不動産・住宅業界の方ではない、一般の皆さんの持つ印象として、中古住宅の売買件数は大きな流れとして増えていると感じているのでしょうか?
不動産・住宅業界で働く人たちのなかには、中古住宅の市場が成長しつつあり、今後は更に伸びていくと感じている人が少なくないようです。実際の中古住宅市場がどうなっているか、公表されているデータを見ていくと必ずしも印象通りではないと考える人もいるでしょうす。
今回は、レインズデータを確認して、中古住宅の売買市場の状況・動向を確認してみます。
国の施策は、中古住宅の流通量の拡大を図った
2006年に住生活基本法が施行され、住宅ストックの量の充足や少子高齢化と人口・世帯減少という社会情勢の大きな変化から、住宅政策を転換するとこととし、安全・安心で良質な住宅ストック・居住環境の形成、住宅の取引の適正化、流通の円滑化などの施策を講じるとしました。
新築住宅を多く建設しても、人口・世帯数が減るのだからストック(つまり使用しない在庫)が増えてしまうのではないかと考え、新築住宅を抑制し、中古住宅の流通量を伸ばすというのは、日本のこれからの社会に合いそうに思えますね。
こういったニュースが不動産・住宅業界をかけめぐったことがあったため、多くの業界人がそのように考えるようになったのではないでしょうか。
首都圏の中古一戸建ての売買市場(成約件数)
それでは、実際の動きがどのようになっているのか、東日本不動産流通機構が公開しているレインズデータを見ていきましょう。
ちなみに、東日本不動産流通機構が公開しているレインズデータは、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県のものです。このエリアにおける数値を基にしていることをご理解の上でご覧ください。ここでは、都道府県別にわけず、この一都三県のデータの合計値です。
最初に見るデータは首都圏の中古一戸建ての成約件数です。成約件数は、売買が成立したとして登録されているものですから傾向を見るには参考になると言えるでしょう。
こちらは、1992年~2022年の期間における首都圏の中古一戸建ての成約件数が上のグラフです(前述したレインズデータを基に当サイトで作成)。
1992年は9,735件でしたが、2022年には13,132件となっており、約1.35倍となっています。住生活基本法が施行された2006年の10,467件から見れば、約1.25倍です。この数値の変化を見て中古一戸建ての流通量が大きく増えた、成長したと考えるかどうかは考えがわかれるところでしょうか。
人口が最も多い団塊ジュニア世代がもっともマイホームを購入する頃(30歳代の頃)は、2005年~2014年頃ですが、その時期を過ぎても成約件数が増えていることを考えれば、執筆者個人としては「非常に大きな」とまでは言わないまでも、「それなりに」成約件数が増えており、中古一戸建ての売買市場は拡大していると考えています。
首都圏の中古マンションの売買市場(成約件数)
次に、首都圏の中古マンションの成約件数を見てみましょう。
中古一戸建てと同じく、前述のレインズデータを基に当サイトで作成した1992年~2022年の期間における成約件数のグラフです。
1992年は20,580件でしたが、2022年には35,381件となっており、約1.72倍となっています。住生活基本法が施行された2006年の29,719件から見れば、約1.19倍です。
中古一戸建てよりもマンションの方が、増加傾向だとわかりますね。
ただし、一戸建てとの違いとして、団塊ジュニア世代がもっとも購入する2005年~2014年頃の伸びに比べて、その後の伸びは抑えられています(伸びてはいます)。
中古マンションは、中古一戸建て住宅と違って、投資用に購入する人や外国人の購入も多く、さらには販売中の物件が減ったこともあり、価格も高くなっています。こういったことが、2016年頃以降の成約件数が伸びていない要因になっている可能性があります。
中古住宅の流通量は増えたか?(まとめ)
ここまでのデータを見てみていかがでしょうか。思っていたとおりに伸びていると感じた人も、思ったほど伸びていないと感じた人もいるのではないでしょうか。
私としては、確かにある程度は伸びてきているものの、まだまだ伸びる余地があるのではないかと考えています。ただし、価格の高止まりは市場動向に影響しますし、個人所得の増加、売り物件の増加といったことがないと、マイホームの購入需要が数値に繋がりづらい状況だとも考えています。
執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。