建売住宅を購入するときでも注文住宅を新築するときでも、建物の坪単価への関心は高いです。検討している物件の坪単価やハウスメーカー、工務店が提示する住宅の坪単価を比較検討するとき、坪単価の相場や平均的な単価が気になる人は多いでしょう。
新築住宅の建物の坪単価について、計算方法や相場、注意点などについて解説します。
坪単価の意味とその計算方法
建物の坪単価とは、その建物を提供する価格の1坪あたりの価格のことです。建売住宅であれば、販売価格のうち建物価格を建物の坪数(建物の面積)で割ったものであり、注文住宅であれば建築費用を建物の坪数で割ったものです。
建売住宅の坪単価
建売住宅の広告などを見て販売価格や面積を確認し、その情報から建物や土地の坪単価を求めますが、たとえば、以下の条件の建売住宅の坪単価を求めてみましょう。
販売価格 | 4,600万円 (土地の価格:2,800万円、建物の価格:1,800万円) |
建物面積 | 30坪 |
土地面積 | 35坪 |
この場合の建物の坪単価は、以下のとおりです。
建物の坪単価
1,800万円÷30坪=60万円
ちなみに、土地の坪単価は、以下のとおりです。
土地の坪単価
2,800万円÷35坪=80万円
建物価格が不明な場合の計算方法
但し、実際に建売住宅の広告などを見てみると販売価格は載っているものの、土地と建物の価格、つまり内訳が載っていないこともあります。その場合、建物価格の坪単価の計算ができないのかと言えばそうではありません。消費税から坪単価を計算する方法があります。
消費税は土地には課税されず、建物にのみ課税されます。これを知っておけば、消費税の金額から建物価格を逆算することができます。以下のケースで計算してみましょう。
販売価格 | 4,650万円(消費税150万円含む) |
建物面積 | 25坪 |
土地面積 | 30坪 |
この場合、消費税から建物価格を逆算する計算式は、まず次の式で建物価格を求めます。
消費税から建物価格を逆算する計算式
150万円÷10%=1,500万円(建物価格)
そして、次に以下のように坪単価を求めます。
建物の坪単価
1,500万円÷25坪=60万円(坪単価)
ちなみに、販売価格から建物価格と建物の消費税を引いた価格が土地価格で、それを土地の面積で割ると土地の坪単価も計算できます(以下のとおり)。
土地価格
販売価格(4,650万円)-建物価格(1,500万円)-建物の消費税(150万円)=土地価格(3,000万円)
土地の坪単価
3,000万円÷30坪=100万円
注文住宅の坪単価
注文住宅の場合は、建築費用を建物の坪数(面積)で割ればよいので計算しやすいですね。
建築費用 | 2,250万円 |
建物面積 | 30坪 |
上の前提条件で建物の坪単価を計算すると以下のとおりです。
建物の坪単価
2,250万円÷30坪=75万円(坪単価)
坪単価の計算については、注意点も多いですが、それはこのコラムの後半でお伝えします。
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新築住宅の坪単価の相場
新築住宅を購入しようとされている方から、購入予定物件の価格が高すぎないか質問を受けることがありますが、アネストでは価格の査定など価格に関する相談を行っておりません。土地価格は、地域・土地の形状・道路条件・面積などの諸条件によって、相場がある程度わかりやすいものですから、同じ地域で多くの物件情報を見ていくことである程度は感覚がつかめるかもしれません。
しかし、建物価格の相場はあまり単純に評価できるものではありません。ハウスメーカーや工務店によって、建物のグレードが異なりますし、同じハウスメーカーであってもグレードをいくつも分けていることもあれば、個別の希望(設備や形状など)によっても大きく異なることも多いです。
とはいえ、各社が提示する価格帯は凡その範囲があります。坪単価別に高価格帯・中価格帯・低価格帯でわけてみましょう(具体的な社名の掲載は控えています)。
高価格帯のハウスメーカーの坪単価
高価格帯と言えるのは、坪単価90万円程度以上です。大手ハウスメーカーの多くはここに該当します。なかには坪単価が100万円を超える見積りとなることもありますので、資金にゆとりのある人や土地を所有していて土地購入費用が必要ない人が選択することが多いです。
中価格帯のハウスメーカー・工務店の坪単価
中価格帯と言えるのは、坪単価65万円~75万円の住宅です。地元密着型の工務店は、この価格帯の住宅を提供することが多いですが、建売住宅でも55万円~65万円程度の価格で提供することが多いです。
低価格帯のハウスメーカー・工務店の坪単価
低価格帯の坪単価は、55万円未満です。しかし、住宅建物の低価格化が進んでいるため、40~50万円ぐらいの住宅は多くなっており、低価格という印象をもたない業界人も増えているでしょう。建売住宅は、低価格を最大のアピールポイントとしている物件も多く、その場合は低価格帯の住宅に該当するでしょう。
また、ローコスト住宅路線を強調するハウスメーカーの注文住宅でも、50万円未満であることもあります。注文建築でも低価格で取得できるようになったことは選択肢が増えていいことだと言えます。
