一戸建て住宅の床下調査のメリットと重大な指摘事例

一戸建て住宅を購入するとき、床下や屋根裏について心配する人は多いです。何も専門家に言われなくても、床下は大事なところだろうと想像はつくわけですね。今回は、なぜ床下が一戸建て住宅の様々な箇所のなかでも特に重要な箇所であるのか、解説します。

新築物件であっても中古物件であっても、一戸建てを買うならば床下の何をチェックすればよいかもわかるので、住宅購入で失敗しないよう役立てることができるでしょう。

基礎や土台など主要構造部を直接確認できる

床下を調査する最大のメリットは、床下だからこそ確認できる建物の主要構造部をチェックすることができ、それによって構造的な欠陥や不具合がないか確認できることです。

床下の基礎

床下点検口から床下を覗くと、まずは基礎コンクリートが目に入ります。建物の外側からも基礎を見られると考えている人は多いですが、外側から見ているのは基礎コンクリートの上から塗られたモルタルです。モルタルで綺麗にお化粧しているものを見ているだけなので、コンクリートの状態を直接に確かめられるわけではありません。

これだけをとっても床下調査をする意義が十分にあるのですが、他にも大事な主要構造部を確認することができます。木造住宅であれば、木部の土台や大引きを確認でき、この土台などを留めている金物を確認することもできるのです。これも非常に重要なチェックポイントであることは間違いありません。

また、鉄骨造であれば、鉄骨材やボルトの状態を確認することができます。鉄筋コンクリート造の場合は、そもそも床下スペースが無い構造となっていることが多いですから、そのプランによってスペースの有無を確認する方が先になります。

基礎外部に問題が無くても床下側に構造クラックがある事例

床下のひび割れ

建物の外側から見える基礎は、表面にモルタルが塗られているため、コンクリートを直接に確認できるわけではないことは前述の通りです。ここは大事なことなので、もう少し事例を交えて解説します。

表面のモルタルはコンクリートに比べれば、クラック(ひび割れ)は生じやすいものです。このモルタルのみに生じた軽微なひび割れは、ヘアークラックと呼ばれ、構造的な問題はありません。一方でコンクリートそのものに生じたクラック(ひび割れ)があれば、構造クラックと呼ばれ、補修等の対応が求められます。

外部から見てひび割れがあっても、ヘアークラックの可能性があるということです。床下側から見てひび割れがあれば、それは多くの場合、構造クラックですので、補修を検討すべきものだと言えます。

建物の外側からのみのチェックで、ひび割れが無いから大丈夫だろうと安心しても、実は床下側にも重大なひび割れが生じていることがあるということです。これは、新築住宅でも中古住宅でもいえることですから、覚えておきましょう。

床下の断熱材には施工不良や著しい劣化が多い

床下断熱材の落下

床下調査のなかで、主要構造部ではないものの気をつけてチェックしておくべき項目の1つが断熱材です。アネストは長年、住宅診断(ホームインスペクション)をしてきましたが、とにかく床下の断熱材の施工不良や著しい劣化を確認することが非常に多いです。

床下では、断熱材が下に落ちやすいこともあり、新築時に丁寧に施工されていなければ、よく落下したり落下しかけていたりします。新築完成時(引渡し前)の竣工検査(内覧会)への立会い検査を依頼して頂いた際に、この指摘が上がることは本当に多く、指摘数は一番です。

点検口から覗いて見える範囲で大丈夫であっても、少し奥へ潜っていき確認すると問題が確認されることも多いです。

意外と排水管からの漏水が多い

床下調査の際に指摘事項として挙がることの2つ目としては、排水管からの漏水です。断熱材に比べれば指摘数は下がりますが、漏水を放置するとカビ・腐食・劣化と建物の老朽化を急速に進行してしまうこともあるため、重要度が高いものです。

中古住宅であれば、配管が老朽化してしまって漏水することもあるというのはイメージできるかもしれませんが、意外と新築住宅でも排水管からの漏水は何度も確認されています。配管の継ぎ目部分からの漏水もあれば、配管のつなぎ忘れによる漏水ということもあります。

つなぎ忘れなんてことは信じられないかもしれませんが、アネストが実施している住宅診断(ホームインスペクション)のなかで、毎年、何件かこの事例が報告されています。完成時点で売主や建築会社が、床下まで自社検査していないことの証です。

床下の漏水

基礎コンクリートの継ぎ目から浸水

また、配管からの漏水ではありませんが、床下では基礎の継ぎ目からの浸水が確認されることもあります。こちらはそう多くはない事例です。

どういうことかと言えば、住宅の基礎工事の多くは、基礎の底にあたる部分(底盤やベースと呼ぶ)と基礎の垂直方向の部分(土台がのる箇所で立上りと呼ぶ)で2度にわけてコンクリートを打設しているため、この2つの部分には継ぎ目があり、そこから雨水が床下側へ浸水してくることがあるのです。

見た目では基礎に隙間があるようには見えないため、購入した人にとっては原因不明の漏水だという印象を持つことが多く、不動産会社も原因がわからないということも多いです。

床下調査も完全ではない

今回のコラムのなかで取り上げた床下の指摘事例は、ごく一部であり、よくあること、もしくは重大な指摘の事例の一部をあげたものです。他にも、カビや排水管の支持部のぐらつき、束のぐらつき、基礎パッキンの施工不良など様々な指摘事例が数多く報告されています。

できれば、床下調査は積極的に行うようにした方が良いでしょう。

但し、床下調査も万全というわけではありません。事例にもあげている基礎コンクリートですが、床下に潜ったからといってコンクリート内部の鉄筋の状態まではわかりません。床下配管の内部もわかりません。

完成物件の調査には、ある程度の限界があることも理解した上で、専門家に依頼するようにしましょう。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。
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