ホームインスペクションの所要時間と開始時間の基礎知識と注意点

住宅を購入するときには、多くの人がホームインスペクション(住宅診断)を利用していますが、不動産会社や売主との間で調査日時を調整する際、あまり深く考えずに開始時間を決めてしまうと、ホームインスペクション業者に依頼する段階で、時間の調整を提案されることがあります。

調査日については、空き状況で決めればよいことですが、開始時間については、インスペクションの所要時間と調査に向かない時間帯を外すことを考慮して調整したいものです。ここでは、ホームインスペクションの基本を簡単に紹介した上で、その所要時間について理解しておくべきことと、それを考慮した開始時間の設定について注意点を解説します。

インスペクションの依頼を検討し始めた初期段階で読んでおくことが望ましい内容になっています。

ホームインスペクションとは?基本をおさらい

ホームインスペクションとは、新築住宅の施工状態や中古住宅の劣化状態を把握するために行う建物診断で、住宅の売買時には、売主がその調査報告書を売却時の資料として購入検討者に提供したり、購入検討者が購入時の参考として利用したり、所有者がリフォーム前などに現況把握のために利用したりしています。

一般的には、建築士資格をもっているホームインスペクターが行いますが、一部では資格がなかったり、現場経験が不足する人が実施していたりすることもあるので、依頼者はどの業者に依頼するか慎重に検討しなくてはなりません。

ホームインスペクションの時間はどれくらいかかる?所要時間を理解しよう

ホームインスペクションの所要時間

ホームインスペクションを依頼するときに依頼者が知っておくべき要素の1つが、所要時間です。

調査時間だけではなく説明の時間も必要

所要時間の大半は調査にかける時間ですが、実はそれだけではありません。調査を始める前に、挨拶や調査の進め方の説明があり、調査の途中または調査後に結果の説明と質疑応答の時間もあります。この説明や質疑応答の時間も長引くことがあるので、トータルで考えておく必要があります。

対象物件の条件によって所要時間が異なる

調査にかける時間は、対象物件の条件によって大きく異なります。どういった事項が時間に影響するのか、紹介します。

  • 建物面積:大きいほど時間がかかる
  • 建物の施工品質:施工が悪いと指摘が多く、説明や記録に時間がかかる
  • 建物の劣化状態:劣化が酷いと指摘が多く、説明や記録に時間がかかる
  • 築年数:古いほど劣化状態が酷いことが多いため時間がかかる
  • 建物プラン:計上・仕様によっては時間がかかる

以上が、所要時間に影響を及ぼす物件の条件です。

最後に挙げた「建物プラン」はわかりづらいかもしれませんので、補足しておきます。

たとえば、床下の高さが狭く、障害物が多いと移動に時間がかかります。また、床下の地面がコンクリートの場合に比べて土の場合は時間がかかりやすい傾向にあります。

利用するサービスによっても所要時間が異なる

ホームインスペクションの所要時間は、物件の条件だけではなく、利用するサービスの種類によっても違いがあります。特に大きな影響を及ぼすのが、床下と小屋裏(屋根裏)の詳細な調査を付けるかどうかです。

多くのインスペクション業者で、床下と小屋裏の内部へ進入して行う調査はオプション設定となっています。これは、床下などへ進入できる住宅とできない住宅があるため、不公平を無くすためにも必要なことです。

この床下や屋根裏へ進入して調査を行う作業は、普段から慣れているものであっても、多少の体力と注意力が必要で気を抜けない作業であり、時間もかかります。

物件の条件と利用サービスで所要時間の事例を紹介します。建物の前提条件として、建物面積が100平米(約30坪)とした場合の事例です。

床下および小屋裏の進入調査の有無新築一戸建ての完成物件中古一戸建て(築30年)
無し2時間前後2.5時間前後
有り3~4時間前後3.5~5時間前後

実際には、建物プランや依頼者からの質問量、指摘事項への売主からの説明、指摘事項の量と質などの様々な条件によって、小さくない差異があるので、ここで紹介した時間は参考程度ととらえておきましょう。