建築費の高騰により、2023年12月に坪単価の記載を変更しました。人件費、建築資材、住宅設備機器の全てが上がっていますね。
建売住宅・注文住宅の坪単価を比較するときの注意点
建売住宅でも注文住宅でも、他の物件やハウスメーカー、工務店と比較検討するときに、坪単価を単純計算してその単価で比べてもあまり意味はありません。この比較だけであれば、住宅購入・取得に失敗することでしょう。
坪単価や総額費用を見るときに注意すべきこととしては、以下のようなものがあります。
- 低価格の坪単価で釣って追加費用の請求をする
- 設備・内装のグレード(グレードアップで坪単価があがる)
- 含まれる工事内容の相違に注意
- 施工床面積と建物延床面積の使い分けで誤魔化す
- アフターサービスや保証期間の相違に注意
- 消費税を含むかどうか
これらを順番に見ていきましょう。
低価格の坪単価で釣って追加費用の請求をする
注文住宅でマイホームを新築する場合、広告やWEBサイトに大きく強調して表示されている坪単価を目にすることでしょう。「坪単価 35万円」と書いておれば、これは安いですね。
しかし、広告などに表示されている坪単価は建物のプランが真四角で仕様・設備のグレードが最も低いということが多く、現実に発注を依頼する住宅ではそのような価格から大きく離れたものになることが多いです。なかには、必要なはずの設備が含まれていない価格を提示していることもあります。
低価格の表示は、新規顧客からの問い合わせを得るためのエサのようなものであることを理解しておきましょう。工事請負契約を結ぶ前に、実際の価格がどれぐらいのものになるか見積り書で確認できますが、坪単価を計算すると全く違ったものになると思っておきましょう。
設備・内装のグレード(グレードアップで坪単価があがる)
建売住宅でも注文住宅であっても、建物価格を比較するのであれば、契約に含まれている設備や内装、外装のグレードの違いを確認しておきましょう。クロスが異なるだけでも、クロスの使用面積が大きければ、価格に影響がありますし、設備の相違は1つの設備だけで数十万円の違いを生むこともあります。
同程度のグレードでなければ、建物価格の比較検討は難しいものです。
含まれる工事内容の相違に注意
契約対象となっている工事項目や含まれる設備の有無についても確認が必要です。影響の大きな項目の1つは外構工事です。最近の建売住宅であれば、隣地との境界を2~3段積みコンクリートブロックとフェンスということが多いですが、そういった仕様を確認すると同時に契約対象となっているのか確認しましょう。
植栽が何も含まれない住宅と植栽を含む住宅という違いもありますし、門扉の有無で違いがあることもあります。また、一般的に必要だと考えられる網戸やトイレの換気扇が標準仕様になっていない建売住宅もありますから、安いと思って購入したものの、購入後に必要なものを取り付けていけば何も安くなかったということもあります。
施工床面積と延床面積の使い分けで誤魔化す
建物の坪単価を比較するときに、一般消費者が陥りやすいワナとしては、建物の床面積の種類による誤解があります。
坪単価を計算するときには、建物価格を建物面積で割ることで算出しますが、同じ建物であっても建物面積の表示が異なることがあります。それが、施工床面積と延床面積の違いです。
延床面積はバルコニーや建物の軒の部分を含まないことがあります(条件による)が、施工床面積はこれらを含んだ本当の面積です。全く同じプランの住宅であっても、延床面積で表示するか施工床面積で表示するかによって面積が異なることがあり、面積が異なれば、坪単価の計算結果も異なってくるのです。
A社を施工床面積で計算し、B社を延床面積で計算して比較してしまっている人もいるため、注意してください。ハウスメーカーが坪単価を安く見せようとして、意図的に表示していることもありますから、誤魔化されないようにしましょう。
アフターサービスや保証期間の相違に注意
価格を比較するときは、ハード面だけではなく、ソフト面も比較して選択したいものです。アフターサービスや保証期間の違いが会社によって異なりますから、各社の条件をよく理解して検討しましょう。
10年保証を謳っている会社は、法律で定められた最低限度の保証しかしていないということでもありますから、このことも知っておきましょう。低価格を売りにしている会社では、多くの場合、これに該当しています。
消費税を含むかどうか
坪単価を比較するときに、A社では消費税込みの金額でみていて、B社では消費税を除く金額で見ていたということもあります。10%もの消費税がかかることを考えれば、その影響が大きいことはわかりますね。
価格や坪単価を比較するときには、とにかく比較対象の条件をできる限り同じにする必要があるということです。同じ条件とすることが難しい点については、その金額差についても一緒に比較検討する必要があります。
建売住宅と注文住宅の家の価格比較だけではなく、ハウスメーカー間の比較にも活かしてください。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。