。

住宅ローン控除を受けられないこともある

建物の条件(建築年月日等)によっては、既存住宅売買瑕疵保険に加入することで住宅ローン控除を受けらえるというメリットがあるのですが、不動産会社が対応していないためにこのメリットを享受できない買主は少なくありません。

売主が不動産会社だと聞いた時点で、既存住宅売買瑕疵保険を取り扱っているかどうか確認するとよいでしょう。

不動産会社が売主である中古住宅のメリット

不動産会社が売主である中古物件の注意点を紹介しましたが、一方でメリットもありますので紹介します。

売主の瑕疵担保責任の期間が2年以上

不動産会社が売主である場合、売主が負う瑕疵担保責任の期間は引渡しから2年以上にしなければなりません。万一、売買契約でこれよりも短い期間を定めていても無効になります。

これに対して、一般個人の人が売主になっている中古住宅、つまり自宅を売却している物件の場合、売主の瑕疵担保責任は長くて引渡しから3ヶ月です。契約によっては、2カ月としていることもあれば、免責としていることもあります。免責とは、売主が瑕疵担保責任を負わないというものです。

買主としては、売主の瑕疵担保責任が長い方が安心ですから、不動産会社が売主であることはメリットだと言えますね。

※瑕疵担保責任は、2020年4月1日より施行された改正民法により、契約不適合責任に変わりました(2020年4月8日:追記)。

リフォーム済みなら自分でリフォームしなくてよい

最初に、「リフォーム済みで建物の症状が隠蔽されていることがある」とお伝えしましたが、リフォームしていることのメリットがあるのも事実です。

中古住宅の購入に際して自己資金を使ってしまい、自分でリフォームする資金がない、またはちょっとしたリフォームならできるだけ全面的にきれいにするのは難しいという人も少なくありません。そういった人にとっては、販売時点でリフォームされているのであれば、購入資金の準備だけで済むため購入しやすくなります。

内装や設備などに対してこだわりを持っている人にとっては、購入後に自分で好きなようにリフォームしたいと考えますが、それほどこだわりがないならば、むしろ面倒なリフォームの打合せや発注などをしなくてよいことがメリットにもなります。

不動産会社が売主である中古住宅には、大事な注意点とメリットの両方があることがわかったことでしょう。何を重視するかによっても判断が変わってくるところですが、慎重に検討してみましょう。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。
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住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。