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インスペクションの開始時間に注意しよう

インスペクションの開始時間

ホームインスペクションの依頼を考えている人から、「16時に開始してほしい」などと夕方のお時間を希望されることがあります。売主や買主、不動産会社などの都合もあり、当日に立ち会う人の予定を調整した結果、どうしても遅めの開始時間となるというお話を聞くこともあります。

開始時間は意外と大事

ホームインスペクションを依頼するに際して、その開始時間をいつとするかは、意外と大事な問題ですので、注意してください。

日が落ちて暗くなると見づらくなりますが、そうなるとせっかく依頼したインスペクションなのに、専門家の調査能力を十分に活かしきれないリスクが生じます。暗くてわかりづらいとなれば、依頼者としては支払う費用が無駄になったと感じることもあるでしょう。つまり、暗い時間帯は調査には向かないということです。

前述の所要時間を参考にしつつ、まだ日があるうちに調査を終えられるような開始時間に設定することが理想です。物件の条件や利用するサービス範囲によっても異なるものですから、ホームインスペクション業者に相談してから決めるとよいでしょう。

多くの住宅において、開始時間を午前に設定しておけば、まず問題はないでしょう。特別に大きな面積の住宅の場合は、依頼を確定させる前にインスペクション業者に相談することをお勧めします。

どうしても開始時間を早められないときの対策

午前に開始したくても、仕事や家庭の事情、売主側の事情などによって、開始時間を15時などの少し遅めの時間にせざるを得ないとの相談を受けることがあります。そういったときに、対策として考えて欲しいことを紹介します。

新築なら売主・建築会社の立会い時間を工夫する

新築の完成物件でホームインスペクションを行う場合、売主や建築会社から「長時間の立会いは無理だ」と言われることがあります。また、15時に開始と指定されてしまうときもあります。

このようなときは、早めに現地の建物の開錠だけをお願いし、売主などが一度退出し、調査の終了時間の少し前に戻ってもらうような段取りを提案してみてください。

例えば、15時開始を指定された場合、14時に開錠のみしてもらって、17時頃に現地に戻ってきてもらうといった形です。具体的な時間は、依頼するサービスの範囲や対象物件の条件によって異なるので、事前にインスペクション業者に相談しておくことが望ましいです。

屋外の調査を先行する

ホームインスペクションでは、建物面積が100平米程度の建物の場合、屋外で行う調査は30分程です。屋外だけでも意外と時間がかかるものですね。

売主などが、どうしても早めの時間に現地に来られない場合、建物規模などに合わせて、売主などが現地合流する30分程度前から屋外の調査だけ先行して開始する方法が有効です。ただし、屋外とはいえ、敷地内に立ち入って調査するわけですので、「30分くらい前から、敷地内に立ち入って屋外だけ調査を進めておいてよいか?」と事前に確認して承諾を取っておく必要があります。

新築住宅であれば、この承諾を得られることが大変多いですが、中古住宅では承諾を得られないケースもあります。まずは、不動産会社や建築会社に聞いてみましょう。

やむを得ないときの予備知識

どうしても開始時間を早く設定できず、調査途中で暗くなりそうな場合、以下の事項を理解しておきましょう。

  • 暗くなる前に屋外を優先して調査してもらう(外壁などの高い位置が見づらくなる)
  • 暗くなる前に室内の調査をしてもらう(屋外の方がより優先)
  • 床下はもともと暗いスペースなので、外がある程度は暗くても調査できなくはない

できれば、早めの調査開始とするよう段取りを試みてください。

まとめ

ホームインスペクションの所要時間と開始時間の関連性や開始時間を決めるときの注意点、工夫できることなどを紹介しました。

建物面積が100平米程度の建物で、床下・屋根裏の調査も依頼するならば、11月から3月は、できれば13時までに開始し、それ以外は14時までに開始が1つの目安です。ただし、築年数や建物プランなど、様々な条件によって影響を受けることは理解しておきましょう。

アネストの住宅インスペクション

執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。
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住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。